野菜作りの基礎を学ぼう 釜石・市民農園で「農業入門塾ミニ」開催中 単発参加OK
野菜作りの基礎を専門家から学べる「農業入門塾ミニ」が、6月から釜石市甲子町の市民農園で開かれている。釜石・大槌地域農業振興協議会(事務局・県沿岸広域振興局農林部)が、就農者の増加や遊休農地の活用促進を目的に開催。種や苗から野菜を育て収穫するまでの作業工程、病害虫防除の方法などを教えている。この後10月まで計3回の開催を予定している。
同振興局農林部は2021年度から3年間、釜石、大槌2市町で農業入門塾を開講。参加者が指導を受けながら、割り当てられた区画で野菜栽培に挑戦してきた。24年度からは同市の協力で、市民農園を会場にミニ講座を開設。農園を借りて野菜栽培を楽しむ人などが学びを深めている。本年度は6月から10月まで月1回の講座が組まれる。園内の3区画分(約36平方メートル)を同塾専用ほ場とし、夏から秋に収穫する野菜の栽培法を中心に実習を交えて指導している。
7月2日の2回目の講座には9人が参加。県大船渡農業改良普及センター産地育成課の伊藤沙南技師、同振興局農林部地域農業活性化グループの山口貴之主任主査が講師となり、病害虫防除の方法、育苗、せん定の仕方などを教えた。
農作物の成長過程では、菌やウイルスの侵入で正常な生育が出来なくなり、収量の低下や品質の悪化を招く病気があるほか、葉や果実を食べられる害虫被害があるという。発病には温度や湿度などの気象条件も関係する。伊藤技師はピーマンを例に病気の種類や症状、発生時期などを説明。「植える時にどういう病気が発生しやすいかを事前に調べておくことで、早めの対応が可能。6~9月はいろいろな害虫が発生しやすい時期でもある」と注意を促した。
山口主任は病害虫防除の基本的考え方として「病気は予防的に殺菌剤を使用、虫は出始めたら手で取り除くか殺虫剤を散布する」と説明。本来、植物には病害虫から身を守る能力が備わっているが、「水や肥料のやりすぎで弱ると、病気にかかりやすかったり虫が付きやすくなったりする。植物を健全に保つことも大切」とアドバイスした。
実習では栽培管理を学んだ。1回目の講座で植えたピーマン、ナス、トマト(市栽培推奨品種:すずこま)を教材に、参加者がせん定の仕方を教わった。より多くの質の良い実を収穫するには、栄養を集中させるために不要な枝葉や花芽を切り落とす作業が必須。参加者は講師に判断基準を聞き、「どこを切ってどこを伸ばすか」考えながら挑戦した。枝葉の密集は風通しを悪くし、病害虫発生の要因にもなることから、この作業は特にも重要だという。
この日は秋野菜の育苗実習として、セルトレイにブロッコリーの種をまいたほか、農園内の畑にニンジンの種をまいた。ニンジンは「点播(てんぱ)」と「すじ播(ま)き」という2方法を試す。セルトレイは参加者が分担して持ち帰り、自宅で育苗。次回の講座に持ち寄り、畑に定植させる予定。
同市の佐藤里美さん(42)は夫と一緒に昨年から市民農園を利用。野菜を育ててみるも、なかなかうまくいかず、基本を学ぼうと同入門塾に参加中。「専門家から教えてもらえるのはありがたい。すごく助かります」と講師の話に熱心に耳を傾ける。「せん定が一番難しい。(これでいいのか)切るのはドキドキで…」と初心者ならではの苦労はあるが、「将来的には“すずこま”トマトや“ラグビーカボチャ”(ロロン種)も育ててみたい」と夢を描く。
事業を担当する同農林部の伊東菜々子技師は「参加者は積極的で、興味を持って質問もしてくれる。技術的なことを教えつつも、あまり堅苦しくなく、講師と参加者が互いに意見を交わしながら進んでいる」と講座の雰囲気を紹介。「ここでの学びをきっかけに遊休農地などを借りて農業を始める人が増えてくれたらうれしい」と願う。
今後の日程は次の通り。時間はいずれも午前9時~同11時。
第3回:8月6日(農業用機械の使い方、夏野菜の収穫) 第4回:9月3日(電気柵の使い方、秋・越冬野菜の作り方) 第5回:10月1日(秋野菜の収穫、農地を借りるには?)
参加希望者は開催日の2日前までに電話かメールでの申し込みが必要。問い合わせ、申し込みは同振興局農林部(電話0193・25・2704、E-mail:bi0003@pref.iwate.jp)へ。