給食詰まらせ1歳が死亡…「骨折よりも命優先」専門家が教える対処法2選をやってみた
11月、北海道の保育園で1歳1か月の男の子が給食の「豚肉の炒めもの」をのどに詰まらせ、死亡していたことが明らかになった事故。
事故が起きたのは 、北海道札幌市の認可保育園「アイグラン保育園拓北」です。
株式会社アイグランの西岡寿彦部長はまず、「与えた物が本当に適切だったかについては、今はまだ調査しています」と説明しました。
離乳食に関しては、子ども1人1人で個人差が大きいため、保護者とのやりとりが必要になってきます。
「どこまで保護者との連携が取れていたかが大事になってくると思うので、そこを含めて確認をしているところ」と話し、発生から3週間以上がたったこのときも「確認中」という言葉を繰り返しました。
保育園で行われた3回目の保護者への説明会を終えても、参加者からは「わからなかった」「納得はできない」と不安の声が聞かれました。
幼い命が失われた悲しい事故。
子どもの食事に潜む危険を深掘りします。
連載「じぶんごとニュース」
札幌市から車で約1時間、北海道歌志内市の”認定こども園あおぞら”です。
園児34人を預かる長沢栄子園長は、札幌市の事故は「他人事ではない」と言います。
「家庭でも園でも、どこでもありえることかなと思った」
園児の給食は、園内で調理。
この日のメニューはカレーライスです。
配膳前には必ず、園長自らが「検食」します。
「とろみ具合がどうなのか、お野菜が固くないか、のどに詰まらせる心配はないかをチェックします。きょうも大丈夫です」
食べる前も、食べ始めても…
お待ちかねの給食の時間。
まず、お茶や汁物でのどを潤します。
食べ始める前に、「のどの通り」を良くするのです。
歌志内認定こども園「あおぞら」では、一人一人の園児に合わせた「大きさ」や「量」の食事を栄養士が盛り付けます。
そして「さあ食べよう」…となるその直前、今度は保育士が子どもたちの様子を見ながら、食材を切ったり、つぶしてから食べさせたりする念の入れようです。
0歳から1歳児9人に対し、8人の保育士が対応。
さらに担当の園児も決めているといいます。
そうすることで、子どもにとっては「いつもの先生」が目の前にいることになり、食事・遊び・お昼寝…すべての面で安心できる環境を整えているんです。
長沢園長がそうすることでの具体的なメリットを教えてくれました。
「『きょうはこの子ちょっと食べ進みが悪いから熱を測ってみる』とか、せき込む場合には無理させないで軟らかいものにするとか、お湯を足して飲み込みやすい形にするとか、1人1人に対応しています」
万一の事態に備え、食堂にも電話を設置。
また、職員室には消防直通の電話もあります。
「食べ物の大きさや軟らかさについては、調理と検食する私と先生たちのたくさんの目で、段階を追って見極めていくのも大事なのかなと思っています」
細心の注意を払っていても…「ヒヤッ」
こども家庭庁によると、「不慮の窒息」による死亡事故は2022年までの5年間で「407件」。
約8割が、0歳と1歳の乳幼児です。
札幌市豊平区の保育園「ナ-サリーゆめの木」の0歳クラスでは、園児1人から2人に保育士1人が対応。
1歳以上のクラスでは、園児3人から4人に保育士1人が昼食の対応をしています。
中には噛むことがうまくできず、そのまま飲み込んでしまう子もいるため、保育士が口を見せて「ガシガシだよ」と動きを見せることで、噛むことを意識できるよう促していきます。
こまめに水をあげることも忘れません。
「もやし1つでも長いものがあったりもする。そういうのを見たらこちらで短くしたり…。食事の時間が一番神経を使うかもしれないですね、月齢が小さければ小さいほど…」
調理も、食べさせるときも…
細心の注意をしていますが、これまでに「ヒヤッ」とした経験もあることを安達美也子園長が明かしてくれました。
「開園してから一度ありました。リンゴをのどに詰まらせた子がいたんです。その場で背中をポンと叩いたら吐き出せたんですが、そのときが一番ヒヤリとしました」
力加減は難しいけど…
もし、子どもがのどに食べ物を詰まらせてしまったら、どうすれば良いのでしょうか?
日本赤十字社北海道支局の永澤貴博係長に聞きました。
背部叩打(こうだ)法
●腕とひざの上に乗せて体を固定し頭を下に
●あご先を指で固定し、気道を確保
●手のひらで背中の中心をたたく
顎先を指で固定して気道を確保をして、前腕と自分の膝の上に乗せて固定をして頭を少し下に向けます。
叩く位置は背中の真ん中です。掌の厚い部分で叩いてあげます。
体験した堀内大輝アナウンサーは「実際にはもっと子どもは重いと思うので、首の気道を確保するのが難しい感じがする」と話します。
ポイントはとにかく、気道確保をしっかりすること。
気道を確保していないと物がさらに詰まることも考えられるので、注意が必要です。
胸部突き上げ法
それでもダメなら、別の方法もあります。
●ひざと腕で体を固定
●中指と薬指で胸骨の下半分を強く押す
●1分間に100~120回程度の速さ
胸を強く押すこの方法。
このときもひざと自分の腕で体を固定して、中指と薬指で胸骨の下半分を、体の厚さの3分の1程度の深さまでしっかりと押してあげます。
押す速さは一分間に100回から120回程度と言われています。
「体の厚さの3分の1程度まで強く押す」…体の小さい子どもに対して行うのは強さや深さにためらいが出るかもしれません。
確かに力加減は簡単ではありませんが、「骨が折れても助かる命を優先させるべきだ」と日本赤十字社北海道支局の永澤貴博係長が話していました。
大人にも有効な方法
また、『背部叩打(こうだ)法』は、餅が詰まったときなどに大人にも有効だということです。
■『背部叩打(こうだ)法』
●患者の頭をできるだけ低く下げる。
●片手で胸部を支える。
●片足を患者の前に置いて支えるのが重要。
●乳幼児と同じように、肩甲骨の間を力強くトントン叩く
●5回叩いても出なければ『腹部突き上げ法』へ
■『腹部突き上げ法』
●患者の後ろから手を回し、へそより少し上にこぶしの親指側を当てる。
●もう片方のこぶしで瞬間的に斜め上の自分側に引き上げ圧迫する。
●できるだけ相手の背中と自分のお腹を密着させるのがポイント。
●内臓を傷める恐れがあるので乳児や妊婦にはNG。2歳以上向け。
※上記の2つの方法を5回交互に繰り返す
今回の事故を受けて、「救急法を知りたい」という問い合わせが数多く寄せられたため、日本赤十字社北海道支部では、12月20日に講習会を実施するということです。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年11月19日)の情報に基づきます。