警察×学生「チーム戸塚」 ”孫世代”から防犯発信 地域連携でつくる安心
電話口で言葉巧みに相手をだます特殊詐欺。多数のメディアでも取り上げられ、対策が図られているものの被害は後を絶たない――。
そんな中、戸塚警察署(永吉和弘署長)は、一風変わった方法で地域の安全を守る方針を取った。それが「チーム戸塚」だ。区内の小・中・高校生に加え、詐欺に関する研究を進める産業能率大学、神奈川大学の一部学生と協力して、啓発活動や情報発信することを目的に結成された。
今年5月の結成以来、街頭や駅周辺での啓発チラシ配布、イベントへのブース出展などさまざまな活動を展開してきた。
10月には区内で初めて、両学生が講師として登壇する防犯講話も実施。これまで以上に、安全な地域づくりに積極的に携わるようになった。
チーム戸塚を指揮する一人・生活安全課の内藤瞬課長は「チラシ配り一つとっても、道行く人の反応がまったく違う。子どもたちからの呼びかけに足を止め、話を聞いてくれる」と話す。詐欺被害に遭いやすい高齢者の孫世代にあたる年代から、訴えかけることに効果を感じているという。
非行防止にも一役
昨今話題の匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」に代表されるようにSNSやインターネットなどを通じて、闇バイトや犯罪行為に若い世代が加担してしまう状況も社会問題となっている。
実は、チーム戸塚の目的はもう一つ「非行防止」にある。子どもたちを犯罪や危険な組織から守るため、活動を通して自身の危機意識・防犯意識も高めてもらうのが狙いだ。特に「簡単」「高収入」など魅力的な単語で、子どもたちを誘惑するケースに関して「よくわからず応募するのではなく、自分で危険なものかどうか見極められる力が必要」だという。
内藤課長は啓発活動中、いきいきとした子どもたちの姿が見られることがチーム戸塚の魅力の一つだと語る。活動終了後にはたびたび、子どもたちから「身近に詐欺があることを初めて知った」「詐欺の電話を受けた人の話を聞きびっくりした」などの声が上がることもあるという。
また「アンケートを取ってみたい」という学生からの提案をきっかけに、住民のリアルな声を聞く機会もつくられた。内藤課長は「自発的に意見が出るのは良いこと。地域の安全に関心を向けてくれている」と話す。
「基本の対策見直しを」
同署では、詐欺に関する通報があったエリアには、すぐにパトロールの車を走らせてアナウンスするよう徹底。エリアや事案にあわせて内容を変えることで、常に地域に警察の目が行き届いていることをアピールし、被疑者への抑止と住民の気づきにつなげている。
では、さまざまな犯罪から自分を、そして家族を守るためには何が必要か。永吉署長は「基本的な防犯対策を見直しましょう」と呼びかける。
不審な人物を家に招き入れないのはもちろん、具体的な対策として窓などに取りつける防犯フィルムや補助錠を推奨。暮らしの状況やお金のことなどプライバシーに関わる情報は、安易に伝えないことも重要だという。
永吉署長は「区内の安心安全を守るため、住民目線に立った啓発活動、情報発信に取り組んでまいります」と語った。