夏休みの自由研究にも!アナウンサーもみんなやっている早口言葉に挑戦!人前で話す訓練にもなる「外郎売」が楽しい絵本に
子どもだけでなく大人も楽しめる絵本を、絵本セラピスト協会認定「大人に絵本ひろめ隊員」、そして2児の母でもある、HBCアナウンサーの堰八紗也佳(せきはち・さやか)がご紹介します。
アナウンサーや俳優が滑舌を良くするために、必ず!といっていいほど取り入れているトレーニングに「外郎売(ういろううり)」があります。
1718年、今から300年以上前の江戸時代に、二代目・市川團十郎により初演された、歌舞伎の劇中に出てくるセリフ芸です。
聞き馴染みのない昔のことばがたくさん出てくる外郎売ですが、「絵」をつけることで子どもにもわかりやすく親しみやすくした作品がありました!
声にだすことばえほん『外郎売』(ほるぷ出版)長野ヒデ子・絵 齊藤孝・編
絵といっても浮世絵のようなものではなく、漫画のような親しみやすく可愛らしいタッチで描かれています。
表紙には、「ういろう」と書かれたのぼりを掲げながら歩いている商売人がいて、その周りで「おや、何か面白そうなことをやっているぞ」と、子どもも大人も注目している様子がうかがえます。
“ういろう”というお菓子も有名ですが、ここで出てくる“ういろう”は薬の名前です。
つまり外郎売は、「ういろうを売っている人が、お客さんを前にして効能を伝えている」セリフなのです。
時代が違うのでわかりにくい言葉も出てきますが、心配ご無用!
絵本のうしろのほうに、“ことばの説明”があります。
例えば…
「白河夜船(しらかわよふね)・・・熟睡して何も気づかないこと」
「繻子(しゅす)・・・滑らかで光沢のある織物。サテン」
馴染みのない単語や用語をわかりやすく説明してあるため、本文と照らし合わせれば、大体の内容を理解することができます。
なぜアナウンサーが外郎売?
江戸時代の歌舞伎のセリフが、なぜ今もアナウンサーのトレーニングに取り入れられているのでしょうか。大きな理由は2つあると考えます。
1つ目は、早口言葉がたくさん出てくるからです。
ういろうを飲むと“口が回りだして止まらなくなる”という効能があるので、それを実証するため、中盤からは早口言葉がどんどん出てきます。
つまり、早口言葉をスラスラと言えなければ、薬の効能を証明できないのです!
2つ目は、「難音語」が全て詰まっているから。
日本語には、発音しづらい音の組み合わせ=「難音語」が11種類あると言われています。外郎売のセリフの中には、それがすべて詰まっているのです。
滑舌訓練にぴったりということですね!
私も新人時代から指導を受け続け、約3000文字ある全文を、そらで唱えることができます。
子どもも覚えて披露すれば、クラスのヒーロー!?
子ども向けの朗読会で、外郎売を披露したこともありますが、早口言葉のあたりでは「おぉ!」という声も聞こえてきました。
たくさんの早口言葉が出てきてテンポも良いので、子どもたちも最後まで飽きることなく聴くことができるようです。
夏休みのあいだ、この外郎売の意味を学び、暗記してみることもおすすめです。スラスラ言えるようになったら音声や動画で記録すれば、立派な自由研究にもなりますね!
「滑舌のよさ」というのは、舌が回ることだけではなく、“息がうまく切れている”ことをいいます。
外郎売を練習すれば、ダラダラとメリハリなくしゃべる癖も取れ、人前で自信を持って話せるようになるかもしれません!
「耳で聴く本」として、私が外郎売を朗読したものを『オーディオブック』で販売しています。
HBC北海道放送 オーディオブック
ぜひこちらも聴いてみてくださいね。
参考文献
『音相』(プレジデント社)木通隆行
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「連載コラム・今月の絵本通信」
文|HBCアナウンサー 堰八紗也佳
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編集:Sitakke編集部あい