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『今日も吹部は!』は吹奏楽部のちょっと変な人間模様が凝縮した漫画! “変”だからこそ面白いキャラクターたちと作品の魅力を解説

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

全く練習描写がない。そんな吹奏楽部の漫画をご存じでしょうか。

楽器を吹く素振りすら見せず、あるのはただ部員同士が揉めている描写のみ。そんな青春コメディを。

それこそが宮脇ビリー先生がサンデーうぇぶり、およびマンガワンで連載中の『今日も吹部は!』。一度青春を失った少年が、また新たな青春を吹奏楽部で培っていく。そんな高校での日々が描かれた一作です。

間接キス狙いのヒロイン、他人のリードを欲する少女、とにかくサボることに命をかけた副部長……部員が“変”だからこそ面白い! 『今日も吹部は!』が描く、吹奏楽部の日々。ただし前述の通り、その日々には“揉めごと”が付き纏うわけですが――。
 

『今日も吹部は!』とは?

「吹奏楽、やらん?」

とある事情から、自身の人生をすべて捧げてきた“野球”を捨てなければならなくなった主人公・汐見草太朗。野球のない人生に価値を感じず、屋上から飛び降りようとしていた彼を引き留めたのは、幼馴染である小松原ルーシーの一言でした。かくして彼は吹奏楽部に入り、部活内の頼れる仲間とともに全国制覇を目指して汗を流す。そんな新たな青春の日々を送るのです!

……と、ストレートに進めばよかったのですが。残念ながらこの吹奏楽部には大きな問題がありました。それは部内の派閥闘争。部長率いる“やる気勢”と、副部長率いる“やる気ない勢”による、地獄のような争いです。吹奏楽は団体競技であり、部が二分するような状況では大会用の練習などできるはずもありません。

汐見はそんな吹奏楽部を立て直すべく、ある計画を考えます。それはどちらにも属さないもうひとつの派閥“中立勢”をやる気勢に引き入れ、部全体の流れをやる気勢のものにし、全国制覇を目指すこと。しかし汐見は汐見で、ある重大な欠陥を抱えており……。

 

一途な野球バカ・汐見草太朗と、ストーキング系ヒロイン・小松原ルーシー

先ほど汐見は野球に自身の人生をすべて捧げてきたと書きましたが、これは誇張でもなんでもなく。なんなら小学生から高校1年までずっとクラスが一緒だった人間の顔すら覚えていないぐらいには、彼の人生には野球しかありませんでした。

ゆえに、残念ながら彼のコミュニケーションの引き出しは野球のみ。熱くて爽やかで超いいヤツではあるのですが、基本的には直球一本勝負しかできない男。それこそが汐見なんです。

でも大丈夫! そんな汐見には頼れる仲間がたくさんいます。そう、例えば彼を部活に引き込んだ幼馴染であるルーシーとか! ……いえ、話はそう簡単には進みません。なぜなら彼女もマトモではなかったからです。

なぜルーシーは、汐見が飛び降りようとした現場に都合よく居合わせていたのか。ただの偶然、漫画の都合と言えばそれまでかもしれませんが、これにはしっかりと理由がありました。

ルーシーは汐見をゴリゴリにストーキングしていたのです。だから、あの場に現れたのは偶然ではなく必然だったわけですね。

彼女は汐見に対して、非常に重たい愛情を抱えているのです。そもそも汐見を誘った理由も、(彼の行動を止めなければいけないと思ったのも事実ですが)汐見の使った楽器を片付けるという名目で間接キスをしまくるためでした。念のため言っておきますが、彼女がメインヒロインです。この漫画は正気なのでしょうか……?

汐見が人生のすべてを野球に捧げた野球人間ならば、ルーシーは人生のすべてを汐見に捧げた汐見モンスター。事情を知る人間から「お前は汐見とどうなりたいんだ?」と聞かれたとき、恥じらいながらペア骨壺の画像を出す女子。それこそが小松原ルーシーというキャラクターなのです。

 

 

吹奏楽部第2のストーカー。狂犬・東金求瑠美

味方にストーカーがいるので、敵にもストーカーがいてもおかしくないですよね。攻略対象である中立勢。その中でも大きな発言力を持つ東金求瑠美は、とある幼馴染の先輩を非常に愛しておりました。

なので、彼女がやる気勢になる条件として「先輩が使っているリード(楽器の吹き口につける器具)を持ってこい」ということを要求したのも致し方ないことなのです。汐見は先輩と同性ですし、であれば盗む隙もあるだろうということで交渉するのも当然ですよね。

とはいえ彼女の目的は舐めることではなく(舐める前提で話を進めるのも変ですが)、なにやら別の用途に使う予定とのこと。その理由はぜひ本編にて。

 

 
……と、このあたりでだいたいこのマンガのやり口がわかってきたでしょうか。この作品には、これくらいの“ハードパンチャー”がゴロゴロいます。

 

