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Furui Riho『Hello』インタビュー――多幸感あふれる新曲は「再会」への想いを込めた前向きなメッセー

encore

──7月7日に先行配信された「Hello」は久しぶりの京都アニメーション新作TVアニメ『CITY THE ANIMATION』のオープニング主題歌。Furuiさんがアニメ作品のために楽曲を書き下ろすのは今回が初なんですよね。

「そうなんです。だから、最初はどういうふうにやっていいのかもわからなくて戸惑ったんですけど、京アニさんと打ち合わせをさせていただいたときに、私の「LOA」という楽曲が大好きで、「LOA」を主題歌にしたいくらいですと言っていただいて…。でも、それはちょっと難しいですってことで(笑)、“頑張っていい曲書きます!”と言って制作に取り掛かりました」

──どんなイメージを持って制作していったんですか?

「打ち合わせの段階でだいたいの曲のゴール地点が見えていたんです。原作を読ませていただいた印象が“楽しい”とか“ワクワク”が詰まっているというか…ちょっとシュールで、ずっとクスクスと笑っていられるような作品でした。なので、“このアニメで自分はどういうメッセージを書けるだろう?”って、最初は歌詞もサウンドも少し悩んだ時期もありました」

──突破口になった出来事は何かあるんですか?

「この曲の制作当時はまだ東京と北海道を行ったり来たりしてる時期で、あるとき東京でホテルに泊まっていたときに急に降りてきてました。こんなことってあまりないんですけど、トラックと、歌詞の一部分とメロディが、ドカン!って降りてきたんです。最初のピアノの音とか、チャッチャッチャッてリズムとか、サビ前の♪タララーラ、タララーラとか、サビのメロディとか、その瞬間にぜんぶ携帯でメモを取って。それを北海道に帰ってから私のゴスペルの師匠であるSayoさん(Sayo Oyama)のところに持って行って、一緒にコードをつけてもらいました。それで、“あ、もうできた!”って感じでした。サウンドについては、もともと原作の印象から、ビートはすごく細かくてチャカチャカしているイメージがあったんですけど、それが一つの音となって降ってきたのは不思議な体験で。まるでプレゼントをもらったような気持ちになりました」

──歌詞には“再会”への想いが込められているとのことですが、そのキーワードが出てきた理由とは?

「今回の『CITY THE ANIMATION』は京アニの久しぶりの作品ってことで、本当にいろんな方が待ち望んでいた作品だと思うんです。なので、京アニとファンのみなさんとの再会だったり、もしかしたら今回の京アニのアニメがきっかけで久しぶりに友達同士がまた出会うかもしれないっていう意味での再会だったり…」

──アニメを通していろいろな人が再会していくイメージなんですね。私の個人的な感覚なんですけど、この楽曲を聴きながら、昔の自分と再会しているようなイメージも湧きました。

「そういうのもあるかもしれないです。実は、原作者のあらゐ(けいいち)さんは、この作品を“子供に戻る”ことをイメージして作られたそうなんです。だから、“子供”をテーマにも入れたくて。子供時代を思い出して、“あの頃は何も考えずに楽しく遊んでたなぁ”みたいな(笑)。2番の歌詞に<意外と毎日は楽しいかもしれない>ってあるんですけど、その部分は、毎日本当に大変だけど、純粋な心を持っていた子供の頃って、意外と毎日楽しめることってたくさんあったんじゃないかな?って。そういう昔を思い出すようなメッセージを表現したくて入れたフレーズだったりします。サビで一番言いたかったのは、“1人じゃない”ってことです。共に手を取り合って、みんなで再会を喜びつつ、子供のように笑い合って日々を乗り越えていきたい…そんな想いを言葉にしました」

──歌詞はスムーズに書けましたか?

