夏アニメ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』放送直前声優インタビュー|石川界人さん、瀬戸麻沙美さん、雨宮天さん、上田麗奈さんが語る《大学生編》の注目キャラクターは?
累計発行部数300万部を突破し、昨年(2024年)完結を迎えた鴨志田一先生による小説“青春ブタ野郎シリーズ”。
2018年にTVアニメ化を果たし、2023年に劇場アニメとして公開された『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』をもってアニメも《高校生編》が完結しました。
そして、その続きとなる《大学生編》『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』が、7月5日(土)からTOKYO MXほかで放送開始となります。
アニメイトタイムズではその放送に先駆け、石川界人さん、瀬戸麻沙美さん、雨宮天さん、上田麗奈さんらキャスト陣へのインタビューを実施。《大学生編》の見どころについて語っていただきました。
また、《高校生編》から《大学生編》ではキャラクターたちが年齢を重ねているということで、そんなキャラクターたちそれぞれの変化や新たに出会うキャラクターたちについても一部掘り下げています。ぜひ第1話の視聴前にご一読いただければ幸いです。
【写真】『青ブタ』声優陣が語る大学生編アフレコ現場の雰囲気と新キャラ「ミニスカサンタ」の魅力/インタビュー
アフレコ現場にも新たな風が吹いて広がる人間関係
――いよいよ《大学生編》がスタートします。これまでのお芝居と変えたところや変えていない部分、またアフレコの手応えなどをお教えください。
梓川咲太役・石川界人さん(以下、石川):《大学生編》になるにあたり《高校生編》から時間が経過しているのですが、その間の表現があまり映像化されていない部分もありつつ、やはり社会が広がるところがあるのかなと。咲太はそのあたりの人とのコミュニケーションの取り方が一歩引いた感じになっているように思いながら演じさせてもらっています。
そんな中でも変わらないのが麻衣さんへの愛です。変わらないというよりも、関係性が深まってさらに強固な絆になっているという認識ですね。ただ、愛が深まるとはいってもイチャイチャして甘さが増すということではなくて、ふたりのやり取りがもっと気楽なものになっていると僕は捉えています。台本上にもあるのですが、タメ口がちょこちょこ出るようになっているので、そんな心の距離の近さは意識しています。
このふたりは《高校生編》の時から割と着実に距離を縮めていましたし、この数年の間に多くの時間を一緒に過ごしてお互いの認識をより深めていったのかなという想像が絶えずありました。なので、《大学生編》から《高校生編》の間にこういうことがあったんだろうなっていうところを想像しながらアフレコに臨めたと思っています。
桜島麻衣役・瀬戸麻沙美さん(以下、瀬戸):私は麻衣にそこまで変化を感じていませんでした。高校生から大学生になるって世界が大きく変わると思うのですが、麻衣は幼い頃から学業と別にもうひとつの世界を持っていたし、性格的にもちょっと超人なところがあるので、小さな事ではあまり動じたりしないかなって思っていたんです。
もちろん私服の子もいるかと思いますけれど、高校生から大学生になると制服を着ていたところからみんな私服になっていくじゃないですか。そういうところから他の人のパーソナルな部分が見えてくるのですが、麻衣はそこでブレることはないのかなって。
恋人である咲太や自分の周りの人たちがひとつステップを進んで環境が新しくなったことは意識しているかなって思ったのですが、麻衣は仕事への邁進具合が凄まじくなってきていて、だからこそみんなと一緒にいる時間が少ないかなって思ったことはありました。
咲太との関係は石川君が言っていた通り特別変わるようなことはないのですが、その愛情の形がもう家族に近いといいますか。そこに関しては、一緒にいる時間が長くなったからこそ自然と変化して当たり前になっていったのかなと感じましたね。
広川卯月役・雨宮天さん(以下、雨宮):卯月に関しては変わったところがあまりないのかなって思っています。やっぱり卯月が卯月らしくいることが大事なのかなと思っていましたし、彼女が変わっていないことが物語の中で意味を持ってくるので、私は空白の期間での成長については考えずひたすら卯月を演じている感じでした。
ミニスカサンタ役・上田麗奈さん(以下、上田):どこまでを踏まえて手応えがあったと言って良いのか迷ってしまうところなのですが、当初から何も考えずにお芝居してくださいとのお話をいただいていたので、私自身は彼女の目的や正体をあまり深く考えず、その場その場の会話に重きを置く形で演じていました。
キャラクター説明などを受けないままアフレコをスタートしたので、そこは本当に他のキャストのみなさんと実際に掛け合いができたからこそ助けられた部分が多かった印象があります。物語が進んでミニスカサンタと呼ばれる彼女のキャラクター性がわかってきてからだと、これは大事だなというものが明確にあったので、そこを大事にできた手応えはあったと思います。
――アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?