 

モラトリアムを謳歌するやる気ない勢の首領。副部長・倉見陽子

例えばやる気ない勢のトップである、倉見陽子。彼女の動機はただひたすらに青春を謳歌すること。

「じゃあ部活にやる気を出せばいいじゃない」という意見もあるとは思いますが、彼女にとっての青春とは、ダラダラと取り留めのない日々を過ごすという方向性。そのためにやる気のない吹奏楽部を維持しているわけです。

「部活とも人生も、いかに怠けられるか……じゃない?」という行動理念のもと、この部活をとにかくダメにしていく、びっくりするぐらい人間ができてない存在。それこそがラスボスである副部長になります。ちなみに、何故か人心掌握には長けているようで、人を堕落させるのが異常に上手いのも恐ろしいところ。西洋の悪魔みたいな説明になってしまいましたが、実際にそういうキャラクターなのでしょうがないですよね。

 

 
これまで紹介した人たちは、まだこの吹奏楽部にはびこる変人たちの一角に過ぎません。殺人級の戦闘合気を使いこなす先輩、高校生活という人間関係のるつぼを眺めるのが趣味の教師など、ほかにも“変”なキャラクターが大量に登場します。

あと、そのせいかやたらと殴り合いの描写が多いです。「吹奏楽部なのに?」という疑問も湧いてきますが、そもそも戦闘合気を使いこなす先輩がいる時点で色々とおかしいので、今さらな問題なのかもしれません。

しかしながら、この“変”さがこの漫画の大きな魅力に繋がっているのです。

 

揉めごとを楽しむ、吹奏楽“部”マンガの魅力

とはいえ、『今日も吹部は!』は青春コメディ。笑える要素はありつつも、根底としては“一度折れてしまった野球少年が、別のフィールドで再起する物語”という青春ど真ん中のストーリーが展開されます。つまるところ、物語の骨子としては非常にシンプルなものになっているわけです。

しかしそこに、クセの強い部員たちという要素が加わっている。それこそが本作独自の魅力を生み出しています。例に挙げた“恋に狂ったリード強奪魔”を筆頭に、ヤバい部員が勢ぞろいした吹奏楽部。そんな伏魔殿を汐見がどう攻略していくのか? というのが最大の見どころになっています。

練習の大変さとか、楽器ごとの繊細な事情とか、そういう部分ではなくて“部内の揉め事”のみにフォーカスしている。だからこそ個々人の変な部分や特徴が際立ち、それだけで話が成立する。そういう人間模様のおもしろさがこの作品のキモなんです。吹奏楽の漫画というより、“吹奏楽部”を楽しむ漫画なわけですね。

 

 
作品全体を通して言えることなのですが、とにかく汐見がすげーいいヤツなのも最高です。ズレているし、常識がちょっとなかったりするけど、とにかく芯が強く「頑張る」と決めたことには折れない。物語を追っているうちに、彼のことをいつの間にか好きになっている自分がいます。そんな彼が一度は失いかけた青春を、別の形で取り戻していく。そういう姿に惹かれるんです。

そんな汐見への愛が重すぎる系ストーカーこと、ヒロインであるルーシーとの関係性も見逃せません。彼女はドがつくほどにおかしい人ではあるのですが、意外と汐見への想いは純情そのものだったりします。想い人とともに吹奏楽部で頑張ることを喜んだり、汐見のふいな一言でドキっとしたり、そんなラブコメらしい甘酸っぱさも、この作品の大きな魅力です。

時折、独占欲にまみれた恐ろしい顔も見せたりしますが……そこも含めてこの作品らしい味ではないでしょうか。

 

 

長年蓄積された、変人の人間関係を描く上手さ

というように、たくさんの変人たちによる人間関係を描くのが『今日も吹部は!』という漫画になっています。

これは筆者の私見も入っていますが、作者の宮脇ビリー先生は長年こういった“尖ったキャラクターが織りなす人間模様”を描いてきた方です。前作である『シネマこんぷれっくす!』もそうですし、それ以前に書かれていた漫画にもそういった特徴がありました。なので、そもそも作風自体が宮脇先生の十八番のようだと感じています。

それゆえに、まだ刊行されている数が2巻(2025年5月当時)ではありますが、これから先の物語も面白くなることに、筆者としては疑いがありません。題材もそうですが、それらを描く際のテンポや間の取り方、構図やキャラクターの描き方など、どれをとっても一級品。こういった濃いキャラクターたちの関係性を追うのが好きな人であれば、絶対にハマる漫画だと自信を持ってオススメできます。

現在はサンデーうぇぶりに加えて、マンガワンでも追いかけで連載が始まっていますので、気になる方はそちらから追うのもよいかと。ぜひとも汐見の青春をかけたちょっとおかしな部活動の日々を、笑いながら見守ってみてください。

[文/オクドス熊田]

 

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