「いえ…歌詞が一番大変でした。細かいところが全然決まらなくて、事務所のホワイトボードに歌詞を書き出して、さらにいろんな単語を全部書いて、“あれじゃない”、“これじゃない”って○×をつけていったりしていました。実は京アニさんとの打ち合わせのとき、“老若男女にわかりやすいものにしたいです”とも言われていて。私もそれがいいと思ったものの、ただ簡単な言葉を並べても軽い歌になってしまいますし、言葉の選び方一つで捉え方も変わってくるので、いかに的確な言葉を選んで、なおかつそれをメロディにのせるか…っていうのはすごく考えました」

──Furuiさんの真骨頂でもある、流れるようなフロウがとても心地よかったです。そんな歌声に耳を傾けていたら、途中で雨の音が入るんですよね。

「気付いていただけましたか!? ありがとうございます! すごくうれしいです。雨の音を入れることは、私が言い出したんですけど…。Bメロで毎日の不安だったり、悲しさだったり、辛さだったりを歌っていて、続くサビでそこから飛び出してみんなで笑い合うっていうイメージが見えて。それで私が、雨の音を入れたらどうかなって、いつも一緒に曲を作ってくれてるknoakに言って入れてもらったら、すごく良くて。それから、この曲が、梅雨が明けて夏が来るようなストーリーでもあるので、“雨の音を入れたらいいかな?”って思ったんです。そういう遊び心という意味では、2番のAメロにはリコーダーと鉄琴が…」

──入ってました!

「あれは私とknoakで実際に弾いています」

──そうだったんですね。こう言っては何ですが、あまり上手とは言えないような感じで(笑)。

「そうです、そうです(笑)。あれ、わざとなんです」

──あのおぼつかなさが、逆に温もりを感じさせますよね。

「そうなんですよ。子供っぽさをどう出せるかっていうので、knoakと“やってみない?”って言って。すごく楽しかったです」

──いろいろな制作エピソードをお伺いしましたが、この「Hello」はFuruiさんにとってどんな1曲になったと思いますか?

「私、今まで作った曲の中で、この曲が1番好きです。もう、この曲を作るために今まで頑張ってきたと思いますし、このタイミングっていうのもすごく意味があると思います。なんだか、自分らしさがとても出た曲だと思うんですよ」

──特に気に入ってるところを聞いてもいいですか?

「全部…最初から最後まで本当に出し切った感じがします。でも、サビの<雨は上がって 一緒に歌って>の部分は、ずっと同じ音なんですけど、それが明るくもあり、ちょっと切なくもありというか…。ここが、メロティと言葉が一緒に降ってきた部分です。だから、意図的じゃないんです。でも、ここが道標となってバーッと曲ができていったところがあるので、そういう意味で特別というか、心に残っています」

──そして、「Hello」のカップリングとして収録されているのが「ちゃんと」。勝手ながら、この曲はFuruiさんが東京に家を借りて住み始めてから生まれたのかな?って。

「そういう感じ、ありますよね(笑)」

──楽曲が誕生するきっかけとなった出来事って何かあるんですか?

「東京に住むようになって、私の周りの人たちって本当にみんな一生懸命で、“毎日身を削りながら働いているんだな“って実感したときがあって。かつ、実は私自身も昨年、毎日120%くらいで頑張っていた時期があって、あるときオーバーヒートを起こしてぶっ壊れちゃいました(苦笑)。そんなことがあって、”音楽を頑張りつつも、ちゃんと自分らしく、幸せに生きるにはどうすればいいのか?”と考えるようになりました。そこで思ったのが、私は、自分が何かができなかったり、“頑張れていない”と思ったりするのがすごくストレスで、“ちゃんとやらなきゃいけない”と思う気持ちが強かったんですけど、それが原因で自分を苦しめてしまっていたなって。だから、オーバーヒートしてぶっ壊れてしまったときに、“ちゃんと”って言葉を捨てようと思いました。毎日を120%じゃなくて80%くらい、残りの20%はできなくてもいい、サボってもいいって思うようにしたら、すごく生きるのがラクになったんです。そういう経験があったので、周りで身体も心もボロボロになっている人を見たとき、“ちゃんと”って言葉を1回捨てて、“たまにはサボって生きる自分を許してあげよう”っていうメッセージを込めて書いた曲です」

──今のお話だったり、歌詞だったりを読むだけだと、もしかすると“ちゃんとやらなくていいんだよ”っていうリラックスソングのように思う人もいるかもですが…。

「確かにそうですよね」

──でも、楽曲として聴かせていただいた印象だと、背中を押してもらえるというか…応援歌のように感じました。

「わぁ、うれしいです。英語の“chant(チャント)”って、応援歌という意味もあるんです」

──そうですよね!

