「そうなんですよ!」大竹まことが“プロパガンダ”の解説を聞いて大いに納得
お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜13:00~15:30) 1月6日の放送は、中央公論新社から発売中の『ルポ 国威発揚-「再プロパガンダ化」する世界を歩く』を著した評論家で近現代史研究者の辻田真佐憲氏をお招きし、本の内容について伺った。
大竹「今回の御本は『ルポ 国威発揚-「再プロパガンダ化」する世界を歩く』。ちょっと難しいタイトルですけども、これは過去にあった日本の歴史とか文化みたいなものが、新しいSNSの世界でも、情報戦の中で大きな位置を握っていくんじゃないかっていう御説ですか?」
辻田「そうですね。今、特に去年2024年は、SNSや動画がすごく注目を集めた年でしたよね。」
大竹「はい」
辻田「政治的なコンテンツを、動画で上げるとすごいバズるので、みんな似たような政治家を呼んだりとか何だりすると言うのが流行ったわけですよ。選挙にも影響がでたんじゃないかとも言われているわけです。プロパガンダは第一次世界大戦ぐらいから普及した言葉なので、それがすごい久しぶりにリバイバルしたなって感じです。
じゃあ、第一次世界大戦の頃と現在の情報戦、プロパガンダはどこが違うのか。現在はどういう特徴があるのかを見たくて、ネットを見るだけじゃなくて、現地に行ってみようということでこの本を書きました」
大竹「浅い質問で申し訳ないんですけど、プロパガンダっていうのは、どう日本語に訳せばいいんですか?」
辻田「一般には「政治宣伝」って言い方にあたります。プロパガンダって、人によって使いかたが全然違うので」
大竹「そうなんですよ」
辻田「定義が難しいんですけど、多くの人が共感してくれるような定義で言えば、国家とか政党が上から人々の思想とか行動に影響を与えようとしてやっている組織的な宣伝と言うことです」
大竹「政治宣伝っていう意味はわかりやすいですね。さて、今日、歴史と文化はますます情報戦の武器となっています、と御本に書かれています。これはどういったことでしょうか?」
辻田「先ほども申し上げた通り、普通、我々は歴史とか文化というのは、平和なもの、学校で習ったりとか博物館で見たりとか観光に行ったりとか、そういったものだと思っていて、あまり政治と結び付けてないと思うんですよね。ところが時代によっては結構政治と結びついている時期が定期的にあります。第一次世界大戦とか第二次世界大戦の時はそうですよね。歴史上の日本の英雄みたいな、例えば楠木正成みたいな人が急に持ち上げられて、お前たちも楠木正成のように天皇のために倒れるべきだ、みたいな宣伝が行われるようになるわけですよ。普段は教科書とか博物館のテーマが急に政治的になるっていうことなんですよね。じゃあ21世紀のSNS時代においては、この歴史や文化は、どういう風に政治と結びついているのか、そこが見たいっていうのが今回の趣旨なんですね」
大竹「そうなってくると、大きく有名なとこよりも、そうじゃない自治体の観光案内とか、地元民の意見とか、何気ない記念碑、お土産、落書き、そんなことに気にするところが多いとお考えですよね」
辻田「皆さん、SNSとかネットの動画を分析はよくやるんですよ。でも、もう結論のパターンは決まっていて、注意しなきゃいけない、リテラシーを高めましょうというオチがわかってるわけですよ。だから私はもうちょっと先に行きたいなと思って、ネット時代だけれども、あえて現実のリアルな博物館とかリアルな記念碑とか、そこを見に行ってみようと。というのは、ネットで炎上しているテーマも実際のリアルなことだったりするわけですよね。ですから、やっぱり現地を見てなきゃいけないなと思ったんですね。そして見て思ったのはプロパガンダっていう言葉は、先ほど言ったように上からくるものなんですけど、現地に行くと別に政府とか自治体がやってるんじゃなくて、むしろ一般の民間の人たちが、政治的な意見を自分たちが表明したいということで、記念碑をたてていたり、神社を作っていたり、下からの参加という動きをしている。上からの統制ではなくて、下からの参加という動きが実は重要じゃないかと思いまして、そういったところを皆さんに分かりやすく紹介しているのが今回の本ですね」