瀬戸:私は居心地が良すぎるなと思っていました。《大学生編》では新しいキャラクターたちとその担当キャストさんたちを迎えましたが、もう『青ブタ』に関わった期間も長くなってきたこともあって、どんな方が入ってきてもみんな『青ブタ』ファミリーになっているなって勝手に思っています。
やっぱりみんな役者としての経験を重ねて来た方たちなので、それこそディレクションが少なかったり、難しい指示があったとしても瞬時に修正してくる。だからアフレコの時間があっと言う間だったなっていう印象がありました。
雨宮:本当に《大学生編》はアフレコに参加している方が多かったですよね。《高校生編》の時はこんなにいなかったんじゃないかと思います。現場では近くの席に座ったもの同士でそれぞれちょっとした時間におしゃべりしたりしていて、本当に和気藹々とした空気の中で無理なくいられる居心地の良い現場でした。
上田:咲太くんと麻衣さんはもう絆が深まっている状態だと思うのですが、そんなふたりを演じる石川さんと瀬戸さんの空気感も長年同じ作品で一緒にお仕事をしてきたからこそのツーカーな空気感があって。アフレコに参加して最初に感じたのが、そんなおふたりから醸し出される咲太くんと麻衣さんのようなあのバディ感でした。
後は色々な女の子たちが登場するけれど、それぞれ個性があって深掘りされていくじゃないですか。そんなキャラクターたちを演じるキャストのみなさんが、本当に存在自体から華やかな方ばかりが揃っているという印象もあって。お芝居や佇まいもそうですし、眩しいなって思っていました。
テストも本番も全部見ていたのですが、会話劇が流れるようで聴いていて気持ちよさがある。どのキャラクターとも関係値がそれぞれあるから、例えば咲太くんも淡々としているのに関係性がみんな違っていたりして、本当に巧みだなって。
瀬戸:長く続いている作品の現場に途中から入るって、やっぱり不安になるよね。私たちのほうはミニスカサンタ役が麗奈さんに決まった時からもう盛り上がっていたんですよ。
石川:凄くピッタリだなと思いました。ミニスカサンタの正体がどうであれ、『青ブタ』のヒロインたちは内面に大きな悩みを抱えていて、その悩みがそれぞれの個性によったものになる。その中でもミニスカサンタはとても心が繊細なので、表現としても繊細さが必要になります。本当に上田さんのお芝居やお声があってこそのキャラクターになっていると思います!
上田:私は常に自信がないタイプなので、ドキドキするし足を引っ張るんじゃないかっていう恐怖で震えていましたね。でも最終話になる頃には、休憩中にしりとりができるくらいには他のキャストさんたちとコミュニケーションが取れるようになったかなと。現場には徐々に慣れていったのかなって思っています。
――上田さんは今回から登場する新キャラクターとなりますが、『青ブタ』という作品自体にはどんな印象を持たれましたか?
上田:キャラクターたちが等身大で現代的な悩みを持っているので、凄く共感したり親近感がわくなって思いました。そこに対して真剣に向き合ってくれる作品なので、思春期のことは思春期のうちに向き合って解決しようとしてくれますし。ここまでしっかり向き合って大人になるって、現実世界だと中々難しいことが多いと思うんです。
だから私も見ていて救われるような気持ちになりましたし、もし違ったら申し訳ないのですが、みんな悩みの根っこが近い気がしたというか、何か自分にもこういうことがあるなっていうのをどのキャラクターからも感じたんです。
根っこにあるのはこれだなっていうのが自分の中にもあったりして、それを明言したほうがいいかどうかはわからないのですが、そんなところも含めてこの先も知りたいと思って本当に見始めましたし、最初からずっと見ていたいなって思うような作品でしたね。
咲太くんが「優しい人になりたい」と言っていたと思うのですが、本当に寄り添ってくれるような優しい作品だとも思いました。もちろんグサッとくることも言ってくれるのですが、それも含めて向き合わせてくれるのがいいなって。
――石川さんもアフレコ現場で印象に残っていることはありますか?
