【医師直伝】連休明け、会社行きたくない人へ。仕事モードに戻るリハビリ3ステップ
連休明け、仕事に戻るのが億劫に感じるのは、あなただけではありません。実際、約85%の会社員が「出社したくない」と感じているという調査結果があります(※)。
この記事では、心療内科医・産業医の森秀和院長が、心身の負担を軽減し、無理なく仕事モードに戻るための3つのステップを解説します。
文・渋谷365メンタルクリニック 院長 森秀和
連休明けのやる気ゼロは普通のこと。自分を責めないことが大切
長期連休が明けた後、「やる気が出ない」「仕事モードに戻れない」という状態は、決して珍しいものではなく、むしろ自然な反応です。
休み中は非日常的なモードでリラックスしていたため、仕事モードに戻るには脳が環境変化に適応する時間が必要です。そのため、連休明けに憂鬱さを感じたり、エネルギーが足りないと感じたりするのはごく普通のこと。数日から1週間もすれば、徐々に通常のリズムに戻るでしょう。
大切なのは、 「やる気が出ない自分を責めないこと」 。このとき役立つのが 「セルフコンパッション(自己への思いやり)」 の考え方です。自分を責めるのではなく、「連休明けは誰でもしんどいものだから、ゆっくり適応していこう」と優しく受け止めることが、心の負担を減らすポイントです。
では、どのように仕事モードへと戻していけばよいのでしょうか?3ステップで解説します。
連休明けの「リハビリ術」3ステップ
1. いきなり全力投球しない
連休明けからフルスロットルで働こうとすると、心身ともに負担が大きくなります。まずは低めのハードルからスタートしましょう。
例えば、「15分だけ集中して作業してみる」のをおすすめします。なんとなく始めた作業でも集中して続けるうちに気分が盛り上がることがあります。これは「作業興奮」とも呼ばれ、結果として集中が持続しパフォーマンスが上がります。
また、「こまめに休憩を取る」ことも良い方法です。「30分作業したら3~4分程度休憩する」といったルールを決めて取り組んでみてください。席を立ってコーヒーブレイクをしたり、外を眺めて深呼吸したりするだけで、リフレッシュになります。
このように、無理のない範囲で取り組むことが大切です。また、最初は全力の60〜80%程度で作業するつもりで進めるのも良いでしょう。「まずはメールの1番上だけ返す」など、やるべきことを分解して、取り組みやすいタスクから手をつけるのも有効です。
2. 仕事の中に楽しみを取り入れる
少しでもポジティブな気持ちで仕事に向き合うために、小さな楽しみを取り入れてみてはいかがでしょうか。例えば以下のような方法があります。
仕事終わりにお気に入りのカフェに立ち寄る 少し豪華なランチを楽しむ 好きな音楽を聴きながら作業する お気に入りの文房具を使う アロマやハンドクリームでリラックスする
ポイントは、 立派なご褒美を用意する必要はなく、自分が心地よいと思える小さなご褒美を取り入れること です。ちょっとした楽しみにより気持ちの切り替えがしやすくなります。
3. 生活リズムを整える
連休中に崩れた生活リズムを取り戻すことも重要です。特に、
朝起きる時間と寝る時間を一定にする 朝の軽い運動(5分程度のウォーキングなど)を取り入れる 寝る前のスマホ・動画視聴を控える リラックスできる習慣を取り入れる(ストレッチや読書など)
これらの習慣を意識するだけでも、スムーズに仕事モードに戻りやすくなります。
たとえば、実際に私のクリニックを受診された方にこんなケースがあります。IT企業に勤務する30歳男性の方は、リモートワーク中心の生活を送っていました。連休中に生活リズムが大きく乱れてしまい、連休明けには極端な無気力感に襲われてしまったのです。朝起き上がることさえ困難で、PCを開くことすら辛い状態になってしまいました。
その方は、カウンセリングとあわせて、朝の散歩や決まった時間に業務を始める習慣、仕事中に小さなご褒美を取り入れるといった工夫を行うことで、1ヶ月ほどで徐々に気持ちが上向きになりました。現在では週に1回の出社日を設定し、生活リズムを保ちながら無理なく働けるようになっています。
どうしてもやる気が出ないときの過ごし方
先述の通り、連休明け数日から1週間ほどはやる気がでなくとも普通のことです。もし連休明けから1週間以上経っても状況が変わらない場合は、
上司や同僚に相談する 社会生活や日常生活に支障がでる場合は専門家(心療内科・精神科など)に相談する
という対応も考えましょう。連休明けは、社会人だけでなく学生でも気持ちの乱れが起こりやすい時期です。無理に頑張りすぎず、適切に対処することが大切です。
このときも、「セルフコンパッション」を忘れずに。必要以上に自分を責める必要はありません。
職場全体で「緩やかなスタート」を意識
マネジメントの立場で活躍する方は、チーム内で連休明けにスタートダッシュを強いるのではなく、「1週間ほどかけて徐々にペースを戻す」意識を持つことが重要です。「最初の1週間は調子が戻るまでに時間がかかるもの」とチームで同様の認識を持つことで、社員のストレスを軽減できます。
マネジメント側は連休明けは特に、
仕事にポジティブな感情をもってもらえるような声がけ スケジュールに余裕を持たせる チーム内で負担を分散する
といった工夫をすることで、結果的に生産性の向上にもつながります。
まとめ
連休明けのやる気低下は普通のこと。大切なのは、
いきなり全力投球しない 仕事の中に楽しみを取り入れる 生活リズムを整える
そして、 セルフコンパッションを意識し、自分を責めずに優しく受け止めることも重要 です。
この3つのステップを意識しながら、無理なく仕事モードへと戻していきましょう。それでもやる気が戻らない場合は、一人で抱え込まず周囲に相談することも大切です。
「連休明けの仕事、憂鬱だな」と感じたら、ぜひこの記事で紹介したリハビリ術を試してみてください。
プロフィール
渋谷365メンタルクリニック
院⻑ 森秀和
産業医科大卒業後、同大学心療内科医として勤務。その後、IT企業、コンサルティング企業、大手エンタテイメント系企業の専属産業医として活躍。23 年に渡る心療内科・精神科医療の経験と、産業医として幅広く活動してきた経験から、多角的な視野で患者さまのメンタルヘルス疾患に柔軟に対応することを得意としている。
企業サイト
渋谷365メンタルクリニック
保有資格
日本心身医学会・日本心療内科学会合同 心療内科専門医
日本内科学会総合内科専門医
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
特定社会保険労務士