静岡市民文化会館、閉館。ラウドヒル計画と歩んだ10年。劇中映像と共に
2024年11月に開催されたラウドヒル計画 大型公演「TRUST!!」のダンスシーン PHOTO ©HARU 2024
春の息吹が、静岡の街に新たな変化を告げています。長年、市民に親しまれてきた静岡市民文化会館が、3月末をもって一時閉館となります。老朽化に伴う改修工事とはいえ、思い出が詰まった場所との別れは、どこか寂しさを伴います。
私にとって、市民文化会館は特別な場所です。それは、「ラウドヒル計画」の拠点であり、私が10年以上関わってきた舞台創造の場だからです。
ラウドヒル計画とは、静岡の人々による完全オリジナルの舞台作品を継続的に創作し、発信していくプロジェクト。2013年から活動を続ける、異色のパフォーマンス集団です。
演劇、ダンス、音楽、そして映像... あらゆる表現方法を融合させ、観客の心を揺さぶる舞台を創り上げてきました。その中で私は、立ち上げ当初から劇中で使われる映像演出のスタッフとして、活動に主体的に関わってきました。
ラウドヒル計画の魅力とは?
ラウドヒル計画の舞台は、山梨県民や神奈川県民が見たら「それって何のこと?」と思うほど静岡オリジナルでありながら、社会問題や人間の感情を鋭く、そして繊細に描き出します。
笑いと涙、光と影、静と動... 対照的な要素が絡み合い、観る者の心を揺さぶる、独創的でエネルギッシュな舞台です。
「ラウドヒル計画」の活動全体を引いた視点で見れば、ラウドヒル計画の総監督 勝山康晴さん(静岡出身)の「静岡に生きる誰もが、静岡に生きていることに、堂々と胸を張れる賑やかな場所にしていくこと」という理念が貫かれています。
「誰の許可もいらない。創りたいものがあれば、誰もが創っていい。立ってみたい舞台があれば、誰もが立っていい」という考え方そのものが、ラウドヒル計画の魅力です。
海を越えて、つながる想い
ラウドヒル計画との10年を超える道のりの中で、忘れられない出来事があります。
2018年から3年間、私は仕事でアメリカのシリコンバレーにいました。渡米当初、慣れない土地での生活で自分を見失いそうになりました。
「私は何がやりたかったんだろう?」 そのとき自分に問いかけ続けてたどり着いたのは、「誰かを楽しませたい」ということでした。
ラウドヒル計画は、まさに私が実現したいことのど真ん中にあったのです。時差や距離の壁は厚く、静岡での活動に直接参加することは叶いませんでしたが、ラウドヒル計画の活動から離れることはできませんでした。彼らの舞台への情熱、そして、共に作品を作り上げてきた仲間たちへの想いは、海を越えても消えることはなかったからです。
インターネットを駆使し、静岡にいるチームと連携しながら、映像制作を続けました。深夜のビデオ会議、膨大な量のデータのやり取り... 決して楽な作業ではありませんでした。
しかし、ラウドヒル計画という特別な場所に対する愛着、そして、彼らの舞台を支えたいという強い思いが、私を突き動かしました。遠く離れた場所で、同じ目標に向かって共に進む仲間たち。それは、かけがえのない経験であり、私の宝物です。
ラウドヒル計画の劇中映像を作り続けた 米サンフランシスコのアパートにて(2020年撮影)
世界を舞台に活躍する「表現者」勝山康晴
ラウドヒル計画を率いるのは、勝山康晴さんです。プロデューサー、演出家、劇作家、ロックミュージシャン...と、いくつもの顔を持つ彼は、まさに「表現者」の代名詞。SBSラジオでパーソナリティを務めていたこともあり、世界を股にかけて活躍する人気ダンスカンパニー「コンドルズ」のプロデューサーでもあります。
コンドルズといえば、男性のみで構成された、ユニークでパワフルなダンスパフォーマンスで知られます。彼らは世界20ヶ国以上で公演し、ニューヨークタイムズ紙からも絶賛されるなど、国内外で高い評価を得ています。
勝山さんは、コンドルズの活動を通して、エンターテイメントの可能性を追求し、新たな表現方法を模索してきました。その経験とノウハウは、ラウドヒル計画の活動にも大きく活かされています。
勝山さんの魅力は、その溢れ出す情熱と、人を惹きつける力にあります。彼は、周囲の人々を巻き込み、大きなうねりを生み出す。ラウドヒル計画のメンバーはもちろん、舞台に関わるスタッフ、そして観客までもが、彼の熱意に共鳴し、一つになっていきます。
「発表会」ではない、「作品」をつくる
