4月から「週休3日制」がスタート 休みが増えるとどう変わる? 子育て・介護・通院と仕事の両立は?
1日の働く時間を増やさず「週休3日」にする方法は? 2025年4月から東京都などで週休3日制がスタート。お給料や1週間の働く時間はそのままで「休みを1日増やす」方式だが、民間へは広がるのか?すでに週休3日が広まるフランスの事例を紹介しつつ理想の働き方・休み方について考える
【画像】週休3日でどう変わる? 1日の働く時間を変えず、休みを増やす方法は?「もう1日、お休みが増えたら……」そんな気持ちに応える「週休3日制度」が広がりはじめています。
この4月(2025年)から、東京都などの自治体で「週休3日」を選択できる制度がスタート。お給料や1週間の労働時間はそのままで、平日5日のうちの1日を「働かない日」とする制度です。
子育てや介護・通院などのさまざまな事情と、仕事の両立がしやすくなる効果が見込まれていますが、実際のところはどうなのでしょうか?
すでに「週休3日」の働き方が広まっているフランスから、在仏ライターの髙崎順子さんと考えます。
休む日を増やして、労働時間はそのまま
日本で、土・日を休む「週休2日制」が公的に導入されたのは1992年。それから33年経ち、この4月から東京都などが「週休3日制」を開始しました。
実は、兵庫県など5つの府県庁ではすでに導入済みで、それがさらに広がっているという状況です。
▲週休3日制で、子育てや介護・通院などのさまざまな事情と、仕事の両立がしやすくなる効果が見込まれている。 写真:アフロ
また市町村でも、期間限定で試した群馬県前橋市(2023年)のような例があります。
「休みが1日増える」といっても、いま導入されている方法では、働く時間の長さは変わりません。始業と就業の時間を動かす「フレックスタイム制」を応用して、週の平日4日間の勤務時間を長くした分、1日を休みにする、というものです。
職員からは「子育てや介護など、家族に使える時間が増えた」とポジティブな声が上がるいっぽう、「1日の労働時間が長くなるので疲れる」などの反応も出ています。
1日の働く時間を増やさず、週休3日にする方法は?
休日が1日増えれば、自宅にいられる日が増えるので、ワークライフバランスをより柔軟に考えることができます。
ですが1日のうち職場にいる時間が長くなると、通勤時間も含めた「仕事用の時間」が増え、前後の自由時間が削られます。通勤日は文字どおり、「仕事だけ」で終わってしまうことも。
育児・介護に保育所やデイケアを利用している人には、平日の利用時間が長くなる、という影響も出てきます。
いちばん望ましいのは「1日の勤務時間を変えず、週休3日にする」こと。
とうてい無理なように思えますが、すでに週休3日を実現している民間企業もあります。
働く日を1日、まるっと減らす
日本では、佐川急便やユニクロが1日の労働時間を10時間とし、週休3日を実現しています。
ファミリーマートやリクルートなども、週休3日制を導入し柔軟な働き方を取り入れていることが知られています。
また、たとえば私が住んでいるフランスでは数年前から、民間企業での週休3日制が試されています。
▲週休3日の広がり、どうやって実現できた? 写真:アフロ
2023年に週休3日で働いたフランスのサラリーマンは約1万人。
調査によると、それらの職場の8割は、日本と同じ「1日の勤務時間を長くして、休日を1日増やす」スタイルでしたが、一部では「1日の勤務時間やお給料はそのまま、休日を1日増やす」形を取っているのが分かりました。
つまり、働く時間をまるっと1日分、短くしたのです。
週休3日の実現、30年前からの取り組み
1日の勤務時間はそのままで、週休3日にする……一見「無理でしょ?」とも思える方法が、フランスで行われているのには理由があります。
さかのぼること約30年前の1990年代、労働時間を短くするいくつかの政策によって、週休3日制が部分的に実現されたのです。
具体的には、「正社員の定時の勤務時間を週4日・合計32時間にできる」というものでした。
当時のフランスは、今の日本とほぼ同じ「週39時間」が標準の労働時間。そして高い失業率が問題になっていました。
▲フランスでは、国が「1人の働く時間を短くして、より多くの人を雇ってほしい」と企業へ働きかけたことが、週休3日が広がるきっかけとなった。 写真:アフロ
そこでフランス政府は、この「正社員の働く時間を週4日・合計32時間にできる」政策によって、「従業員1人の働く時間を短くして、より多くの人を雇ってほしい」と、企業へ働きかけたのです。
