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【静岡市歴史博物館の「以南蛮鉄於駿州越前康継」公開】 大御所時代の徳川家康が所持した刀剣、収蔵後初公開

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡市歴史博物館が新たに収蔵した江戸初期の刀剣「以南蛮鉄於駿州越前康継」を題材に。1月7日から2月2日まで基本展示の室内で公開している。13日は開館2周年記念で観覧無料。

博物館2階の家康の生涯をたどる展示フロア。赤黒の甲冑(複製)や巨大な金扇馬標(複製)を眺めながら歩を進めると、最終コーナー「神となった家康」に刀剣が鎮座している。東照宮扁額の真下に設置されたことで神々しさが備わっているようにも見える。

同館初公開の「以南蛮鉄於駿州越前康継(なんばんてつをもってすんしゅうにおいてえちぜんやすつぐ)」は近江国出身の初代越前泰継が17世紀初頭に駿府で制作したとされる。徳川御三家に伝わる家康の遺品「駿府御分物(すんぷおわけもの)」の一つで、家康の十男頼宣(紀州)が所持していたという。

康継はもともと家康の次男結城秀康に仕えたが、刀工としての腕を見込まれて家康にスカウトされた。家康が名前の1字を与えたと言うから、かなり高い評価だったのだろう。

「以南蛮鉄於駿州越前康継」は長さ二尺六寸(81.4センチ)で刀剣としては幅広とされる。一見して感じるのは刀に傷一つないこと。茎(なかご)の銘がはっきり読み取れる。刀剣鑑賞の知識は十分ではないが、刃とほぼ並行に刃文が見られ、ちょっと腰をかがめると「匂口」が明るく光り出す。

全体的にどこか穏やかな印象だ。合戦の荒々しさを想起させない。陽光を浴びながら目を細めて駿府城下を眺める家康の姿が浮かんだ。鑑賞しているうちに気持ちも平らかになった。あっという間に30分がたっていた。
(は)

<DATA>
■静岡市歴史博物館「以南蛮鉄於駿州越前康継」公開
住所:静岡市葵区追手町4-16 
開館:午前9時~午後6時
休館日: 毎週月曜(祝日を除く)、祝日の翌日(土日曜を除く)
基本展示観覧料(当日):一般600円 、高校生・大学生と静岡市内に居住する70歳以上420円、小・中学生150円、静岡市内に在住・通学の小・中学生と未就学児無料
会期:2月2日(日)まで

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