地下空洞見える化!道路陥没件数8割減の藤沢市の取組み
このところ、道路陥没が社会問題化していますが、その原因は老朽化した上下水道などの地下インフラにある、とされています。上下水道管から漏れた水が地下に空洞を作り、それが陥没を引き起こす主な原因ということなのですが、それらを保守点検して修繕していくとなると、予算も人手も足りないと言われ、なんだか不安になりますよね。
路面下の空洞の発生しやすさを色分けして地図に!
そんな中、神奈川県藤沢市が、地下の空洞化に関する地図を作りました。どんな地図なのか?藤沢市道路下水道部の東福耕平さんにお話を伺いました。
藤沢市道路下水道部 東福耕平さん
「本マップは、市内を250m四方の1198メッシュに分割した各エリアの、空洞の発生しやすさを色ごとに可視化したものです。当市の状況を踏まえて設定した空洞発生の四つの因子に基づきまして、空洞ポテンシャルを四段階で評価しておりまして、色が濃いほど空洞が発生しやすいエリアを示しております。
平成27年度、28年度の調査で多くの空洞が見つかったということに加えて、実際、陥没の発生件数も多くて、平成27年度には123件もの陥没が発生してしまっていたということがございまして、これに対する対策ということで、市内全域1300キロの市道があるんですけれども、そのすべての路面下空洞調査を実施することは財政負担が大きく、時間もかかってしまうということで、こういったマップを活用して効率化を図っているところです。
この地図が出来たことによって、どこの路線を優先して、重点的に路面下空洞調査を実施するかという計画が立てられるようになりましたので、少ないお金少ない時間で、より効率的に調査を実施することが可能になりました。」
藤沢市の「ポテンシャルマップ」 写真提供:藤沢市
この地図「ポテンシャルマップ」は、藤沢市と東京大学生産技術研究所、民間のジオ・サーチの三者で共同で開発したもので、藤沢市の特徴を踏まえた空洞発生の四つの因子が多いところの色が濃くなっています。
藤沢市は、平成27年度から路面下の空洞調査を始めましたが、端から全部ひっくり返していくわけにはいきませんよね。そこで、この地図を作り、空洞の可能性の高い色の濃い場所を優先して、効率的に地面の下を調査する、というやり方にしたのです。
トラックで走りながらマイクロ波を照射!
とはいえ、色の濃い場所と言ってもまあまあの範囲がありますよね。もっと絞りたい。そこに登場するのが、地上から地面下の空洞を確度高く見つける技術。
地下空洞を見つける技術を研究して30年、ジオ・サーチ株式会社清水美波さんのお話。
ジオ・サーチ株式会社 清水美波さん
「トラックにマイクロ波を照射するアンテナが載っておりまして、それを照射させながら返ってきた反射を解析して、異常個所を特定しています。
はい、トラックで走っております。最大速度で100キロほど出せるものになっておりまして、その場でデータを取りながら解析をしていくというところになります。
空洞の可能性があると、そこだけ強い反射が返ってくるので、それを周りの信号と見比べた時に、強いものは空洞の可能性があるだろうと判断いたします。弊社のソフトですと三次元的にデータを見ることができますので、こちらの方が浅くてより地表に近いねとか、こちらの方がより広がりが大きいねとか、そういったところを見ながらレベル分けというか、危ない信号っていうのをそれぞれ順位付けすることはできます。
藤沢市さんの方からお話伺った限りでは、ちょうど、ご報告した通りの位置に(空洞が)ある、っていうのはすごく驚いていただけていて、そこの正確さっていうのは私も確認できました。」
トラックで走りながら、データを取っていくんです!
こちらが「スケルカー」です。赤白の斜線の部分にマイクロ波を照射する装置が! 写真提供:ジオ・サーチ
このトラック「スケルカー」は、荷台の底の面、地表から10センチくらいの位置に、地面と平行にマイクロ波を出す装置がついていて、マイクロ波を照射しながら、その反射で空洞を探し当てます。同じ空洞でも水道管などは、連続して反射があるから空洞ではない、と除外していきます。同時に、GPSで位置情報も取っているので、空洞の場所を、地上の景色と連動させてピンポイントで判別できるんです。
「スケルカー」のマイクロ波照射のイメージ 写真提供:ジオ・サーチ
清水さんが解析して、ここに空洞があります、と藤沢市に報告。本当にちょうどそこに空洞がありました!と驚かれたとか。こうしたデータもまた「ポテンシャルマップ」をより正確にしてくことに繋がっていく、ということです。
陥没件数8割減!事後対応から予防保全に!
そして、こうした地図を作った成果が出ています。再び藤沢市の東福さんのお話です。
藤沢市道路下水道部 東福耕平さん
「調査によって見つかった要緊急対応、比較的浅い空洞、あとは広がりが大きいものについては即座に修繕を実施しておりまして、それによって陥没件数の減少につながっております。ピーク時の平成27年度123件あった陥没件数なんですけれども、令和5年度には28件まで減少しておりまして、割合で言うと約8割減少しているような状況です。
今まで、事後対応だった対策について、そうですね、こちらもパトロールをしながら、市民の皆さまから通報頂いたら即座に現場に直行して対応したという状況がございました。これが予防保全に転換できたっていうところで、空洞が発生した時点で、陥没発生前に未然に防げたというところで効果を感じているところです。」
陥没が8割も減ったんんです!これは大きい成果ですよね。
市内にあるすべての道路1300キロを全部こうした調査をしたら、10年ほどかかってしまう。しかし、10年放置できない場所もあるわけです。陥没の可能性が高い場所は、今年が大丈夫でも来年急に空洞ができるかもしれない。そうした可能性も含めて、優先順位をつけて対処していくための、まさに「地図」になるので、これからも、より正確な「ポテンシャルマップ」に更新していくため、データを蓄積していきたい、と話していました。
人手や予算が足りない中、「狙いをつけて無駄なく」というのは、他の自治体の参考になりそうですね。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)