【福山市】そば処 弥七 〜 気軽に寄って楽しく食べられるそば店。看板メニュー「つけそば」はラー油で味変がおすすめ
麺類はサササッと食べられるので、気軽に外食をしたいときに助かりますよね。
福山で麺類を提供する飲食店は、ラーメン店やうどん店の多い印象がありませんか。
しかし忘れてはならない麺類があります。
それは、そば(蕎麦)です。
2024年(令和6年)、福山市に新たなそば店が登場しました。
「そば処 弥七(以下、「弥七」と記載)」です。
弥七(やしち)は、長年にわたり福山でラーメンを提供してきた店の姉妹店。
ラーメン店で培ったノウハウが、どのようにそば店に生かされているのでしょうか。
そば処 弥七の魅力やこだわりについて、深掘りをしていきます。
人気ラーメン店「満麺亭」の姉妹店・弥七
弥七は福山市多治米町一丁目にあるそば専門店です。
運営するのはラーメン店「満麺亭」と同じ有限会社 満麺カンパニー。
20年以上にわたり福山でラーメンを提供してきた満麺亭が、そばという新たなジャンルに挑戦。
ラーメン店で培ったノウハウがそばでどのように生かされているのか、期待がふくらみます。
弥七があるのは鶏から揚げ店「日鶏ひとり」やスーパーマーケット・ホームセンター・スポーツ施設などがあるショッピングモール「多治米モール」の西側にある建造物の中です。
建物には、焼肉・精肉店や美容サロンなど複数の店舗が入居しています。
駐車場が共用で広々としているのは、うれしいポイントです。
店内は明るく清潔感ある印象。
テーブル席とカウンター席があります。
弥七のメニュー
2024年(令和6年)10月時点の情報
弥七の看板メニューは「つけそば」という種類のそばです。
つけそばは「肉つけそば」「鶏天つけそば」「鴨つけそば」の3種があります。
3種ともつけ汁に冷たいそばを浸して食べるスタイルです。
肉つけそばと鶏天つけそばは、つけ汁の温・冷が選択可能。
鴨そばは、温のみの提供です。
つけそばは、途中で卓上のラー油をつけ汁に垂らし、ピリ辛風味に変化させて楽しむのが、弥七のおすすめだそう。
このほかに「かけそば」「ざるそば」など、定番のそばもラインナップ。
さらに時季限定メニューも登場します。
いずれのそばも並盛は1玉で、追加料金により1.5玉・2玉・3玉と増量可。
ごはんもの・天盛りといったサイドメニューも人気です。
ごはんものは「あんかけカツ丼」「天丼」「かきあげ丼」などがあります。
またそばと丼ものの小サイズのセットも。
丼ものは小サイズでもボリューム満点です。
そば湯がほしい場合は、スタッフへ申し出てください。
人気・おすすめのメニューの紹介
弥七のメニューから、人気のもの・おすすめのものを紹介しましょう。
肉つけそば(冷)
「肉つけそば」は弥七の代表的なメニューで、一番人気です。
つけ汁は温かいものと冷たいものが選べます。
取材時は冷たいつけ汁で、麺の量は並(1玉)にしました。
そばとつけ汁は別々に盛りつけられて出てきます。
そばの上には肉つけそばの特徴である、牛肉のしぐれ煮が載っています。
牛肉のほかに刻みネギと刻み海苔が載っており、肉・ネギ・海苔もたっぷりの量で、そばが隠れて見えないほど。
冷たいつけ汁は、黒っぽい濃い茶色です。
ひんやりとしていて、塩味が強めの甘辛味です。
そばを浸してすすり上げると、濃いめのつけ汁とほんのりと感じるそばの風味が一体となり、心地良いおいしさ。
そばはコシがあり、ツルツルッと喉越しも良好です。
牛肉のしぐれ煮は甘辛い味付けがしっかりと染みており、噛みしめるごとに肉のうまみや甘さと味付けが染み出てきます。
そのままでもおいしいですが、つけ汁に浸したそばと一緒に食べるのもおいしいです。
牛肉をつけ汁に浸して食べると、また違った味わいに。
つけ汁にラー油を好みの量入れてみました。
するとラー油のピリ辛さとコッテリ感が、つけ汁の甘辛い味と見事に調和。
ここにそばや牛肉を浸してみると、コクとピリ辛感が広がる新しい味わいになったのです。
鶏天つけそば(温)
「鶏天つけそば」も肉つけそばに並ぶ人気のメニューです。
名前のとおり、鶏天(鶏ムネ肉の天婦羅)とともに楽しむつけそば。
そばやつけ汁、刻みネギ・刻み海苔などは、肉つけそばと同じです。
取材では、つけ汁は温かいもの、量は並(1玉)を選択しました。
そばの上には、非常に大きな鶏天が二つも載っています。
鶏天のほかに刻みネギと刻み海苔も載っていて、鶏天やネギ・海苔で下のそばがほとんど見えません。
温かいつけ汁は濃いめの茶色をしており、冷たいつけ汁よりもやや赤みがかっているのが特徴的です。
色だけでなく味わいにも違いがあって、温かいつけ汁は冷たいつけ汁よりもダシの風味が強め。
そばを浸してすすると、甘辛い味わいとともに口の中に出しの風味が、そばのやさしい風味とともに広がっていきます。
大きな鶏天は、衣はサクサクッと軽やかな食感で香ばしさが広がります。
中の鶏の身はジューシーでふんわり柔らか。
さらに、鶏天をつけ汁に浸して食べてもおいしいです。
温かいつけ汁も、途中でラー油を数滴垂らすのがおすすめ。
冷たいつけ汁とは少し違った味わいのピリ辛そばになります。
鴨つけそば
