宇宙?空中?陸!? そこにいるはずのない魚が出てくるアニメ
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はメッセージテーマ「魚が出てくるアニメ」というお題に合わせて、「そこにいるはずのない魚が出てくるアニメ」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
宇宙にいる魚
まず1本目は「宇宙にいる魚」です。SFロボットアニメ『超時空要塞マクロス』、第4話「リン・ミンメイ」では、巨大宇宙船マクロスの閉鎖区間に閉じ込められた主人公、一条輝とヒロイン、リン・ミンメイのサバイバル生活が描かれます。
日数が経過し、次第に食料がなくなってきたところ、ふたりは窓の外の宇宙にマグロがいることを発見します。マクロスが、宇宙空間へフォールド(ワープのような超光速航法)した瞬間、周囲の海を巻き込んでおり、そのままマグロも宇宙に運ばれてきたんです。でも、船外活動用の装備などありません。輝は、パイロットスーツを補修し、姿勢制御用のオモリをふたつ持って、マグロを捕らえるために宇宙に出ていくが……というお話でした。
空中にいる魚
2本目は「空中にいる魚」ですね。『きんぎょ注意報!』という原作『なかよし』連載の少女漫画で1992年に放送されました。わぴこという主人公のいる田舎ノ中学校に、お金持ちの藤ノ宮千歳が転校してきて、田舎ノ中学校のユニークな面々に振り回されるというドタバタギャグストーリーです。
この千歳がペットとして飼っていた金魚「ぎょぴちゃん」は時価数億円の大変高価な金魚なのですが、主人公のわぴこと友だちになって、いつも“肩の近く”に浮いて一緒に行動しているんです。しかも、このぎょぴちゃんの好物はポテトチップスという設定。どう考えても、リアイリティからはほど遠い、絶対に存在するはずのない“魚”なんですが、これがマスコットキャラとしては最高に可愛くて、人気キャラクターだったんです。
ちなみに余談ですがポテトチップスのことを「ポテチ」と略すのは、この『きんぎょ注意報!』がきっかけだったといわれています。
陸にいる魚
3本目はスタンダード(?)に「陸にいる魚」です。これは漫画家・伊藤潤二さんの『ギョ』というホラー漫画を、当時ufotableに所属していた、『映画大好きポンポさん』の平尾隆之監督がアニメ化し、2012年にリリースしたビデオ作品です。
上半身が魚、下半身が人間という、半魚人的な魚人が出てきてグロテスクなんですが、ポイントは臭いなんです。生臭い上に死臭がしているという設定でした。
女友達と卒業旅行に沖縄に出かけた大学生・華織が主人公です。この旅行先に死臭がする奇怪な歩行魚が現れます。さらには凶暴なサメの歩行魚みたいなのも出てきたりして、そのパニック状態からいかに逃げるか、東京にいる彼氏と連絡を取りながらいかに生き延びるかという話が展開していきます。直球のホラーパニックもの、ゾンビ映画の一種の変奏として楽しく見られます。
どれも魚ではありますが、水の中にいるとは限らない。アニメの中では、いるはずのない意外なところにいる方が面白くなるということが起きてくるわけですね。