さらに、「労働時間を短くして正社員の雇用を一定以上増やした企業には、社会保障の負担金を減額する」という見返りをつけて、企業にアピールしました。
その後フランスではさらに労働法が変わり、標準の定時が「週35時間」と短くなったので、この見返りはなくなりました。
それでも「より短い時間で働く正社員」にはニーズがあったのでしょう。「部分勤務の正社員」の形で、今も残っています(時間を短縮した分、お給料は減らされます)。
週休3日で子育てしながらキャリアを続ける
私の知り合いにも、この「部分勤務の正社員」で働く親たちがいます。会社に行くのは週4日、残りの3日間は自宅で子どもと過ごしています。
子どもが小さいうちはそうして仕事を続け、小学校高学年になったら、週5日勤務の完全フルタイムに戻るつもりだそうです。
実際フランスでは、3歳未満の子がいる母親の7割ほどが、サラリーマンの仕事を続けています。そのうちの3人に1人が「部分勤務の正社員」です。
出勤する日数は少なくなるけれど、会社に行ける日はしっかりと定時で働く。
それができるなら、正社員としてキャリアを続けられる人は増えるだろうな……と、私自身も働く親の1人として感じます。
6人に1人が時短勤務のフランス
そしてこの働き方を必要とする人・望む人は、母親だけではありません。
2023年のフランスで「部分勤務」で働くサラリーマンは、女性が4人に1人・男性は10人に1人。その数は全体の約17%にあたる約420万人、ほぼ「6人に1人」です。
働く日を1日ではなく、半日だけ減らす人もいます。それでも職場や社会はさほど問題なく回っているので、週休3日を試す職場が出てきているのでしょう。
ですがフランス政府としては、この「働く時間を1日分減らす」方法を一般的にするのは、まだ早すぎると見ているようす。
今、国家公務員の週休3日制が試験的に導入されていますが、そこで取られたのは日本と同じ「1日の勤務時間を長くして、休日を1日増やす」やり方です。
働く時間を短くしたら、どう変わる?
実はヨーロッパにはフランスだけではなく、アイスランドやベルギーなど、週休3日をテストしている国や企業が他にもいくつもあります。
それらヨーロッパの国々に共通しているのは、1990年代から続いている「労働時間を今より短くして、より多くの人に働いてもらい、国の生産性を上げよう」という取り組みです。
そもそもなぜ、そのような取り組みをしているのでしょう?
長時間労働の問題を研究する、京都大学の柴田悠(しばた・はるか)教授はこう説明します。
「ヨーロッパの国々がそうしている理由は、長時間労働はできないけれど働く意欲のある、多様な人が働けるようにしたかったから。より少ない勤務時間・日数でも生産できるよう、デジタル化を進めて、効率的に働けるようにしたのです」
いっぽう日本では今も、多くの職場で長時間労働が根強く残っています。正社員には「週5日・残業あり」の働き方が求められていて、そうできない人は正社員になれない・正社員でいられない状況が続いています。
「日本では、これからますます人口が減っていく『人口オーナス期(※)』が続きます。さまざまな事情がある人も、その人に可能な形で働けるようにしなければなりません」(柴田先生)
(※注:少子高齢化など人口の構成変化で経済にマイナス影響がある状態。オーナスとは負担、重荷という意味)
今の日本では人手不足が言われていますが、実は、働き手はいます。ないのは、その人たちが働ける条件の、仕事のほうではないでしょうか。
この4月から「希望する人の週休3日制」が始まった東京都では、まさにこの点を導入の理由としています。
子育てや介護など、さまざまな事情を抱える職員が増える中、選択肢を増やすことで、より多くの職員が働きやすい環境を整えていこう──週休3日制は、その環境整備の一つとして発表されました。
日本で土・日を休業とする「完全週休2日制」が導入されたころにも、「休日を増やして大丈夫なのか」という声はありました。ですが今では、広く日本社会に定着しています。
まず制度を整えたら、それを使っていくうちに社会が変わっていく。
週休3日制も、そんな変化の一つになるかもしれません。ぜひ、なってほしいです。
【参考・出典】
「週休3日制」試行に係るアンケート結果報告〔群馬県前橋市(2023年)〕
『週休3日』で働く-世界各国に広がる週4日勤務制・トライアル事例-(リクルートワークス研究所)
※フランスに関するデータやファクトは主に公的機関の情報を出典としています
https://dares.travail-emploi.gouv.fr