石川:女性キャストだけでなく、《大学生編》では男性キャストも幾人か増えたこともあって本当に救いになりました。もちろん気まずいとかではないのですが、単純に同性が現場にいてくれると気楽に話かけられるし、そこから話が広がることもあるじゃないですか。そういう意味では僕自身も咲太と一緒で、新しいキャストの方とお話する機会が増えてちょっとだけ社会が広がったのかなって思っています。
劇場公開された『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』の収録の頃はコロナ禍だったので、割と分散収録が多かったですし。今回はみんなで集まってアフレコできたので、そういった意味でも作品の空気感みたいなものを掴みながら臨めたかなと。
――咲太と関わるところでいうと、国見佑真以外の男性キャラクターが増えるんですね。
石川:福山拓海というキャラクターが咲太の大学での友人として登場します。演じる岩中睦樹さんとは以前から共演があったり稼働で一緒になったりしていたので、アフレコ現場ではそのあたりの話で盛り上がっていました!
「大好きです」と伝える咲太の嬉しいのやり取り
――ネタバレにならない範囲でみなさんが《大学生編》で気に入っていたり、注目していたりするキャラクターとその理由をお話いただけますか?
石川:僕は福山です。現実にいそうなキャラクターでありつつ、咲太とは方向性の違う優しい人を表現していると思っています。というのも、大学に入るにあたって咲太は有名人と付き合っている男の子なので、普通なら気を遣われる存在じゃないですか。だけど福山は気にせず話しかけてきてくれるんです。
彼を咲太の友人だと言い切って構わないのか迷いはあるものの、咲太と福山はよく一緒の空間にいて一緒に行動することが多い関係になっていきます。それは彼の優しさからくる気遣いみたいなところがあると思いますし、優しい人になりたいという咲太の志を考えると、福山のような人に触れられるのはとても素敵なことだなって思います。
――咲太が国見以外の男子と関係性を構築しているのはまた新鮮な描写になりそうです。
石川:国見は就職してモラトリアムを飛び越え大人への一歩を踏みだしています。それもこの先の見どころのひとつですね!
――ありがとうございます。瀬戸さん、雨宮さん、上田さんはいかがでしょうか?
瀬戸:各キャラクター気になるのですが、私は赤城郁実の抱えているものに共感しました。彼女を見ているともどかしさを感じて、今の自分がというよりも、過去に自分も彼女のような思考に陥ったことがあるなと思い至りました。自分にもある何かをどのキャラクターからも感じるのですが、赤城は特にその部分をくすぐられた気がしています。
山根綺ちゃんの繊細なお芝居が彼女の痛みを丁寧に表現してくれているので、赤城の痛みやもどかしさを見ていてとても感じられると思います。台本や原作をチェックした時よりも、アフレコ現場でややちゃん(※山根さん)がお芝居した赤城の方が、声色に経験がのっている感覚があって印象に残ったくらいです。
雨宮:私は双葉理央がいいなって思いました。大学生になってもなんだかんだで咲太と近いところにいますし、環境が変わっても頼れる友達みたいな咲太と理央の距離感が好きなんです。《高校生編》の頃から良かったけれど、《大学生編》になってより一層気に入りました。
基本は咲太が新しく登場した女の子を支えてあげる構図ですが、理央に関しては咲太も頼っていて、相談すると良いことを言ってくれるんですよね。凝り固まっていた考えを覆してくれる新たな視点からの意見とか、視聴者的にもドキッとする核心を突いた意見も言ってくれますし。私はそんな理央のポジションや言葉が気持ちが良くて好きです!
上田:私は今回のエピソードでづっきー(※広川卯月)に共感できるところがあって、グッと好きになりました。づっきーの悩みにも共感できたし、づっきーを見ている人たち側にもわかるところがあったんです。だから総じてづっきーみたいになりたいって思ったんです。
そんなづっきーは今回の大学生編で悩んだ結果、ちょっと様子が変わります。同じキャラクターだけどちょっと違うその匙加減が本当に気持ちよくて、その部分の雨宮さんのお芝居の匙加減もドンピシャでした。そういうところに感動したことも含めて、より好きになったキャラクターがづっきーでしたね。
雨宮:(※とても嬉しそうにしつつ)もうっ……ありがとう! 今日寝る前に思い出すね!!
