東京23区に残る最後の乾麺メーカーの蕎麦で、泣けた【家そば放浪記】第282束:クイーンズ伊勢丹で買った、玉川食品『粗挽き入り 満さくそば』378円(1人前189円)
高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」に行ってみると、まだ見ぬメーカー(製造所)の干し蕎麦が陳列されていた。その名も「玉川食品」。調べてみると、創業80年(創業昭和10年)、東京23区に残る最後の乾麺メーカーらしい。
さらに同社のホームページを読み込んでいくと、期待値が爆上がりするような情報が書かれていた。以下に引用させていただこう。
「当社は東京23区最後に残る乾麺製造メーカーであり、昭和10年の創業以来、地域に根ざした製麺工場として、うどん、そば、冷麦など和麺のほか、パスタ、中華麺、焼そばなど多様な麺づくりを行ってきました。
主力の「乾麺 満さくうどん」は平成25年に東京都地域特産品として認定されています。
又、都内6区175校の学校給食指定工場認定の他、宮内庁の食堂用及び宮中祭祀である新嘗祭(にいなめさい)の奉納用のうどんとしての御用命を承っております。」
東京都地域特産品! 学校給食! 宮内庁の食堂! 奉納用のうどん!! とにかくうどんが強いようだが、今回はそば。しかし、主力「乾麺 満さくうどん」の蕎麦版、『粗挽き入り 満さくそば』である。
期待しかない……!!!!
デカい鍋に湯を沸かし……
5〜6分ゆでて、冷水(氷水)で冷やしたら──
完成。
して、そのお味は──
これは珍しい。かなり珍しい印象だ。
食べた瞬間は「ん? 家かな?」と思ったが、よくよく食べてみると、そうではない。家ではなく「生」。そう、「生そば感」。なんというか、例えは悪いが「立ち食いそば屋さんの蕎麦」みたいな感じなのだ。
ということで、できたらこれは「温」のつゆでいただきたいところ。それも味が濃い濃いの、色も濃い、“THE東京” な温つゆが合う予感。
シンプルな「かけそば」でも渋くて良いが、そこに春菊の天ぷらなんて添えてあったら最高だな……なんて妄想がブワッと爆発するような蕎麦だった。
ということで……
わざわざ温のつゆを用意してみたところ……
最高!
それと同時に、懐かしさで泣きそうになった。
これ、遠い遠い昔の昔、おおよそ今から39年くらい前。
神宮球場の外野席の下あたりにある、言葉は悪いが「小汚い立ち食い蕎麦屋さん」で食べた蕎麦そっくりなのだ。
太さといい、かたさといい。これに唐辛子を鬼のようにかけて食べたっけなぁ……。
ヤクルトファンのクラスメイトと一緒にナイター観戦に行って(友達の父親が保護者として連れて行ってくれた)。
「そんなに唐辛子かけて、羽鳥すげー!」って。小2とか小3のころの思い出だ。
つい最近、何十年ぶりかに神宮球場の外野席に行ったが、もちろんそのお蕎麦屋さんはもうなかった。
しかし、外野席に行くまでのゲートから感じる “夏の神宮の熱気” は、あの頃のままだった。
これは間違いなく東京の蕎麦。
私は根っからの東京っ子。
私は好きだ、こういう蕎麦。
参考リンク:江戸玉川屋(玉川食品)
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24