現在の永井真理子に要注目!ファンハウス時代のティーンエイジ・アンセムも配信開始
ファンハウスの看板娘的存在だった永井真理子
1984年に『ファンハウス』というレコードレーベルが発足された。その後、1988年に独立系レコード会社になり、1996年3月にBMGの子会社になるまで多くのアーティストやヒット曲を世に送り出してきた。
当時の所属アーティストは小田和正、稲垣潤一、SING LIKE TALKING、斉藤和義、accessなどだが、小林明子、岡村孝子、遠藤京子、麗美、辛島美登里、Cindyなど、筆者が大ファンの女性シンガーソングライターも多く所属していた。女性アーティストに特化したレコード会社だという勝手な思い込みがあったため、同時期に今井美樹、杏里が所属していたフォーライフと共にお気に入りのレコード会社であった。
今回クローズアップするのは当時、ファンハウスの看板娘的存在だった永井真理子だが、永井真理子と言えば “ガールポップ” の先駆者としても知られている。しかし、彼女がデビューした1987年には “ガールポップ” というジャンルは存在しておらず、あくまでも女性ボーカリストとして売り出されていたと記憶している。ボーイッシュなルックスではあったが、アイドルと呼ぶには違和感もあり、何よりも確かな歌唱力で注目をされていたシンガーであった。
当時、ファンハウスの女性アーティストを集めたコンピレーションは “LADY’S VOCAL” という名称で表記されていたので、ガールポップよりももう少し大人っぽいイメージだったかもしれない。ちなみに、1989年のクリスマス時期には、小林明子、永井真理子、麗美、辛島美登里の4人で『MERRY CHRISTMAS TO YOU』というクリスマスアルバムもリリースしている。
ファンハウス時代の代表曲がぎっしり詰まっている「永井真理子 ゴールデン☆ベスト」
永井真理子は1987年7月にシングル「Oh, ムーンライト」でデビュー。1995年までにファンハウスから28枚のシングルと9枚のオリジナルアルバムをリリースしているが、今回彼女をクローズアップすることになったのは、18曲入りのベストアルバム『永井真理子 ゴールデン☆ベスト』がサブスク解禁になったからだ。残念ながら現時点で他のアルバムは未解禁だが、このベストにはファンハウス時代の代表曲がぎっしり詰まっているので、この中から何曲かピックアップしてみたと思う。
筆者が永井真理子のファンになったのは、1988年に発売された3枚目のオリジナルアルバム『Tobikkiri』だが、このアルバムに「ロンリイザウルス」という印象的なタイトルのシングル曲が収録されている。
10,000年前に失くした
哀しみ無理矢理探してる
シーンはとっくに 1990年
という印象的な歌詞は、亜伊林による作詞だ。亜伊林とは作詞家の三浦徳子の別名だが、永井真理子には亜伊林名義で40曲近い歌詞を提供している。アルバムタイトルの『Tobikkiri』は「ロンリイザウルス」の歌詞のワンフレーズからつけられているが、このアルバムはチャートの最高位4位まで上昇しており、すでにアルバムアーティストとしてブレイクを果たしていたということになる。
「YAWARA!」初代オープニングテーマに起用された「ミラクル・ガール」
とはいえ、“永井真理子” で皆さんがまず思い浮かべる曲は「ミラクル・ガール」だろう。1989年10月に発売された9枚目のシングルで、読売テレビ系アニメーション『YAWARA!』初代オープニングテーマに起用され大ヒットした曲だ。同年の5月に発売されたアルバムは『Miracle Girl』というタイトルだが、「ミラクル・ガール」は収録されておらず、次作のアルバム『Catch Ball』に収録されている。
永井真理子には「ミラクル・ガール」以外に、もう1曲代表曲がある。それは1990年10月に発売されたシングル「ZUTTO」だ。同曲は元気印がトレードマークだった彼女のイメージを覆すようなバラードで、艶っぽいボーカルスタイルで新境地を開拓したと言ってもいいだろう。この曲がキャリア最大のヒットになり、1991年には『第42回NHK紅白歌合戦』への出場を果たしている。
フジテレビ系のバラエティ番組『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』エンディングテーマに起用されたこともヒットの要因だが、この番組からは、他にも多くのヒット曲が生まれている。ミリオンセラーを記録した「愛は勝つ」(KAN)、「それが大事」(大事MANブラザーズバンド)は主題歌として起用された曲で、永井の「ハートをWASH!」も主題歌に起用され大ヒットしている。「ハートをWASH!」を収録した6枚目のアルバム『WASHING』はキャリア初の1位を獲得しており、この時期にセールスの頂点を迎えたと言ってもいいだろう。
少女から大人の女性に変化していく穏やかな心境を封じ込めた「Change」
ボーイッシュなルックスとポジティブなイメージで売り出された永井真理子だが、個人的には高い歌唱力でバラードを歌うシンガーというイメージのほうが大きい。1992年に発売されたバラードベストアルバム『yasashikunaritai』は名曲満載のベストなので、機会があれば是非チェックしてみていただきたい。
今回サブスク解禁になった、『永井真理子 ゴールデン☆ベスト』にはファンハウス時代のシングルがほぼ収録されているが、2曲アルバム曲が収録されている。1曲は辛島美登里が楽曲提供した「Keep On “Keeping On”」で、これは永井のアルバム曲の中でもっとも人気の高い1曲だ。昨年発売された辛島美登里のデビュー35周年記念アルバム『CORAL』の中で、この「Keep On “Keeping On”」の辛島、永井のデュエットバージョンを聴くことができる。当時、レーベルや事務所まで一緒だったにもかかわらずお互い多忙だったため、なかなか腹を割って話す機会がなかったそう。ここ近年イベント等で急激に距離が近くなり、ようやくこの曲をデュエットできる運びとなったのだとか。
そしてもう1曲はアルバム『Tobikkiri』のラストナンバー「Change」だ。筆者はこの曲で永井真理子の大ファンになったので、この曲がサブスクで聴けるようになったのはとても嬉しい。少女から大人の女性に変化していく穏やかな心境を封じ込めたこの曲は、当時まだ学生だった自身の心にじんわりと沁みたものである。
2000年代は家族でシドニーに移住し、しばらく音楽活動から遠ざかっていたが、帰国後の2017年に11年ぶりにアルバムをリリースし、音楽活動を再開している。2023年からはファンクラブも発足し、2025年2月14日には、セルフカバーアルバム第4弾『BIG LOVE』がリリースされる。「瞳・元気」や「ZUTTO ~Christmas version~」なども収録予定なので、是非この機会に現在の永井真理子にも注目していただきたい。