一同:(笑)。
――《大学生編》では少し年齢があがって変化が見られたキャラクターもいるのではないかと思います。みなさんから見て変化が印象に残ったキャラクターは誰になりますか?
石川:花楓は変化が著しいなと思います。かえでから花楓に戻ってからは咲太との距離感が現実にいるような兄弟の形になっていったのですが、よりブラッシュアップされて年相応の反抗心や生意気さが生まれてきています。それが彼女の精神的な成長や咲太への依存からの脱却に繋がって、今はひとりで地に足をつけて歩いているんだっていう表現になっているんです。
咲太に対しては当たりが強いなとも思うことがあるんだけれど、それが心地いい……みたいな。そういう変化が一番あったキャラクターだなと。『おでかけシスター』の頃はまだ自分の足で歩けなかったけれども、もう自分の足で歩いている。彼女は彼女の人生を花楓として歩んでいるんだっていう自信みたいなものが見えると思います。
瀬戸:私も花楓を見ているとその変化に心が温まるなって思います。それこそお兄ちゃんの咲太に対して自分の意見が言えるのって、きっと自分をしっかり手に入れられたからなんだろうなって思うんです。そこはもう微笑ましかったです。
後は変化でいうと、《大学生編》の各キャラクターのビジュアルが公開された時にみんなが私服になっていたのは興奮しましたね。麻衣さんはどんな私服なんだろうとか、咲太はどんな服を着るんだろうとか、そういうワクワクがあったんです。考え方や内面の変化もあると思うけれど、見た目の変化の部分もアニメでは楽しんでもらえるのかなって思いました。
雨宮:私は麻衣さんの余裕のある年上お姉さん感がマシマシになっているのがいいなって思います。例えば咲太が合コンに行ってもいいかみたいなお伺いを立ててきても、何でもないことみたいに「いいわよ」ってOKを出してくれたり、車で迎えにきてくれたりする。まだ同じ大学生なのに、かなり年上の仕上がったお姉さん感があるなって。
――上田さんは本作からの出演ですが、共感したり気に入ったキャラクターはいますか?
上田:私は理央と東山奈央さんが演じられている古賀朋絵が気に入っています。このふたりにまさかこれまで恋の色々があったなんて、《大学生編》から見始めると気付かなかったりするかもしれません。視聴者目線にはなるのですが、少し前に進んだのかな?って感じるようなやりとりを過去に想いを持っていた人としていたりする印象があったので、《高校生編》から触れてみたいなと思う方もいるんじゃないかなって思います!
――《大学生編》ならではの魅力や見どころもお教えください。
石川:思春期症候群は思春期に生じるものだという原理原則は変わらないのですが、《大学生編》ではそこから一歩大人に近づいて、社会性や挫折であったり、自分たちが生きていく中で実現しようと藻掻いている理想のようなものに、どうしても届かないような状況で起こりうるアイデンティティクライシスが描かれるのではないかなと。
思春期特有の承認欲求であったり、狭い社会でのコミュニケーションの悩みだったりが拡大するところもあるのですが、その解決方法も劇的なものばかりではなかったりして、これまで以上に大人な解決方法が描かれるのかなと思っています。白黒つけるばかりが解決ではなくて、グレーなものをグレーなままにしといたっていいんだ、という受け入れ方みたいなもの。それが《大学生編》では強く出ているなという印象ですね。
瀬戸:確かに悩みには気付いていてどうにもできないけれど、なんとかしなきゃと焦ってしまうみたいなところは感じます。そこから意地になる人と諦めてしまう人とで、分岐に差し掛かることも多いような印象がありました。だからより心に響くし、より静かな物語になっていったかなと。それが『青ブタ』の魅力だというのも再認識できたと思います。
雨宮:大学生ともなるとザ・思春期と言える中高生を終えた大人一歩手前というか、もう大人だよねと言えるくらいの絶妙な時期ですよね。ある程度は人生の積み重ねがある状態だからこそ、悩みが今を生きているからこそ出てくる問題になっている。
過去の一点に対して思うところがあっての問題なんて、やっぱり積み重ねがあるからこその悩みじゃないですか。《大学生編》ではそういう積み重ねがあるからこその悩みが増えたのかなっていう気がしています。
上田:中高生の頃はみんな同じ決められた授業を受けて、決められた制服があって。そこから大学生になるとより自分で考えることが増えてくるから、悩んじゃうよねとは思います。
そうやって選んだことが本当に重い決断になることが多くなってくる時期ですけれど、石川さんがおっしゃったように曖昧な部分をOKとしつつ自分の意思で選ばせてくれるのがなんだかいい作品だなって思うところです。