「鴨つけそば」は鴨肉が入ったつけそばです。
つけ汁は温かいもののみで、肉・鶏天つけそばとは違った味わいのつけ汁です。
そばや刻みネギ・刻み海苔は肉・鶏天つけそばと同じもの。
鴨つけそばのつけ汁には、白髪ネギやミツバが入っているのが特徴。
そして、もちろんメイン具材となる鴨肉も入っています。
鴨つけそばのつけ汁はやや赤みがかった濃い茶色をしています。
つけ汁の味わいはダシの風味に鴨肉の甘味やうまみが染み出しており、さらに甘辛い味わいです。
鴨肉はムッチリとしていて赤身部分はうまみがあり、脂身部分はプニッとしていて甘味があります。
鴨肉とつけ汁の味わいが合います。
もちろんつけ汁とそばの相性もバッチリで、大変おいしいです。
鴨つけそばのつけ汁にも、途中でラー油を垂らして味を変えてみてください。
また七味トウガラシを入れてもおいしいです。
あんかけカツ丼
「あんかけカツ丼」は弥七ならではのメニュー。
写真はセットメニューに付く小サイズですが、弥七の丼ものは小でもなかなか量が多いです。
あんかけカツ丼は玉子でとじたり、ソースをかけたりするカツ丼とは一線を画す、ややめずらしいスタイルのカツ丼。
ごはんの上に短冊状にカットしたトンカツを並べ、上から「あん」をタップリとかけています。
なかなか見ないスタイルではないでしょうか。
あんの中にはタマネギや玉子も入っていて、上から刻みネギと刻み海苔がかかっています。
トロトロッとした粘りのあるあんの舌触りと熱々加減、あんの甘辛い味わいが、ごはんや厚みがあるトンカツを包み込んで、独特のおいしさを味わえました。
幅広い世代が訪れ、気軽にそばが楽しめる店・そば処 弥七。
店長の山根将太郎(やまね しょうたろう)さんに話を聞きました。
弥七の店長・山根 将太郎さんへインタビュー
気軽にそばが楽しめる店・そば処 弥七(そばどころ やしち)。
店長・山根将太郎(やまね しょうたろう)さんに話を聞きました。
構想10年、満を持しての開業へ
──開業の経緯を知りたい。
山根(敬称略)──
当店はラーメン店「満麺亭」と同じ、有限会社 満麺カンパニーが運営しています。
当社代表取締役の後藤尚通(ごとう ひさみち)は、ラーメン店が軌道に乗ったあとに、何か別の飲食事業もやってみたいという思いを持っていました。
満麺亭には製麺機などの設備がありますので、この製麺設備を活用すれば効率的ですから、同じ麺類の店が良いなと思ったそうです。
麺類のなかでも製麺設備を使ってやりやすいものを考えた結果、そば店に至ったと聞いています。
ただし、これは約10年前の話。
人員確保や準備期間など店舗運営上のタイミング。世の中の経済状況。そして適切な物件が見つかるかどうか。
さまざまなタイミングがかみ合わず、なかなか動き出せなかったようです。
物件は、満麺亭からある程度近い場所であることが絶対条件。
満麺亭の製麺設備を使ってそばを製造するからです。
店舗が軌道に乗るまでは、後藤が2店を行き来しながら店舗運営を管理する点も理由でした。
そして2023年(令和5年)、満麺亭から約1.7kmという距離にちょうど良い物件が建設されることになったので、出店を決めたとのことです。
翌2024年(令和6年)5月に、そば処 弥七を開業。
後藤が10年にわたりずっと温めてきた構想が、やっと実現できました。
ちなみに店名の「弥七」は、時代劇『水戸黄門(みとこうもん)』の登場人物「風車(かざぐるま)の弥七」に由来しています。
弥七の正体は忍者ですが、普段はそば屋を営んでいたからです。
東京の「つけそば」を福山にも根付かせたい
──なぜ「つけそば」という種類を看板メニューに据えたのか
山根──
約10年前にそば店の出店を考えるにあたり、後藤がそば文化の根付いている東京へ視察へ行きました。
そのときに東京で流行していたそばが「肉そば」という「つけそば」だったそうです。
肉そばの先駆者的な店で「港屋」という人気店がありました(現在は閉鎖)。
港屋の肉そばは、そばの上にたくさんの牛肉が載り、さらにその上に山盛りの刻み海苔が載っていたそうです。
つけ汁には、ラー油が入っていました。
これを食べた後藤は、おいしさに衝撃を受けたと言います。
とくにラー油とつけ汁、そばの組み合わせはおいしく、インパクトがあったとのことです。
福山周辺ではほとんど肉そば・つけそばは知られておらず、出している店も少数。
だから、肉そばをメインとした「つけそば」を看板メニューとしたそば店にしたと聞いています。
福山の人に「つけそば」を知ってもらいたい、根付かせたいという思いがあったとのこと。
ただしラー油が入ったそばは、本場の味を知らない福山の人にはやや強烈かなと思い、ラー油が入らないスタイルで肉そばを提供し、好みでラー油を入れるというスタイルに至ったそうです。
また同様の理由で、つけそば以外にも定番のかけそば・ざるそばも用意しています。
さらに丼ものや時季限定のメニューもそろえ、つけそばを知らない人など幅広いお客様に来店してもらえるよう心がけました。
つけ汁や牛肉のしぐれ煮・鶏天にも独自のこだわりを詰め込む
──肉つけそば以外に、鶏天つけそば・鴨つけそばもある。このラインナップにした経緯は?
