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【「アーツカウンシル・ネットワークミーティング」】 「無人駅の芸術祭」から学ぶ視点とは

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は9月30日に静岡市駿河区のグランシップで開かれた「アーツカウンシル・ネットワークミーティング」から。
独立行政法人日本芸術文化振興会と全国各地のアーツカウンシルの代表者が集い、課題やノウハウを共有する会合。本年度第2回の会場となったグランシップには全国のアーツカウンシルなど約20機関が集った。

アーツカウンシルしずおかの支援プログラムである、大井川流域の広域芸術祭「UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川」を主催する「NPO法人クロスメディアしまだ」の児玉絵美事務局長が、2018年から現在までの芸術祭の歩みを紹介した。

児玉さんは、アーツカウンシルとの連携によるアートプロジェクトとして重要な視点を複数提示していた。その最たるものは「アートの役割とは価値変換である」という、芸術祭の実践から導き出された結論だ。

過疎が進行し、コミュニティーが弱体化する大井川流域を、逆転の発想で芸術祭の舞台にした。アーティストを掘り起こし、地域のリサーチを経て作品を作ってもらい、芸術祭の会期には来場者をもてなす。作品制作を通じた、アーティストと住民の相互理解と信頼の構築が鍵だ。

児玉さんは「最小単位である『集落』を単位として、その固有性を掘り下げ、アートで可視化する」と、芸術祭の成り立ちを説明した。確かにこの「濃密性」は、小規模集落でないと生まれ得ないだろう。

アーティストを受け入れる集落にとって、芸術祭は「参加するもの」という意識が広がっているという。2019、2020年に島田市の抜里集落で作品を手がけた江頭誠さんは「この芸術祭の一番の価値はここに住む人だ」と言ったそうだ。

アーティストと茶農家の高齢者が、立場を超えて協働する。人と人の交流そのものが作品になっていく。まさに「価値変換」が起こる瞬間だ。こうした現象をどうしたらうまく引き起こせるかが、全国のアートプロジェクトの腕の見せ所。無人駅の芸術祭は成功例と言えそうだ。(は)
 

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