静岡市「駿府の工房 匠宿」で多彩なものづくり体験!“工芸テーマパーク” で充実の一日を
「伝統工芸って、ちょっと難しそう…?」、そんなイメージが変わるかもしれない場所が、「駿府の工房 匠宿(たくみしゅく)」です。
静岡ならではのお茶染めや竹細工から、陶芸や木工、漆まで、多彩なものづくりをなんと1カ所で体験できます。各工房には職人やインストラクターが常駐し、作り方を丁寧に教えてくれるので初めてでも安心!
工芸品に囲まれたカフェで旬の食材の味を満喫したり、ギャラリーやショップで素敵な工芸品に出合ったり、人気デザイナー・皆川明さん描き下ろし図案の染め体験をしたりもできます。
見て、作って、味わって、五感すべてで伝統工芸を体感できる「匠宿」の魅力を余すところなく紹介します。
リニューアルで進化!カフェやショップでも伝統工芸を体感できる
静岡市駿河区・丸子宿のほど近く、東海道五十三次の宿場町として栄えたこの地にある「駿府の工房 匠宿」は、伝統工芸を身近に楽しめる複合体験施設です。
2021年のリニューアルでは、カフェや和菓子店を敷地内にオープン。伝統工芸品に囲まれた空間で食事をすることで、気軽に工芸品の魅力に触れられるようにしました。各工房には工房長(職人)を迎え入れ、ものづくりの現場としても進化。後継者の育成にも力を入れる他、職人が手がけた作品は、「匠宿」内にあるギャラリーで展示販売しています。
さらに、周辺には宿泊施設やレストラン、温浴施設までそろい、エリア全体が“静岡らしい体験”の宝庫として注目されています。
竹細工からお茶染め、陶芸まで、静岡ならではの工芸体験が充実!
「駿河竹千筋細工」と「お茶染め」の体験で作れる作品
「匠宿」では、3つの工房を舞台に、静岡ならではの“ものづくり体験”が楽しめます。
中でも人気は、国の伝統的工芸品に指定されている「駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)」。職人が用意したキットを使って、丸く繊細な竹ヒゴを組み上げることで、小物入れやペン立て、花器などが気軽に作れます。継ぎ目の見えない精巧なつくりや、使うほどに風合いを増す美しさに、きっと驚かされるはずです。
「お茶染め」を行う「工房 竹と染」工房長の鷲巣さん
静岡ならではの体験としてもう一つ注目したいのが、「お茶染め」。お茶の製造過程で出る茶葉の“商品にならない部分”を活用して染め上げる技法は、「匠宿」の職人が独自に生み出したもの。濃い茶色の温かな風合いが男女問わず人気です。ちなみに、染めた後の茶葉は堆肥に再利用されるなど、環境にも配慮した“循環型の染め”としても着目されています。
「ミナ ペルホネンを、染める。」型染め特別体験
染めもの体験では、人気ファッションブランド「ミナ ペルホネン」の皆川明氏が「匠宿」のために描き下ろした図案を使った、アイテムづくりもラインナップ。ミニトートやポーチ、マルシェバック、Tシャツなどに型を使って染められます(要予約)。
そのほか、建築家・隈研吾氏が監修した、自由な発想でつくるスツールの木工体験や、ろくろや絵付けによる陶芸体験、漆の表面に模様を付ける体験など、多彩なプログラムがそろっています(工芸体験は予約推奨。詳しくは公式サイトをご確認ください)。
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静岡の逸品がそろうカフェやショップでも、“駿府の技”を体感
静岡の逸品がそろうカフェやショップでも、“駿府の技”を体感
「匠宿」の楽しみは、工芸体験だけではありません。カフェや和菓子店、ショップも充実していて、静岡の伝統工芸の魅力に触れることができます。
例えば、地元・丸子にあった和菓子の名店「吾作」の味を受け継いだ「蓬きんつば ときや」では、職人が一つひとつ丁寧に焼き上げる名物の「蓬(よもぎ)きんつば」が味わえます。丸子特産のハチミツを使った、しっとり上品な甘さの「どら焼き」も人気。店内には、駿河竹千筋細工の照明やお茶染めの暖簾がかかり、細部までこだわりが光ります。
「蓬きんつば ときや」
こだわりのコーヒーでゆっくり過ごしたいなら「The COFFEE ROASTER」へ。大きな焙煎機が目を引く店内で、自家焙煎・ハンドドリップのコーヒーが楽しめます。ぜひ味わいたいのが、匠宿の工芸が集結したケーキプレート「ザ・ドーム」。陶芸の器、漆と木工のスタンド、駿河竹千筋細工のカバーなど、まさに“使う工芸品”を通して、その魅力を実感できます。