「“サボりソング”にはしたくなかったんです。“なんでもかんでも逃げろ”っていうんじゃなくて、“頑張ってみた上で逃げるのはアリだよ”っていうことを提示したくて。何も頑張らないまま逃げる選択もありですが、そこで得るものはないと思います。ただ“サボってもいい”って思われるような曲にはならないようにしようっていうのは、書きながら考えていました」

──応援歌のように感じた理由の一つには、コーラスとかリズムとか、後半にかけてのサウンドのクライマックス感があったんですけど、そういったサウンドのイメージにも応援歌というキーワードがあったんですか?

「サウンド作りはA.G.Oくんと一緒にやったんですけど、最初は全然違ったんです。完成したバージョンよりも大人しいというか…ちょっとchillな感じでした。だから、全然応援歌っぽくなかったんですよ。でも、気付いたら賑やかになっていて(笑)。コーラスもA.G.Oくんが提案して入れてくれて、どんどん、どんどん…むしろチャント感が後からついてきた感じでした(笑)」

──120%で頑張っていたのを少し余力を残して過ごすように心掛けているとのことですが、他にも自分の中にある“ちゃんと(しなきゃ)”をもう少し緩めたいことや、逆にもうちょっと“ちゃんと”したいところがあったら教えてください。

「なんだろうな…。やっぱり、音楽に対してはすごく自分に厳しかったりするんです。さらに昨年からこっち(東京)に住んで、以前よりも責任というものを感じているので、日々自分に“お前、それでいいのか?”って感じで生きていて。それがダメだと思ったから、最近はちゃんと自分を褒めてあげるようにしています。例えば、メロディを1つ作れたら、“よくやった!”とか。以前なら、“これしか書けてないのか?”って思っていたんですけど、今は、“これが書けたから、よし!”みたいな。“今日はもうYouTube見てもいい”とか(笑)、そういうご褒美を自分に与えてあげるようにしています。以前のような思考から抜け出すのはすごく大変だったんですけど、少しずつ自分を80%に保てるようになってきたかな?って。たまにサボりすぎちゃうこともあるんですけど(笑)。でも、どれだけハードルが低くても、できたことを褒める、自分を許すみたいなことは、以前よりできるようになったかな?って思います。で、逆に、“もっとちゃんとしたいところ”ですよね…えっと…それは…時間を守ることです(苦笑)。なんだか、いつも気付いたらタクシーに乗っていて…(笑)」

──ギリギリになっちゃう?

「そうなんです。“ちゃんとしてください”って、いつも言われるんですけど(苦笑)。なるべく早めに、電車に乗って行動するようにしたいです」

──さて、『Hello』がCDリリースとなる7月30日にはいよいよ夏も本番となっています。今夏は『SUMMER SONIC 2025』への出演も決まっていますが、ワンマンライブとの違い、Furuiさん流のフェスの楽しみ方などありますか?

