西洋美術史を読み解くカギ 國富さん親子がセザンヌ作品を姫路市立美術館に寄贈
世界文化遺産・国宝姫路城を仰ぐ赤レンガ造りの姫路市立美術館(同市本町)の収蔵品に、『近代絵画の父』と称される巨匠ポール・セザンヌの作品「木立」が加わった。約30年前にモネやルノワールなど近代フランス絵画を中心とする個人コレクション50点を同館へ託した國富奎三氏の長女、彩氏から寄贈された。
セザンヌは故郷南仏とパリで19世紀後半に活動した画家。目の前にある自然の観察に基づきながら色彩による形態表現と筆触による画面構築を追及した技法で、ピカソをはじめとする20世紀美術に大きな影響を与えたことで知られる。
「木立」はセザンヌが1884年から86年にかけて制作した鉛筆と水彩の絵画(縦12.7×横21センチ)。独自の技法は葉の描き方に確認できる。パリからロンドン、ニューヨークと一流の美術家のもとを渡り歩き、1986年にニューヨークで開かれたオークションに出品されたところを一目惚れした奎三氏に落札された。
以来、ほとんど表に出ることなく愛蔵されてきたが、奎三氏が経営する病院を彩氏へ承継した2006年、「娘の仕事ぶりに報いたい」との思いで同時に彩氏に譲り渡された。
姫路市立美術館に寄贈したポール・セザンヌ作「木立」を眺める國富さん親子
その後、同館「國富奎三コレクション室」のマティス作品が松方コレクションと一致することが確認されるなど、近年になって同室作品群の研究が飛躍的に進んでいることから、「西洋美術が印象派からフォーヴィズム(野獣派)、現代美術へと発展した流れを読み解く一助になるはず」と親子で話し合い、寄贈が決まったという。
作品保護の観点から展示は年3カ月程度にとどまる予定で、今年は4月4日から7月23日に展示される。