そこで後悔が無いようにというか、自分で決めたっていうのがあるようになっている。難しい時期の子たちだけど、そうなっていくのがいいなと思います。
――みなさんの考える主人公・咲太のかっこいい一面や素敵だなと思う部分も教えてください。
石川:僕が素敵だと思っているのは、ことあるごとに「大好きです!」と言葉にして伝えるところです。高校生の頃から変わらない部分ではあるのですが、麻衣さんとお付き合いを続けて大学生になっていく中でもこの言葉を伝えていて、しかも彼なりにその言葉に大きな意味があると認識した上で伝えるのが素晴らしいなって。
『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』で表現されましたが、「ありがとう」と「がんばったね」と「大好き」という翔子さん(※大人の方の牧之原翔子)からもらった3つの大切な言葉の中にこの「大好きです」もあるというところで、咲太なりに大きな意味があるんですよね。それを僕は言われたら嬉しいし、そのことを相手にも伝える。そうやって嬉しいのやり取りをしているので、僕は咲太を良い男だなと思います。
瀬戸:作中でも咲太のちゃんと言葉にして伝えるっていうカッコよさが描かれていますよね。日常に溶け込んでいる台詞だと、私は花楓/かえでに対しての言葉のかけ方が印象に残っています。考えていないようで考えている言葉選びをすることもあれば、雑に扱うこともある感じ。二人暮らしを続けてきたところがあるので、例えば花楓の受験の日に朝ご飯を作ってくれるような、そういう時に当たり前にサポートしてくれるところが好きです。
雨宮:この先の物語で卯月に焦点が当たった時に、卯月と咲太がちょっとしたやり取りをするシーンがあるのですが、私はこの時の咲太の返しが好きでした。その時に卯月は「浪漫がないね」って返すのですが、この時のふたりの空気感がなんかいいなって。色々な悩みを持った女の子たちがいる中で、咲太は誰とでも近い心の距離で話せるというか、本当にふたりきりの空間を作るのが上手ですよね。そんな咲太の良さが現れていたなと思います。
上田:咲太くんは今一番欲しい言葉をくれるのが本当にありがたいし、凄い人だなって思います。私は麻衣さんが咲太のほっぺをプニプニしてからの、「なんですか?(※咲太)」「なんでもない(※麻衣)」っていうやりとりですね。この後で麻衣さんがニコッて笑うのですが本当に可愛くて、この笑顔を作れるのは咲太だけなんだと思うと微笑ましい気持ちになりました。
ファンと一緒に年を重ねた『青ブタ』という作品の魅力とは!?
――TVシリーズ第1期が2018年ということで、間に劇場版を挟みつつTVに帰ってくるのは7年ぶりになります。再びTVシリーズに帰ってきた感想もお話いただけますでしょうか?
石川:僕の勝手な印象にはなるのですが、一度劇場版をやった作品がもう一度TVシリーズに帰ってくるなんてあまり無いのかなと。『青ブタ』はTVシリーズ第1期の後に3本劇場版をやって、そこから今回の《大学生編》が第2期として作られていますからね。
原作を読んでいると、確かに《大学生編》はTVシリーズじゃないと表現が難しいなと思うんです。ひとつなぎに霧島透子という謎の人物を追いかけるテーマもあるので、どうやって描いていくんだろうと思っていました。だけどTVシリーズでやるというお話をいただいたので、作品の良さを伝えやすい形でみなさんにお届けできる喜びがありました。
だからこそ長期間の放送になるので、1クールという期間を通して霧島透子の未知な存在感を残しつつ、各ヒロインたちの悩みに向き合っていくところの表現に注力して頑張りたいなと思いました。
瀬戸:今はTV放送だけではなく色々な配信形態がありますが、私はアニメを見る人間のひとりとして1週間に1度楽しみにする形が好きなので、またTVシリーズという形になってくれたのもちょっと嬉しいことのひとつでした。
作品にのめりこんでもらえたら、きっと1週間は放送されたばかりのエピソードについて考えたりするじゃないですか。放送日が決まっていると思考する時間を物理的に取れるし、それをコントロールできる。そういうところも《大学生編》にはピッタリだと思います。
後は既に霧島透子さんの歌がYouTubeに出ていたりしますけれど、ああいったギミックもTV放送だからこそなのかなって思いますし、ワクワクしますよね。
雨宮:《高校生編》の卯月はTVシリーズではスイートバレットのメンバーとして本当にちょこっと出る感じで、その後の『おでかけシスターの夢を見ない』でようやく卯月というキャラクターを認識してもらえた流れがあったと思います。ここまでは瞬間的な存在でしたが、《大学生編》では卯月にも時間が発生したといいますか。掘り下げてもらえる時間を与えてもらえたことが、演じさせてもらっている身としては凄く嬉しいところです!
