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【ハワイ・オアフ島】ハワイ旅行でできる環境ボランティア

地球の歩き方ウェブ

©小嵜 有美

ワイキキを流れるアラワイ運河。その河岸で泥団子を丸める人は、「ゲンキアラワイプロジェクト」のボランティアかもしれません。日本生まれの「ゲンキボール」で運河の水質を改善しようと、地域の人々や企業、旅行者が力を合わせています。 この活動は、旅を通じて地球環境に貢献したいという人々にも注目されています。短時間での参加が可能で、気軽に体験できるのが魅力。次のハワイ旅行で、意義ある新しい思い出をつくってみませんか?

【画像】ハワイの自然を守る活動

出会いは朝のウォーキングから

英語教師として12年間を日本で過ごし、6週間前にハワイへ引っ越してきたデイビッド・ケヘさんは、朝の運動でアラワイ運河沿いを歩いていたとき、思いがけない光景に出会いました。芝生の上で、何人もの大人が真剣な表情で泥団子を丸めていたのです。子どもたちの遊びかと思いきや、問いかけに返ってきた言葉は「ゲンキボールを作っているんです」。

その日は、月に一度開催されている「ゲンキアラワイプロジェクト」のコミュニティイベントの日。地域住民や旅行者、そして非営利団体「ゲンキアラワイプロジェクト」のメンバーたちが、運河の水質改善を目指して集まり、EM(有用微生物群)入りの特製泥団子(ゲンキボール)を作っていたのです。

「ゲンキアラワイプロジェクト」の活動に賛同したデイビッドさんは、すぐにボランティアとして参加することを決めました。

大阪・道頓堀の奇跡からハワイへ

この活動の背景には、沖縄で誕生し、大阪・道頓堀川の浄化に一役買ったEM技術の存在があります。その歴史は、1960年代の九州大学にさかのぼります。ミカンの研究を行っていた比嘉照夫琉球大学名誉教授が、偶然にも微生物の力に気づき、1980年代にその効果を証明。その後、2003年から始まった大阪市漁業協同組合による道頓堀川の浄化活動では「EM団子」や「EM溶液」が使用され、川の悪臭やヘドロの軽減に成功しました。

この技術がハワイに届いたのは1996年。ゲンキアラワイプロジェクトの発起人の一人でもある名護千賀子さんの夫で、ハワイ出身の日系3世である宏道さんが沖縄で比嘉教授と出会い、EM技術に惚れ込んだのがきっかけでした。1998年にはEM研究機構での研修を経て、2000年に「EM Hawaii」を設立。ハワイでの活動が本格的に始まりました。

アラワイ運河への挑戦

とはいうもののアラワイ運河への導入はすぐには実現しませんでした。2006年の大雨で、1億8,170万リットルもの大量の下水を運河に流さざるを得なかった際も、国や市からの許可が下りず、EMの投入は叶いませんでした。13年にもわたる長年の努力が実って、2019年、ついに許可が下り、アースデイの4月19日には、伝統航海カヌー「ホクレア」から、マスターナビゲーターのナイノア・トンプソン氏や当時のハワイ州知事デイビッド・イゲ氏らとともに、初めてのゲンキボールが運河に投げ入れられました。

名護さんに聞く、プロジェクトの今

名護さんによると、プロジェクトは現在5名の主要メンバーと、多くのボランティアによって運営されているそうです。「すべてがボランティアの賜物です。私たちは、アラワイ運河を昔のように泳げる水域に戻すことを目指しています」。その目標は、30万個のゲンキボールを投下し、2026年までに運河を再生させること。

企業チャリティイベントに参加

6月21日(土)に開催された企業向けプライベートイベントに、筆者も特別に参加させてもらいました。このイベントには、First Insurance Company of Hawaii, LTD社の社員や家族、5歳の子どもからリタイア世代まで、総勢60名以上が参加しました。会場は、カパフルストリートとアラワイブルバードの角にあるワイキキ・カパフル図書館前の芝生。朝9時の集合とともに、スタッフからプロジェクトの概要やゲンキボールの成分について説明があり、「アラワイ運河の問題を、自分ごととして考えてみてください」という言葉が強く印象に残りました。

準備が整うと、参加者は6~10名ずつのグループに分かれて実作業へ。まずは土をふるいにかけてゴミを取り除き、米ぬかと糖蜜を混ぜたEM溶液を加えて練っていきます。「ブラウニーの生地みたい!」という声も上がり、手が泥だらけになるのも楽しみのひとつ。

テニスボールより一回り小さく、しっかりと硬さのある丸いボールが理想。乾燥時の均一さを考えて、大きすぎても小さすぎてもやり直し。First Insurance Company of Hawaii, LTD社のみなさんは2回目の参加とあって手慣れた様子で、656個のゲンキボールが30~40分で完成しました。

乾燥には3週間ほどを要し、今日使うのは前回のイベントで作られた分。表面に白いカビのようなものが見えますが、これは微生物の働きによるもので、まったく無害。硬さも十分で、運河の底に届いてゆっくりとEMが広がる仕組みです。

「ゲンキ・ホウ!(ホウはハワイ語で「再び」の意味)」という掛け声とともに、参加者は岸辺から一斉にボールを投げ込みます。子どもたちの歓声があがり、笑顔がはじけます。

Waiakeaの支援とボランティアの力

当日は、ハワイ島発のナチュラルウォーターブランド「Waiakea」がスポンサーとして協力。参加者には冷えたペットボトルの水が配られ、暑さの中でも安心して作業に集中できる環境が整っていました。こうしたサポートもまた、すべてボランティアと善意の支えによるものです。

観光するだけじゃない「参加する旅」へ

ゲンキアラワイプロジェクトでは、こうした企業向けイベントのほか、月に一度のコミュニティイベントも開催。次回は8月3日(土)、その次は9月7日(土)の午前9時から11時30分までを予定しています。誰でも参加可能で、英語が話せなくてもまったく問題ありません。詳細は、事前にメールか電話にてお問い合わせください。

アラワイ運河は、もともと1928年に湿地帯であったワイキキを排水するために建設され、都市開発の礎を築きました。しかし人口増加と観光の拡大により、長年にわたって汚染が進行。いま、私たち一人ひとりの行動が、その未来を左右する時代になっています。

観光するだけではない、「参加する旅」へ。自然や地域とつながる体験は、旅に深みを与えてくれます。ハワイを愛するあなたにこそ、この活動を知って、関わってほしい……アラワイ運河のほとりで、そんな想いに包まれた一日でした。

ゲンキアラワイプロジェクト URL: https://www.genkialawai.org/japanese-1(日本語) URL: https://www.genkialawai.org/(英語) Email: genkialawai@gmail.com(日本語) 電話:808-561-0917

TEXT by 小嵜 有美

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