「私、フェスが大好きなんです! 音楽好きの方が集まっているので、みなさん盛り上がり方を知ってらっしゃるし、一緒になって楽しんでくれて。その姿勢が毎回すごくうれしいです。ワンマンだったらホームですけど、フェスとかって実質アウェイじゃないですか。だから、“どんな感じなんだろう…”って不安になったりしますけど、結局毎回そうやってみなさんが温かく迎えてくれて。それに、昼間の時間帯だとワンマンの会場と違ってみんなの顔がハッキリ見えるんです。“みんな、こんな顔して観てくれてるんだ!”みたいな、そういう感動があって、毎回、“みんな大好きー!”ってなって出番を終えます(笑)。ワンマンももちろんですけど、フェスのように私のことをよく知らない人たちも観てくれるような場所でのライブでは、“今、目の前にいる人たちをどう楽しませられるか?“とか、”私の音楽がこの人たちにとって少しでもプラスになるといいな“って気持ちがより湧き上がりますし、それがあるからこそ、もっといいものを作ろうっていうモチベーションになっています」

──9月からは自身最大規模のツアー『Furui Riho Live Tour 2025 –Dear my friends-』がスタートします。タイトルの“Dear my friends”は、もちろん「Hello」の歌詞からですよね?

「はい。実は、この<Dear my friends>も、この1行だけメロディと一緒に降りてきたんです。歌いだしの一言目なので、すごく印象に残っているんです。ライブについて最近よく考えるのは、“みんな、どんな想いでこのライブを観に来てくれているんだろう?”って。そこで私が思うのは、日々いろんなことで大変な中、“(ライブに来て)楽しい思いをしたい”、“Furui Rihoの音楽で何かを得たい”と思ってくれた人たちがライブ会場に集まったときに、みんなを個々にしたくないというか…。それこそ「Hello」の歌詞じゃないですけど、一緒に歌って、手を繋いで、笑い合ってみたいな、そういう気持ちがライブに関してもものすごくあるんです。なので、その想いを凝縮したツアーにしたいです。タイトルの“Dear my friends”も、目の前にいる大切な人たちと、ともに笑い合って、泣き合って、抱きしめ合っていく…そんな気持ちにぴったりだと思って付けました」

──現時点でやりたいこと、こういうライブにしたいと思っていることは?

「自分のツアーでは毎回“挑戦のコーナー”をやっていて、前回の『Furui Riho Zepp Tour 2025 "Vloooooom"』ではドラムの演奏にチャレンジしたんですけど、次もまた何か新たに挑戦する予定です。あとはやっぱり、さっきも話しましたけど“Dear my friends”の気持ち…Furui Rihoのライブに来てくださるお客さんは、みんなすごくいい人ばかりなんです。例えば、背が小さい人がいたら前に行かせてあげるとか、小さい子供がいたら、“こっちが見えるよ”って教えてあげたりとか」

──なんて優しい世界なんでしょう…。

「そうなんです。本当にとても優しい世界で。そういうのが、手を取り合ったり、みんなで笑い合ったりする姿と直結しているんです。あの温かい空間を会場に来てくれたみんなが作ってくれているから、それをさらにいろんな場所で拡大させて、愛の連鎖みたいなものを今回のツアーを通して広げていけたらって、本当に、心の底から思っています」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/217…NINA
Live photo by mofu

RELEASE INFROMATION

2025年7月30日(水)リリース
PCCA-06401/4,400円(税込)

CD予約リンク >>>
シングル『Hello』配信プレアド/プレセーブリンク >>>Furui Riho『Hello』

2025年7月30日(水)リリース
/PCCA-06402/1,650円(税込)

CD予約リンク >>>
シングル『Hello』配信プレアド/プレセーブリンク >>>Furui Riho『Hello』

LIVE INFORMATION

9月7日(日) 神奈川 横浜Bay Hall
9月13日(土) 北海道 函館club COCOA
9月15日(月・祝) 北海道 小樽GOLDSTONE Tickets Sold Out – Thank You!
9月20日(土) 宮城 仙台MACANA
10月4日(土) 福岡 DRUM Be-1
10月11日(土) 香川 高松DIME
10月18日(土) 名古屋 NAGOYA CLUB QUATTRO
11月2日(日) 広島 SECOND CRUTCH
11月3日(月・祝) 岡山 IMAGE
11月6日(木) 北海道 PENNY LANE24
11月15日(土) 大阪 BIGCAT
11月24日(月・休) 東京 EX THEATER ROPPONGI

Furui Riho Live Tour 2025 -Dear my friends-

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