もう一つのカフェ「HACHI & MITSU」は、“工芸品に囲まれる”がテーマ。駿河竹千筋細工の照明やインテリアパネル、お茶染めの暖簾やファブリックなどが贅沢に配された空間です。ここでは、地元・村本養蜂場のハチミツを使った「ハニーマスタードハンバーグ」や「薬膳キーマカレー」、そして“国産紅茶発祥の地”とも言われる丸子ならではの「丸子紅茶」を使ったレモンティーなどが味わえます。
「ギャラリー TetoTeto」
お土産探しも匠宿の大きな楽しみ。ギャラリー&生活用品店「ギャラリー TetoTeto」では、バイヤーが全国から厳選したモダンな工芸品や、匠宿で活躍する工房長たちの作品などを展示販売。
エントランスにある「コトコトSTORE」では、丸子のハチミツや丸子紅茶をはじめ、静岡県ならではの食品やお土産がずらりと並びます。
「コトコトSTORE」
作るだけでなく、見て、触れて、食べて、伝統工芸の魅力を丸ごと味わえる「駿府の工房 匠宿」。一日ではすべて回りきれない充実の施設で、静岡の伝統工芸の魅力を肌で体感してみてください!
広報担当者・工房長にインタビュー
――「匠宿」は、どのような想いでリニューアルされたのでしょうか?
広報担当・北川さん もともと「匠宿」は、1999年に静岡市が開設した施設で、2021年に静岡市内でまちづくりを手がける「創造舎」が指定管理者となり、リニューアルを行いました。
“静岡市の伝統工芸の素晴らしさと、ものづくりの楽しさ”を、より多くの人に感じてもらいたいという思いで、空間やプログラムを一新。単に体験ができるだけでなく、工芸品を内装や器に使ったカフェやショップを併設することで、工芸への間口を広げ、気軽に立ち寄っていただける場所へと進化しました。また、各工房にプロの工房長を迎え入れて本格的なものづくりを行い、後継者育成にも力を入れています。匠宿のあるここ泉ヶ谷エリア全体の活性化も、私たちの大きなテーマです。
――「お茶染め」について詳しく教えてください。
「工房 竹と染」工房長・鷲巣さん もともと家業として昔ながらの型染めをしていましたが、伝統的な染めものの需要が減っていく中で、「何か新しい表現ができないか」と模索してたどり着いたのが、地元・静岡のお茶を使った染めでした。
静岡では、お茶の生産過程でどうしても出てしまう“商品にならない部分”がたくさんあります。それを活用したお茶染めを20年に渡り続けていますが、現在も研究を重ねており、日々ブラッシュアップし続けています。大切にしているのは、純粋に「かっこいい」「素敵だな」と思ってもらえるようなプロダクトを作ること。染め終わった茶葉は、堆肥にして畑に還すという「循環」も意識しています。
最終的に目指しているのは、「お茶染め」という文化を育てること。ただの技術で終わらせずに、多くの人に広げていきたいと考えています。
WRITER
Sugiyama
今回「匠宿」を訪れて、ものづくり体験だけでなく、カフェで美しい器に触れたり、ギャラリーやショップでお気に入りのアイテムを探したりと、工芸品をとても身近に感じられました。さらに、「匠宿」の周辺には、築100年以上の古民家をリノベーションしたプライベートサウナ付きの宿「泉ヶ谷 工芸ノ宿 和楽」やオーベルジュ、愛犬と泊まれるホテル、和食レストラン、2025年1月にオープンした「ふきさらし湯」などがそろっています。ここに来れば、ものづくり体験だけでなく、泊まって、おいしいものを食べて、お風呂で癒やされて…と、まさに五感を満たす豊かな休日が過ごせそう。ぜひ、また訪れてみたいです!
駿府の工房 匠宿(スンプノコウボウ タクミシュク)
問い合わせ
054-256-1521
場所
静岡県静岡市駿河区丸子3240-1
営業時間
10:00~19:00
定休日
月曜定休(祝日の場合は営業、翌平日休)
駐車場
あり
支払方法
カード・電子マネー可
公式サイト
https://takumishuku.jp
Instagram
@sunpu_takumishuku
アクセス
静清バイパス「丸子IC」より車で約1分
撮影/北川友美 取材・文/杉山正博
※掲載内容は2025年4月時点の情報です