上田:毎回引きがある良さはありますよね。私は最初、この『青春ブタ野郎』というタイトルを見た時にラブコメなのかな?って思っていたのですが、内容を見てみるとラブコメもあるけれど思春期症候群のような不思議な要素やミステリっぽい要素も強いなと思いました。だからこそ、瀬戸さんがおっしゃるように毎回引きがあって考える時間があるのは向いていますよね。
ミニスカサンタは登場してからずっと、ちょこちょこ出てきては誰なんだって思わせてくれると思います。各ヒロインたちの悩みを掘り下げつつ彼女の正体も考えながら見ていくのなら、やっぱりTVシリーズのほうが映えるように思いますし。物語の分量的にもシリーズで描くことで、没入しやすくすっきりする感じになっていると思います。
――そしてアニメ第一期『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を当時ご覧になられた中高生は、咲太たちと同じ大学生や社会人になっていたりするかもしれません。また、再放送などから新たにファンになってくれた中高生の『青ブタ』ファンもおられます。ぜひこの両者へのコメントもいただけないでしょうか?
石川:既に思春期を乗り越えたみなさんは、ある程度自分の性格や趣味嗜好が固まっていると思いつつ、今回の《大学生編》では自分もこんな時期があったなというふうに思いながらも作中で描かれる悩みを全部通過していることは少ないのではないかと思うので、人それぞれ色々な悩みがあるんだなとキャラクターたちの他人への寄り添い方に注目していただけたらいいのかなと。
今回から初めて『青ブタ』に触れてくださる方たちは、大人って大変なんだなってことを知ってもらえると嬉しいです。やっぱり年齢を重ねると社会が広がって自分と関わる人も増えてきますし、そんな人たちもそれぞれの人生を歩んできています。考え方が近い人もいるとは思いますが、確実に違うところがどこかにはあるので、だからこそ相手をおもんぱかりながら人と接していかなければならない。
そういうところで悩みや軋轢が生じて……なんて現実的な話をすると大人になるのが嫌になるかもしれないのですが、その中で生まれる楽しさみたいなものも確実にあります。この作品でそれが勉強できるかはわかりませんが、そういうところを知っていただきたいです。
瀬戸:もう大人になられた方は、こんなこともあったなって当時を振り返る人もいれば、あの時はわからなかったけどこういう考え方もあったのかな?みたいな気付きがあるかもしれません。それを心のままに実行してみたら、もしかしたら今より優しい人になれるかもしれないですね。
今はまだ咲太たちの年齢じゃない方たちからすると、ちょっといいなって憧れる世界が描かれているんじゃないかなと。悩みにぶつかったとしても、全力でぶつかって泣いてっていうのにも憧れる人がいると思います。
アニメとかを見て学生時代を振り返ると、自分が経験できなかったものが得られると思うので、その中でいいなって思ったものは真似してみたらいいし、大切な言葉にしてもいい。私は『青ブタ』が好きな人とはきっと仲良くなれそうだなって思いますね。
雨宮:今大学生くらいとか社会人になりたての方の中には、周りの人が自分を残して大人になってしまったという感覚がある人もいるんじゃないでしょうか。私もそうだったんですけれど、でもみんなそんなに大丈夫じゃないし、大人に見えているだけで中身はそこまで大人じゃなかったりする。だからそこは安心していいのかなってこの作品を見たら感じるんじゃないかなって。
大人になれている人なんて別にいないというか、『青ブタ』に出てくるキャラクターたちの年齢もそうだけど、私の年齢になったってまだ思春期を拗らせているみたいなところがありますし。だからそこは安心して欲しいですし、きっと自分ひとりじゃないって思います。
中高生のみなさんは結局大人にはなれないと悟ってしまうかもしれませんが、この《大学生編》で描かれるように自分が向き合おうとしたら向き合ってくれる。そういう人はきっといると思うんです。だからそういう意味でもリアルだと思うし、咲太みたいに向き合ってくれる人は夢物語じゃないと思うので、そういうところを肯定的に捉えてもらえたら嬉しいです。
