日本文学・文化をとらえ直す「世田谷文学館 開館30周年記念 ドナルド・キーン展」が2026年3月8日まで開催中
「世田谷文学館 開館30周年記念 ドナルド・キーン展」が2026年3月8日(日)まで、東京都の『世田谷文学館』で開催されている。ドナルド・キーン(1922-2019)の生涯とともに彼の著作をたどり、あらためて日本文化や日本文学とは何かを考える。TOP画像提供=一般財団法人ドナルド・キーン記念財団。
キーンを通して日本文学の魅力を再発見
これまで数々の著作で、海外に日本文化・日本文学を紹介する役割を果たしてきたドナルド・キーン。『日本文学の歴史』は、英語で書かれた数少ない日本文学通史となっている。また、多くの弟子が日本文化の研究者として活躍し、その仕事は現在も継承されている。
担当学芸員の原さんは、「日本人以上に日本・日本文学を知り、その魅力を伝え続けたドナルド・キーンの業績を、原稿や書簡のほか、一部、新資料を通してご紹介します」と見どころを語る。
キーンの広く鋭い視点に支えられた分析が、今を生きる日本人に自国の文化の魅力を再発見する機会を与えてくれるはずだ。
文献とともに素顔がのぞく日常の姿も紹介
アメリカ合衆国出身のキーンは16歳でコロンビア大学文学部に入学。在学中にアーサー・ウェーリ訳の『源氏物語』や、日本思想史を教えていた角田柳作との運命的な出会いを経て、日本文学へ高い関心を持つようになったという。
1953年8月から1955年5月までの京都大学大学院への留学時代には、歌舞伎や能、狂言といった伝統芸能を鑑賞。日本文化を身体で学ぶために狂言・文楽の稽古を積み、名立たる文学者たちの前で「千鳥」の太郎冠者(たろうかじゃ)を演じ、披露するまでとなった。
この留学時代を通して、多くの文化人と交遊を結んだキーン。生涯の友人となったのは、永井道雄と嶋中鵬二だ。嶋中を通して、谷崎潤一郎や川端康成、三島由紀夫などの作家たちとの知遇を得たという。彼が「黄金時代」と呼んだその時代を振り返り、それはいったいどのようなものだったかをさまざまな資料を通して問う。
また、大好きだったという音楽や料理、友人たちとの交流や収集品、身の回りの品々から、日常を楽しむ達人であったキーンの生活の部分にもスポットを当て、ユーモアあふれる人柄までを感じることができる構成となっている。
開催概要
「世田谷文学館 開館30周年記念 ドナルド・キーン展」
開催期間:2025年11月15日(土)~2026年3月8日(日)
開催時間:10:00~18:00(入館は~17:30)
休館日:月(祝の場合は開館、翌平日休)・12月29日(月)~1月3日(土)
会場:世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1-10-10)
アクセス:京王電鉄京王線芦花公園駅から徒歩5分
入場料:一般1000円、65歳以上・大学・高校生600円、小・中学生300円、障害者手帳をお持ちの方500円(ただし大学生以下は無料)、介添え者は1名まで無料。
【問い合わせ先】
世田谷文学館☏03-5374-9111
公式HP https://www.setabun.or.jp/
取材・文=前田真紀 画像提供=世田谷文学館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。