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「インクルーシブ教育」とは?【前編】障がいや人種、性別の違いを超えて学び合う教育の海外事例と特別支援教育の課題を解説

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「インクルーシブ教育」とは?【前編】障がいや人種、性別の違いを超えて学び合う教育の海外事例と特別支援教育の課題を解説

インクルーシブ教育とは、障がいや病気の有無、国籍、人種、宗教、性別などの違いを超えて、全ての子どもたちが同じ環境で学ぶ教育のことです。日本の教育現場では、インクルーシブ教育の浸透が遅れていると言われています。

この記事では、「共生社会」の実現に欠かせない「インクルーシブ教育」について以下の4点を解説します。

前編 インクルーシブ教育とは? インクルーシブ教育・特別支援教育の現状と課題 後編 インクルーシブ保育の海外事例 教育の現場で障がいと向き合う人

インクルーシブ教育とは?

ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、すべての人が平等に学べることは重要であるにも関わらず、今日の世界では、性別や民族、社会的背景、言語、宗教、国籍、経済的状況、能力などを理由に教育から特定の人たちが排除されている現状があることを指摘した上で、それらの障壁を取り除き、全ての子どもに教育を保証する理念のもとに取り組むプロセスを「インクルーシブ教育システム」としています。

インクルーシブ教育がはじめて国際文書に明記されたのは1994年の「サマランカ宣言」と言われています。「万人のための教育(Education for All)」を宣言し、「どんな特別な教育的ニーズを持つかにかかわらず、万人が教育を受けられるようにしないといけない」と述べている点で、インクルーシブ教育の理念を明言しています。(※1)

国連は2006年に「障がい者の権利に関する条約」を採択しました。障がい者の権利に関する条約第24条によれば「インクルーシブ教育システム」とは、「人間の多様性の尊重等の強化、障がい者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的下、障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みであり、障がいのある者が教育制度一般から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な『合理的配慮』が提供される等が必要とされている」と定義されています。日本も2014年に批准し、小中学校でインクルーシブ教育の実現は重要課題とされています。(※2)

出典
※1 「インクルーシブのつぼみ: ともに育ちあい、学びあうための10の提言」
※2 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告) 概要:文部科学省

インクルーシブ教育と特別支援教育の違いを解説

特別支援教育は障がいのある子ども一人ひとりの教育的ニーズを把握し、生活や学習上の困難を改善・克服するための指導や支援を行う教育です。

多様性を尊重する「共生社会」の実現にはインクルーシブ教育が不可欠で、そのシステムを構築するために必要なのが障がいのある子どもたちの社会参加を促す特別支援教育なのです。インクルーシブ教育と特別支援教育では、それぞれの意味は異なりますが、共生社会の実現には欠かせないものです。(※3)

出典:
※3 共生社会の形成に向けて|文部科学省 

「共生社会」とは?

「共生社会」とは「これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障がい者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会」と定義されています。(※4)

簡単にいえば、障がいがある、ないにかかわらず、女の人も男の人も、お年寄りも若い人も、全ての人がお互いの人権(私たちが幸福に暮らしていくための権利)や尊厳(その人の人格を尊いものと認めて敬うこと)を大切にし、支え合い、誰もが生き生きとした人生を送ることができる社会のことです。(※5)

出典:
※4 共生社会の形成に向けて|文部科学省
※5 誰も暮らしやすい社会を目指して~心のバリアフリーについて学ぼう~

インクルーシブ教育・特別支援教育の現状と課題

特別支援教育の推進によって、障がいのある子どもがほかの子どもと同様の教育を受け、可能性を広げて成長することは共生社会の実現に重要であることは言うまでもありません。インクルーシブ教育においては、障がいのある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮および多様な学びの場を用意することが必要と定められています。

しかし、現状ではさまざまな問題点が潜んでいます。2012年から2022年までの10年間で義務教育段階の児童生徒数は1割減少する一方、特別支援教育を受ける児童生徒数は30.2万人から59.9万人と倍増しています。(※6)

発達障がいへの理解が進んだことで診断される子どもが増え、特別な支援を我が子に与えたいという保護者の考えによって特別支援学校を選択するようになったことが要因とされています。障がいのある子どもへの理解や配慮が増えた一方、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが一緒に学べる仕組みと環境を整備するインクルーシブ教育や共生社会の推進の流れと逆行するという見方もあり、波紋を呼んでいます。

国連の障がい者権利委員会は2022年9月に日本に対し「特別支援教育によって、障がいがある子どもが通常の環境での教育にアクセスできず、隔離された状態が永続化していることに懸念を示す」と勧告しました。(※7)

文部科学省は「障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に学ぶことができるように配慮する観点から、交流及び共同学習を一層推進していくことが重要である」としていますが、全国の学校・学級現場ではインクルーシブ教育の環境整備に課題を抱えているようです。

出典
※6  3.障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備:文部科学省 
※7 【2022年9月9日】障害者権利条約~はじめての日本の建設的対話が実施され、国連障害者権利委員会から日本政府へ勧告(総括所見)が出されました~ | DPI 日本会議

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