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車両は「近鉄」なのにネーミングは「京阪」!? 9年ぶりの新車も登場 観光鉄道として生き抜く2025年の大鐵(静岡県島田市)【コラム】

鉄道チャンネル

取材当日、金谷~新金谷間をシャトル運行していた元近鉄の16000系電車。再塗装で大阪からたった今ワープしてきたように見えます=金谷駅=(筆者撮影)

2024年6月末の鳥塚亮社長の就任会見以来、約8カ月ぶりで川根路を訪問しました。目的は前コラムで披露した鉄道写真家・櫻井寛さんの講演取材。コラム続編では、大井川鐵道(大鐵)の近況をご報告します。

【参考】19世紀半ばの開業以降、路線廃止ほぼゼロ! 世界一の鉄道王国・スイスの魅力を大鐵の講演会でレジェンドに聞く【コラム】
https://tetsudo-ch.com/12997141.html

2022年9月の台風で大規模被災した本線は2年以上経過した現在も、一部区間で不通が続きます。しかし、鳥塚社長に悲壮感はありません。「車両は近鉄なのに京阪電車」、「トレインダイニング・オハシ」とユーモアやアイディア満点の企画を打ち出し、鉄道ファンや観光客を呼び込みます。

約20キロ区間が現在も不通

あらためて大鐵の現状を紹介します。2022年12月に本線の金谷~家山間、2023年10月に家山~川根温泉笹間渡間が部分開通したものの、川根温泉笹間渡~千頭間19.5キロは現在も不通です。大鐵は自力復旧は難しいと判断、公的支援を受けての運転再開を目指します。

大鐵は節目の年が続きます。2025年は会社創立100周年。続く2026年は、1976年のSL本線営業運転開始から50周年を迎えます。

会社の歩みを略史でたどれば1925年に会社設立、戦後の1949年までに全線電化されました。最近は車窓に広がる大井川の景観を売りに、経営の軸足を観光鉄道にシフト。2014年から「きかんしゃトーマス号」の運転が始まりました。

夏のSLは黒、冬は白

鳥塚社長はご自身が熱心な鉄道ファン。冬のSLの魅力を、こう語りました。

「夏のSLの煙は黒。力強さを感じさせます。しかし冬は白。煙ではなく白い湯気から暖かさが伝わります」

確かに「SLの大鐡」ですが、現在本線走行できるのは2両。SLの検修には1両約4カ月の期間が必要です。人気のトーマスは冬季はソドー島に帰り、ゴールデンウイーク(GW)の再来日に備えます。冬季はC10 8が孤軍奮闘。できれば今後、予備機の登場も期待したいところです。

冬季間、孤軍奮闘のC10 8。デビューは1930年で既に車齢90年を超えます。受験シーズンらしく「がんばれ受験生」のヘッドマークを掲出=新金谷駅=(筆者撮影)

鳥塚社長が大鐵に託すのは、こんな思いです。「SLや夜行列車といっても、今はシニアの記憶に残るだけ。その点、大鐵なら走るSLや夜行列車に乗車できます。鉄道文化を次の時代に活躍する子どもたちに伝えたい」

その鳥塚社長が最も力を入れるのは地域連携。沿線は人口減少で、地域住民の利用だけでは鉄道を維持できません。地域が大鐵に求める、そして大鐵も自らの役割と自認するのが、SL、観光列車をPRして、全国、そして世界から鉄道ファンや観光客に沿線を訪れてもらうことです。

鳥塚社長は続けます。「〝観光・大鐵〟の象徴が『きかんしゃトーマス』。トーマスはコアな鉄道ファンの方からご批判もいただいたようですが、列車目当てに全国の子どもたちが沿線を訪れます」

南海の新車乗車は次の機会に

そんな大鐵に2024年末、新車が仲間入りしました。元南海の6000系電車です(2両1編成)。

大鐵一押しのフォトスポット・大井川を渡る6000系電車(写真:大井川鐵道)

同じ形式の原車は1962年デビュー、日本最初期のオールステンレスカーです。東急車輛製造(現在はJR東日本グループの総合車両製作所)で製作。東急7000系、京王3000系はほぼ同期。1969年まで製造され、南海高野線の主力車両として、半世紀以上にわたり1両の廃車もなく活躍してきました。

初期はステンレス無塗装でしたが、1992年ごろから青と黄色の帯が入り、大鐵でも南海色のまま運用されます。

鉄道情報誌によると、大鐵には2020年7月に譲渡されていたようですが、運用に入らない状態が4年以上も継続。ようやく2024年12月30日に営業デビューしました。

【参考】もと南海6000系、年内に営業運転開始!大井川鐵道発表
https://tetsudo-ch.com/12993816.html

今回の川根路紀行では写真撮影を予定していたのですが、講演会当日は運用から外れるとのこと。乗車は次の機会に回し、大鐵に提供していただいたオフィシャル写真をご覧いただきたいと思います。

取材当日、代わって運用に入ったのは16000系電車です。JR天王寺駅に近接する、大阪阿部野橋駅を起点とする近鉄南大阪線の特急車両で、2002年に譲受、2004年から営業運転開始。川根路のエース車両としての活躍は、20年に及びます。

最近は普通列車のほか、食事を提供する観光列車として運行。金谷方1両にはテーブルが取り付けられ、内外装ともきれいにお色直しされていました。

16000系1両には観光列車としての運用に備え飲食用テーブルが設置されます(筆者撮影)

京阪とお箸!?

観光列車に力を入れる大鐵が編み出したのが、本サイトでも紹介された「近鉄なのに京阪電車」。京阪の正体は発音が同じ「鶏飯」。ほぐした鶏肉や干ししいたけ、錦糸卵などの具材を熱々のご飯に乗せ、鶏がらスープを注いで食べる、鹿児島県奄美地方の郷土料理です。大鐵はレシピを取り寄せ、現地の味を再現しました。

もう一つのお勧めツアーが、2025年3月16日催行の「トレインダイニング・オハシと絶景の奥大井湖上駅」。お箸にシャレるオハシは、ご存じ客車記号の「オハシ」。半室が客車、半室が食堂車のいわゆる合造車です。

グループの旅行会社・大鉄アドバンスが企画するツアーは、静岡発着日帰りで、新金谷駅でかつての食堂車を再現した列車でコース料理を賞味。その後、南アルプスアプトライン(井川線)奥大井湖上駅に移動。人造湖の長嶋ダムに突き出した半島に設けられた奥大井湖上駅から、極上の眺望を心行くまで味わいます。

松阪駅名物駅弁の新竹社長がゲスト出演

ラストは前コラムを引き継いで、櫻井さんが紹介した特別ゲスト。

三重県松阪市の紀勢線松阪駅の人気駅弁「元祖特撰牛肉弁当」を製造販売する、新竹商店の新竹浩子社長が登場しました。駅弁のあら竹、創業1895年という名門中の名門です。

自慢の駅弁を手に櫻井さんに紹介される新竹社長(中央)。左側はパートナーのお嬢さん(筆者撮影)

櫻井さんが監修した人気コミック「駅弁ひとり旅」(続編は「新・駅弁ひとり旅」など)で、松阪の駅弁を紹介した縁で交流が芽生えました。新竹社長は講演会参加者に、三重来訪を呼び掛けました。

スイスと大鐵、趣向を変えたコラム2本は以上です。講演会を主催した日本ナショナルトラスト(JNT)によると、本サイトの情報で申し込んでくださった方がいらっしゃるそうで、JNTとともに筆者からもお礼申し上げたいと思います。

記事:上里夏生

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