ラウドヒル計画は、市民参加型の舞台を作る活動ですが、大切にしているのは「発表会にはしない」「作品をつくる」ということです。
参加者は、年齢も経験もバラバラです。それでも、勝山さんの指導のもと、プロのスタッフと共に、時間をかけて一つの作品を創り上げていきます。そこには、妥協も手抜きもありません。参加者一人ひとりが、自分の役割を全うし、最高のパフォーマンスを目指します。
だからこそ、ラウドヒル計画の舞台は、観る者の心を打ちます。そこには、アマチュアとは思えないクオリティの高さと、参加者たちの情熱が溢れています。そして、その情熱に見合う映像をどう編み出すか。それは、私にとって常に挑戦であり、喜びでもありました。
市民文化会館との別れ、そして未来へ
市民文化会館は、ラウドヒル計画にとって、単なる公演会場ではありません。10年以上もの間、共に歩んできた、かけがえのない「第二の故郷」です。
稽古を重ね、汗を流し、時にはぶつかり合いながらも、共に作品を作り上げてきました。公演の本番、映像操作席から見る客席とステージの景色、ホールに響き渡る拍手、そして、終演後の達成感... 市民文化会館には、ラウドヒル計画の"青春"が刻まれています。
だからこそ、今回の閉館は、私たちにとって大きな意味を持ちます。それは、一つの時代の終わりを告げると同時に、新たなステージへの幕開けを予感させるものです。
3月22日・23日、市民文化会館の改修閉館直前公演として、ラウドヒル計画は「LOVE & PEACE」を上演します。
このタイトルには、市民文化会館への感謝の気持ち、そして、未来への希望が込められています。
最後の舞台、そして新たな始まりへ
「ラウドヒル計画の舞台を見たことがない」
もし、あなたがそう思っているなら、ぜひ「LOVE & PEACE」を観に来てください。
私たちの舞台は、きっとあなたの心を揺さぶり、忘れられない感動を与えてくれるでしょう。日常の喧騒を離れ、非日常の世界へ。 五感を刺激する、唯一無二の舞台体験を、あなたも味わってみませんか?
私も映像スタッフとして、改修前最後の舞台に全力を尽くします。 そして、新たなステージへと進むラウドヒル計画を、これからも背負い続けます。
(事業変革推進室・奈良岡将英)
公演情報
【日時】
2025年3月22日(土)15:00開演
2025年3月23日(日)13:00開演&17:00開演 ※開場は開演の30分前
【会場】
静岡市民文化会館 中ホール
〒420-0856 静岡市葵区駿府町2-90 https://www.scch.shizuoka-city.or.jp/
【料金】
一般 2,000円、U-25 1,500円
※車いす席は上記区分と同額(介助者1名無料)
※4歳以上有料。3歳以下の方の膝上鑑賞は無料。ただしお席が必要な場合有料。
【チケット取り扱い】
静岡市民文化会館[窓口・電話]054-251-3751
【出演】(※五十音順)
エイトビート
大井理弘 大石 樹 岡野鷹也 金森恭平 勝呂達基 登澤祐吾 豊福孝之 長島弘志/岡 康史 磯中ゆうき(友情出演)
[オープニングアクト]
フリーダムティーン & フレッシュビギナーズ
赤堀翠 赤堀奏多 有馬菜月 アンジー 池ヶ谷和希 きっくー 小柳明依 坂田澄香 佐野心音 進士柚稀 杉山涼音 津谷そら 桃原隆一朗 西原純子 古屋航 三原咲彩 山下萌生
フォーエバードリーマーズ
あっき~ 井上さつき 大石克哉 太田里美 影山司 小池純子 白土ユリ 田中嶋圭子 花井安規子 久野貴子 堀田一成 本多佐千子 三浦義信 村越潤 山田将生
ファンキーノーボーダーズ
大西ハイカン徹 高坂仁 杉野日向子 杉野日陽里 スケポン 鈴木天晴 鍋田亜由美 長谷川光世 藤浪智矢 松浦友子 矢部陽子 山岸正哉 渡辺健一 & ラウドヒル計画有志メンバー
【スタッフ】
[総監督・脚本]勝山康晴
[演出]河田園子
[振付・ダンス指導]スズキ拓朗
[演出助手]岡 康史 中田百奈美
[ノーボーダー振付・ダンス指導]山本光二郎
[イメージイラスト]yazwo
[映像]奈良岡将英 富田晶子
[宣伝美術]柳沼博雅
[Web制作]青木 崇
[Web宣伝]ひろっしー
[舞台監督]山本英子
[照明デザイン]石川達一
[音響オペレート]谷口祐基
[テクニカルスタッフ]株式会社アス
[スペシャルサンクス]大野裕明
【企画協力】ROCKSTAR有限会社 合同会社オーバードライブ
【企画制作】静岡市民文化会館 指定管理者 静岡市文化振興財団共同事業体
【主催】静岡市