「本当に好きなことがわからない」悩める子どもと親御さんへ。仕事に誇りを持つボクのこたえ。
SNSやTVで見た何かに夢中になってのめり込む子どもの姿に、「うちの子は何をやっても中途半端だな」と思うこともあるかもしれません。 またはお子さんが自分が好きなことが見つからず、将来に悩んでいるという親御さんもいるかもしれません。今日は、そんな親御さんに向けて、ある高校生からの悩み相談への応えをお伝えしたいと思います。
「本当に好きなこと」なんて大人にだってわからない
先日、ある高校生にこんなことを聞かれました。
「僕には、『本当に好きなこと』が何なのかよくわかりません。とりあえず大学には行こうと思いますが、本当に好きなことがある友達がうらやましいです。三木さんはどうやって本当に好きなことを見つけたのですか?」と。
これは中学生、高校生、大学生、学生ならではの悩み? いやいや、社会人になっても40歳になっても「本当に好きなこと」がわからずに迷う人も多いものです。
僕はいま、家事シェア研究家としてNPOの運営を行い、全国で講演をしてまわり、本を書いたりメディアで執筆をさせてもらったりする仕事をしています。僕は自分の仕事に「誇り」を持っていますが、「本当に好きなこと」を仕事にしたのかと問われれば、首を捻ってしまいます。
なぜなら、NPOを運営したいとも、人前で喋りたいとも、本を書きたいとも思っていなかったし、それらが好きなわけじゃなかったからです。「でも家事は好きだったんでしょ?」と問われても「とくにキライじゃない」という程度のことでした。
夢や目標を持って、それに向かって一直線にがんばることはすばらしいですが、僕の知る限り、本当に夢を持ってがんばっている人は100人に1人もいないよなって感じます。
それは、99人がダメな人ということじゃなく、夢を持ってがんばっている1人がむしろ(良い意味で)異常な人なんです。漫画の主人公も、有名人もみんな夢を持って突き進んでいて、それしかロールモデルがないのでつい夢を持っていることが当たり前に感じてしまうかもしれません。ですが、そうじゃない。
小さい頃から、自分にとって「これしかない!」と思えるものと出会えたとしたら、それは文字通り奇跡です。
大人になる過程で、自分が一生をかけてのめり込める何かと出会えたなら、それは本当に幸運なことです。
多くの人は「本当に好きなことってなんだろう?」と考えれば考えるほど、確信が薄れ、迷ってしまいます。
頭で考えて自分を説得して納得させた好きなこと。それって、それこそ本当に好きなことなんでしょうか? きっと違うはずです。だから僕は子どもたちに「本当に好きなことってなんだろう?」なんてことは、考えて欲しくないんです。
では、奇跡も幸運も起こらないまま大人になる僕達にできることはなんでしょうか。
それは「とりあえず好きなこと」を楽しみ続けることです。
「とりあえず好きなこと」でいい。
「本当に好きなこと」がわからなくても「とりあえず好きなこと」だったら思い浮かべることができます。
絵を描くのが好き。本を読むのが好き。プログラミングアプリで遊ぶのが好き。音楽や外遊びや友達としゃべってる時間が好きかもしれません。こうしたことが将来仕事になるかどうかとか、本当に好きかどうかなんてどうでもよくて。
目の前にある「とりあえず好き」は宝の山なんです。
好きなことは変わっていい。むしろ多くの場合、数日、数ヶ月、数年後にはまったく違った何かを好きになっているでしょう。
そのとき目の前にある好きなことを目一杯楽しめる力こそ、一生役に立つ力だと思うのです。
僕は家事シェア研究家という仕事が好きではじめたわけではありませんでした。
ですが、振り返ってみれば14年以上も一生懸命に続けています。飽きることもなく、楽しみながら。それはきっと、この仕事が僕にとって「本当に好きなこと」であったという何よりの証拠です。
いつか自分の人生を振り返ったときに「ああ、これは本当に好きだったんだな」と思えたら、それで充分素敵なことではないでしょうか。
親の失敗談は、子どもを勇気づける
「本当に好きなことなんて自分だってよくわからない」なんて、なかなか子どもには言いにくいかもしれません。ですが、同じように悩んでいて、紆余曲折あって、もしも今もまだ迷っているなら、その話をぜひ子どもにしてあげてください。
親の成功談の何倍も子どもに勇気を与えてくれるはずです。
三木智有/家事シェア研究家