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わざわざ行きたい!遠賀で見つけた、五感をほどくランチと一杯。「HANAO COFFEE」(福岡・遠賀町)【まち歩き】

福岡・九州ジモタイムズWish

遠賀町の穏やかな田園風景に、すっと馴染むように建つ「HANAO COFFEE」。
派手な看板もなく、静かに迎えてくれるその空間は、初めて訪れてもなぜか懐かしい。風の音、カップの響き、豆を挽くミルの低い唸り——どれもが心に染み入るように、やさしい。
店を営むのは、オーナーの峰さんご夫婦。あたたかなまなざしと、丁寧な所作の奥に、歩んできた時間の深さが滲んでいた。

■名前の由来に、背伸びはなし
「HANAO」という名前は、店舗の番地「870(ハチ・ナナ・オー)」から。
気取らず、まっすぐで、どこか親しみやすい。

店名とともに目を引くのが、HANAO COFFEEのロゴに描かれたサイの姿だ。少し意外にも思えるその動物を選んだ理由を尋ねると、「昔から好きなんですよ。鎧っぽくて、かっこいいから」と峰さんは笑った。ロジックや戦略ではなく、“好きだから”という純度の高い動機が、むしろこの店らしいと感じる。強さとユーモア、そして肩の力の抜けた誠実さ。ロゴに込めたその想いが、店全体の空気を象徴しているように思えた。

峰さんについて記事を書くにあたり、後からInstagramの投稿もいくつか拝見した。中でも心に残ったのは、10周年の御礼として綴られた文章。
「カフェを開こう」という、たった一言から始まったというエピソードだ。
ずっと胸にあった想いが、ある日ふっと言葉になった。
その横で戸惑ったであろう奥さま——でも今は、その“突然の宣言”に笑顔で寄り添っておられる。

「本当に申し訳ないが付き合ってくれてありがとう」。

そんな感謝の気持ちがまっすぐに綴られていて、ご夫婦の関係がとても素敵だと感じた。
福岡市内のコンピューター関連の会社に勤めながら、週末はDIYで奮闘し、仲間やプロの手も借りてお店を作り上げた日々。簡単なようで、きっと大変だったその道のりが、どこか柔らかく、飾らずに表現されていた。

■一杯のコーヒーに込める、“まじめさ”
峰さんが淹れるコーヒーには、言葉にせずとも伝わる真摯さがある。
使用する豆はすべて、世界基準を満たしたスペシャルティコーヒー。
抽出法はハンドドリップをはじめ、プレスやエスプレッソなど場面に応じて使い分けられるが、峰さんがもっとも時間をかけて向き合うのは、やはりハンドドリップだ。豆の個性を見極めながら、湯温や注ぎ方を細かく調整していく所作には、コーヒーと真摯に向き合う姿勢がにじむ。
「バランスの良い味を朝に。午後には少し深めを」
時間帯や気分、その日のおやつとの相性まで思い浮かべながら、今日の一杯が生まれていく。
コーヒーは嗜好品かもしれない。でも、人の暮らしをそっと支え、豊かにしてくれるもの。そんな考えが、この店のカップ一杯一杯に込められている気がした。

■食べて、整う。そんなごはんがあります
もう一つのHANAOの魅力は、お昼の「からだにやさしいごはん」。
主役は、毎朝精米する7分搗き米と、峰さんご家族や近所で育てた旬の野菜。取材日は、豆腐の肉巻きに、筍を使った副菜、ごろごろ野菜のスープ、そして小鉢の数々が並んでいた。
派手さはない。でもひと口、またひと口と食べ進めるうちに、「ああ、食べてよかったな」と思える滋味深さがある。味つけも見事で、やさしく、でも決してぼんやりしていない。体の芯に、すっと届く味だ。
食後には、プレスで丁寧に淹れられたコーヒー(写真左上)が静かに運ばれてくる。ドリップとはまた違う、まろやかで丸みのある味わいが、食事の余韻にそっと寄り添う。豆本来のふくよかさが引き出されたその一杯は、食後の会話や小さな静けさと自然に調和していて、最後まで“この店らしさ”が途切れない。

■絵を飾るといいね——そのひと言から
店内の一角には、作家による作品が並ぶギャラリースペースがある。
きっかけは、近所の方の「ここ、絵を飾ったらいいね」という一言。最初は遠慮がちだった峰さんだが、「やってみようか」と始めた展示が、今では作家とお客様を結ぶ発信の場になっている。
展示されているのは、工業製品ではない“一点もの”たち。コーヒーと同じく、手しごとの温度を感じるものばかりだ。

■変わらないことを、誇りにして
「大きくするつもりはないんです。今のかたちが、ちょうどいいから」
そう言い切る峰さんの言葉には、長年地元で積み重ねてきた自信と責任がにじむ。
地元の常連さんはもちろん、北九州や遠方から通う人も少なくない。誰にとっても“特別すぎない特別な場所”として、HANAO COFFEEは静かにそこにあり続けている。

■コーヒーの湯気の向こうに、確かな人のぬくもりがある
HANAO COFFEEを訪れて感じたのは、コーヒーやごはんの美味しさだけではなかった。
それらを支える「人」の姿勢。峰さんご夫婦の手で丁寧に整えられた空間。そこにある空気が、やさしくて、正直。
疲れたとき、気持ちを切り替えたいとき、ただ美味しいごはんが食べたいとき——
遠賀の風に誘われて、またふらっと立ち寄りたくなる。

そんな“帰りたくなる場所”が、遠賀町尾崎にありました。

■『HANAO COFFEE』
住所::福岡県遠賀郡遠賀町尾崎870-1
TEL:093−293−7670
営業時間:10:00~18:00 (11:00-14:30 Lunch Time)
定休日:日曜日 第三月曜日
駐車場:10台
※6月から営業時間が変更。
詳しくはInstagramをご覧ください。

Instagram@hanaocoffee
https://www.instagram.com/hanaocoffee/

■Coffee Menu ※価格はすべて税込

Special Blend…… S 530円, R 650円, L 770円
(バランスのよい飲みやすいブレンド)
Genova Blend…… S 530円, R 650円, L770円
(苦味だけではなくコクと甘味もあるブレンド)
Guest Coffee…… R 770円
(マスターおすすめ)

■Lunch Menu※価格はすべて税込

からだにやさしいお昼ご飯 1,320円

毎朝精米する7分搗き米と雑穀米(中130g、小100g)
→ プラス110円で大盛り200gに変更可能
・汁物 ・主菜 ・副菜3品 ・サラダ ・小鉢
・食後のコーヒー

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