上田:雨宮さんがおっしゃるように、大人になっても思春期のあの時の気持ちがずっと残っていて、ふとした時に癖として思考がそっちにいってしまったりすることが、私自身にも覚えがありました。作中で「思春期って年齢でもないだろう」みたいな台詞があってドキッとしたのですが、じゃあ思春期でもない年齢っていくつ?って思ったんです。だから安心していいっていう言葉に今グッときました。
私も大人な上でこの作品を見て救われたところがいっぱいあるし、変わりたいっていう想いに早いも遅くもなくて、きっとその人のタイミングがそうだったというだけ。この作品に触れた時がそのタイミングかもしれないし、そういうところが伝わったら嬉しいです。
私はもっと早くこの作品に出会いたかったなって思ったりしました。タイムリーな内に出会えるならそれはとてもいいことだと思います。この作品を好きだと思ってくれる人はそういうところに響くものがきっとある人たちなのかなって勝手ながら思っているので、私もきっと仲良くなれるかなと。そうだったらいいなと思っています!
――最後に放送を楽しみにしている青ブタファンのみなさんへのメッセージをいただけますか?
石川:《高校生編》から劇場版三作品を経てついに《大学生編》へ突入します。以前からそうでしたが、みなさんの悩みに寄り添いヒントを与えてくれるような作品になっていると思います。
今回改めて咲太を演じて思ったのが、この作品はあらゆる悩みや自己否定といったネガティブな想いを決して否定せず、ただ肯定もしない。ありのままでいいんだという自分の考え方や生きていること自体を肯定してくれるということでした。
ぜひご覧いただいて、自分も前はこういうことを思っていたなと振り返るでもいいですし、悩みがあったらこういう風に考えてみようと参考にしてみたり。あらゆる世代の方に想いを届けられる作品ですので、ぜひとも1クール楽しんでいただけたら嬉しいです!
瀬戸:ずっと『青ブタ』が大好きでいてくれたファンのみなさんへお伝えするとしたら、お待たせしましたということでしょうか。1クールじっくり楽しみつくしてください。私も一緒に楽しもうと思いますという気持ちでいます!
そして放送開始したら、『青ブタ』っていうアニメが始まったけれど、これまでにTVシリーズ第1期と劇場版が三作品もあるなんて見るのが大変そうだなって思っている新規の方が現れるのではないでしょうか。
でもそういう時こそ「大丈夫です!」と布教するチャンスだと思うんです。ぜひこの機会に、『青ブタ』ファンのみなさんには作品の魅力を伝えてどんどん広げていっていただければなと。
ちょっと身内トークになりすぎたかもしれませんが、初めてご覧になる方の目にも絶対に留まるというか、目撃してしまったら絶対に引き留める力が映像にも台詞のひとつひとつにもあるはずです。そこで引っ掛かって『青ブタ』を好きになってくださったら嬉しいなって思います。
雨宮:この《大学生編》の序盤では卯月がかなりメインになってくるのですが、徐々にメインとなるキャラクターが移り変わっていきます。もうずっと面白いままなので、そこは楽しみにしていただきたいです!
今まで出てきたキャラクターたちは凄くいい変わらなさでそこに居てくれるのですが、新たに登場するキャラクターたちの新鮮さもあわさっていて。他にもエンディングがお馴染みになっていた「不可思議のカルテ」から変わったりだとか、色々な部分で新しい要素がいっぱいあります。そんな変わらなさと変わったところを楽しんでいただきたいです。
上田:今回から関わって深く作品のことを知って、色々な要素が心に沁み込んでくるような物語が描かれているなと思いました。愛ってなんだろうって感じですけれど、愛だなぁって思いながら見てしまう作品だとも思いましたし。
ミニスカサンタは自分が霧島透子だと言っているのですが、そんな彼女の謎ももしかしたらわかってくるかもしれません。この《大学生編》からの参加となった私でも、この作品が大好きだって言えるようになりました。自信を持ってみなさんにお届けできる作品になっているので、ぜひ毎週楽しみにしていただけたら嬉しいです!
[文&写真・胃の上心臓]