Yahoo! JAPAN

かりゆし58、3年ぶりのツアーが満員の大阪で幸せいっぱいに終幕――「バンドの宝物がここにはあります」

SPICE

かりゆし58

ハイサイロード2025-ジュークボックス-
2025.2.26 大阪・BIGCAT

かりゆし58が、約3年ぶりの全国ライブハウスツアー『ハイサイロード2025-ジュークボックス-』最終公演を、2月26日に大阪・BIGCATで開催した。同公演は、1月25日の沖縄・ミュージックタウン音市場を皮切りに全10公演にわたり行われてきたツアーの千秋楽で、2月22日にデビュー19周年を迎えたばかりのお祝いムードの余韻のなか、活動の初期から縁のある大阪に多くのファンが集まった。

ネーネーズの開場BGMから「そろそろかりゆし」の軽快なSEに切り替わり、真っ暗なステージに現れたシルエットに大きな拍手が巻き起こる。「ハイサイ~!」と前川真悟(Vo,Ba)が開口一番、各地で宴の幕開けを担ってきた「恋人よ」で今宵もライブはスタート。1曲目から宮平直樹(Gt)がエネルギッシュにアピールし、この10本で、いや、この19年で培った頼もしいバンドサウンドを一丸となって鳴らしていく。続く「声を」でも見渡す限りの手が上がる美しい景色をあっという間に作り上げ、まるで久々のツアーの愛しい思い出をかみ締めるかのように、「会いたくて」を切々と歌い上げていく。

中村洋貴(Per.)とサポートドラムの柳原和也の躍動するリズムが導いた「ジュークボックス」の途中で、選曲や大まかな仕切りを担当するこの日の「日直当番」である宮平が、「大阪・BIGCAT、ツアーファイナルへようこそ~!」とごあいさつ。ファイナルながら唐突に稲川淳二の物まねを織り交ぜたふわふわとした進行には(笑)、メンバーに加え客席から幾度も茶々が入ったのが何ともほほ笑ましい。

ここからはツアータイトルにちなみ、ライブであまり演奏してこなかった楽曲やSNS等でリクエストされた曲を披露する「ジュークボックス・コーナー」ということで、「手と手」では宮平がベースにスイッチし、前川がハンドマイクで「大阪、関西の兄弟たちへギターで新年のごあいさつ~!」といざなえば、新屋行裕(Gt)のエモーショナルなソロが炸裂! 「沖縄、広島、京都、福岡、香川、石川、宮城、東京、愛知……このツアーで通ってきた全部の街を超えるためにやって来ました。大阪が日本で、世界で最高の街だってあなたと証明したいです!」という前川の願いが見事に現実となり、満員御礼ソールドアウトのフロアが手を振り歌った光景は幸福感いっぱいだ。

その後も、「Go!MangoMan」のノリのいいビートに観客が自ずと肩を揺らしたかと思えば、祝祭の「サマーソング」を経由し、希望に満ちたメロディに力が湧き上がる「マゼラン海峡」、前川×新屋×宮平のユニゾンリフがとことん気持ちいい「雨のち晴れ」と立て続け、見どころ満載の「ジュークボックス・コーナー」を締めくくる。

「新たな出会いを求めてライブとかツアーをやっているんだと思います。そして、今日あなたに出会うまで、19年の道のりを一緒に歩いてくれた皆さま! 子どもがうらやましがるぐらい、大人が本気で遊んでいるところを見せてやりましょう。ライブハウスにおかえりなさい!」(前川)

そんな言葉をもらって盛り上がらないわけがない「電照菊」、かりゆし58と出会った人々の幾つもの夢を支えてきたであろう「ウクイウタ」と、体も心も奮い立つナンバーの連続には胸を揺さぶられる。「風のように」に心地良く身を委ねた後に、イントロから歓喜のどよめきが起こった名ラブソング「恋唄」がもたらした、得も言われぬ郷愁と切なさもたまらない。

「この間ネットで調べたところ、かりゆし58の楽曲は世に193曲出ているみたいで。ということは、ライブを2~3時間やったとしても出られない、ベンチ入りもできない子たちがいるんだなと気付いて。今回はこの子たちをちゃんと成人させてからバンドも20歳に向かおうと思って、いろんな曲を連れて参りました。ただ、曲にも負けないバンドの宝物がここにはあります。それが今日までの歩みを一緒に支えてくれた人たちです。初めて来たあなたも宝物になってくれたらいいなと思います」(前川)

後半戦は「さらば太陽」を皮切りに、ファニーで楽しい「そばの唄」、曲名さながらライブの起爆剤となる「JUMP UP!」、疾走感溢れる「レイニー・レイニー」~「Let's go drinkers」の高速ロックチューン2連発と、193曲からチョイスした緩急自在のセットリストで一気に畳み掛けていく! そして、偶然にも当日がバースデーでもあった宮平が、「こんな大勢の前で誕生日を迎えるのは生まれて初めてです。本当にありがとうございます!」と感謝を述べ、前川がこう続ける。

「今から19年前の2月21日、デビューの前の日はどんな気持ちだったのか。最近、思い出す機会が多くて。明日からCDがお店に並ぶ、世の中に産声を上げるワクワクを鮮明に覚えているんです。CDが出た後はすぐに意気揚々と初県外ツアーに行って、レコード会社の方から言われました。「君たちのCDの売れ行きがものすごく芳しくない」と(笑)。2000枚出荷して1300枚返品されたと。日本には1億2000万人いるはずなのに700枚しか売れなかった。しかもそのうち100枚は母ちゃんだし(笑)。次がダメなら契約は厳しい。そんな状況で生まれた曲に、このバンドは人生を変えてもらいました。一緒に歩んできた仲間の誕生日祝いも兼ねてやりたいと思います」

満を持しての代表曲「アンマー」がリリースされたのは2006年。時を超え鳴り響く音楽のとてつもない力に、今も変わらず勇気づけられる。ここで、「メンバーさん、「ナナ」をやりませんか?」という前川の急な提案に瞬時に対応したアンサンブルにも、19年という時間を共にしたあうんの呼吸が感じられた。

「もう終盤になってきて、《大切な人はこんなにも近くにいるんだね》と歌いたくなったんです」とその衝動の真意を話し、かりゆし58のモットーとも言える「ただひとつだけ伝えたいこと」を届けた前川が、「全然うれしくないのですが、次が最後の曲になります。嫌だよね。なので一回終わってみてみんなで考えましょう(笑)」と告げ、「オワリはじまり」へ。その歌で、MCで、何度も大事なことに気付かせてくれる。それがかりゆし58のライブだと、今日もまた思い知る。

「延長戦、打ち上げタイムでございます!」(前川、以下同)とこれまたアガる一言から始まったアンコールでは、「来年は20周年、なるべくたくさんの人とお祝いできる広い場所でやってみたい~!」とさらにぶち上げ、満場のオーディエンスが飛び跳ねた「ア・モーレ ア・モーレ」~「夏草恋歌」で、宣言通りの「打ち上げタイム」な大盛況! 最後は束の間の別れを惜しみ、近い未来での再会を約束する「さよなら」を。「これにて『ハイサイロード2025-ジュークボックス-』、結びとさせていただきます!」と充実した表情で幸福な一夜を駆け抜けた、かりゆし58だった。

取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=マッサン

【関連記事】

おすすめの記事