山根──
鶏天つけそばは、後藤が鶏天をつくりたかったからというのが理由です。
後藤はプライベートで鶏ムネ肉のおいしい調理方法を身につけ、これを生かしたものを店でも出したいと考えました。
そば店で出すなら、やはり天婦羅(てんぷら)。
それで肉そばの牛肉のしぐれ煮を鶏天に置き換え、鶏天つけそばを誕生させました。
鶏天は、弥七の自慢のひとつです。
衣をサクサクで軽やかにする方法、鶏ムネ肉を柔らかくジューシーにする方法にもこだわりがあるのですが、具体的な技術は秘密です。
ぜひ食べてみてください。
鴨つけそばは、そば店でよく置いてある「鴨南蛮そば」のつけそば版。
鴨南蛮そばは、鴨の甘味などがにじみ出た独特のおいしさがあり、一定のファンがいます。
だからつけそばにも鴨肉を使ったものを出せば、一定の人気が得られると後藤は考えたそうです。
──つけそばの肉にはどのようなこだわりが?
山根──
牛肉のしぐれ煮は二度煮込んでいることがこだわりです。
一度目は余分な脂分を落とすため。
二度目は味を染み込ませるためです。
こうすることで脂っこくなくアッサリとした味わいで、味もしっかりと染みた牛肉のしぐれ煮になります。
このとき、あまり煮込みすぎないことが注意点。
肉は煮込みすぎると肉質が固くなり、おいしくなくなりますから。
──つけそばの汁にも工夫はあるの?
山根──
鴨つけそばは温のみですが、肉・鶏天つけそばのつけ汁は温・冷を選べます。
そして温度だけでなく、温・冷のつけ汁で、それぞれ味わいを変えているんです。
温かいものは湯気が立ち上がるので、ダシの風味が強めで、より風味が香るようにしました。
いっぽう冷たいものは、湯気が立ちませんから風味が広がりにくいため、味を濃いめしています。
満麺亭と近いので連携できるのは大きな強み
──ほかにこだわりはある?
山根──
満麺亭が近いので、仕込みの面などで満麺亭と連携ができることは大きいです。
たとえばそばの麺は、満麺亭の製麺設備で製造しています。
寝かせる工程がある中華麺と異なり、そばは打ちたてがおいしいといわれているんです。
満麺亭と近距離なので、店内で打つのと変わらない打ちたてのそば麺を使えるのは大きなメリットだと感じています。
あとは、提供スピード。
当店はそば店の中では、食事の提供スピードはかなり早いと思っています。
これはラーメン店を長年運営してきたノウハウが生かされているのです。
ラーメンは提供スピードを求められますから。
同じくラーメン店のノウハウを生かし、気軽に立ち寄りやすい店づくりを心がけています。
ラーメン店のように気軽に利用できるそば店を目指して
──今後の展望を教えてほしい。
山根──
そば店は少し上品なイメージで、気軽な昼飯としてフラッと立ち寄ったり、子連れで寄ったりしにくい印象があるかもしれません。
弥七は福山において、立ち寄りにくいというそば店のイメージを破りたいんです。
東京などでは、立ち食いそば店など、気軽に利用できるそば店もあります。
立ち食いではありませんが、弥七は福山でもラーメン店のように気軽に利用できるそば店を目指したいです。
そのためにラーメン店で培ったノウハウは、弥七でも存分に生かしています。
そばのように長く、地元で愛される店になりたいですね。
ぜひ仕事中の昼食で、また家族や友人たちとの食事で、弥七にお気軽にお越しください。
気軽にそばが楽しめ、幅広い世代に親しまれるそば処 弥七
長年にわたり福山でラーメンをつくり続けてきた満麺亭が、満を持して「そば」という新しい分野に挑戦した、そば処 弥七。
ラーメン店で培ったノウハウを生かしつつ、そばならではの工夫もしています。
駐車場が広く、席もカウンターとテーブルがあり、一人でも家族連れやグループでも利用しやすいのもポイント。
弥七でオリジナリティーあるそばや、スタンダードなそばを気軽に味わってみてはいかがでしょうか。