子育て中の家選び、マンションor戸建て? 賃貸or購入? それぞれのメリットを経験者に聞いてみた
マンションと戸建てどちらがいいのか、さらには賃貸か購入か……子育て中の家庭にとって「家」にまつわる悩みは尽きないものです。転居のタイミング、エリアなど考えるべきポイントが多くあり、正解がないだけに「本当にこれでいいのか」と決めかねてしまうことも少なくないでしょう。
今回は、乳幼児〜小学生のお子さんを育てながら、戸建住宅を建てた方、マンションを購入した方、賃貸マンションに住んでいる方の三人による座談会を開催。家選びで重視したことや、現在の住居のメリット、共働き家庭ならではの家選びのチェックポイントなど、それぞれの視点から語っていただきました。
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現在の家に引っ越した経緯や検討タイミングは?
皆さんが現在の住まいへの転居を考え始めたタイミングについて教えてください。
ころさん(以下、ころ) 僕は子どもが生まれて半年ほどたった頃です。以前は2LDKの賃貸アパートに住んでおり、ひと部屋を僕がリモートワークで使っていたので、部屋数が足りなくて。
妻と話し合った結果、一戸建てを建てることにしました。当時はちょうど夫婦そろって育児休業中で、二人で検討しやすかったのが幸いでしたね。ハウスメーカー巡りや打ち合わせも平日だと進めやすくて、子どもの外気浴もかねて出かけていました。
黒川さん(以下、黒川) 私は二人目が生まれてからですね。ころさんと同じく、それまで住んでいた賃貸の部屋が狭いなと思うようになって。加えて、上の子が小学校に入学してからだと引っ越しがしづらそうだと思い、その前に購入できないかと検討し始めました。
運よく上の子の入学とほぼ同時期に入居できるマンションがあり、そこを購入して現在も住んでいます。
ぽにさん(以下、ぽに) 私と夫は研究職をしていて、元々は夫の会社の社宅に住んでいました。でもそこは私の通勤にかなり不便な立地で、もう少しアクセスのよいところがいいなと思って。あと当時は不妊治療をしており、クリニックへの通いやすさも重視して、駅に比較的近い今の物件に引っ越しました。
当時は「不妊治療を終えたらまた引っ越そう」と思っていたのですが、今では子ども三人がこの家をとても気に入っているので、住み替えが現実化していません(笑)。
《画像:ぽにさんの家のリビング》
現在の住まいを選ぶ際に重視していたポイントや、優先順位について教えてください。ころさんと黒川さんはお子さんがいる中で、どのように優先順位を決めたのでしょうか?
ころ 一時は、岐阜から東京に引っ越すことも視野に入れていました。でも、僕はにぎやかなところが苦手なのと、田舎育ちゆえに「広い家がいい」という思いがあって。妻が岐阜市内に勤めていたことや、予算のことも考えて、最終的に岐阜市に家を建てることにしました。
僕は東京の会社に在宅ワークで勤めていますが、岐阜市から(新幹線の駅がある)名古屋まで30分弱で行けるので、出社するときも意外と便利なんですよ。
黒川 賃貸物件に住んでいた当時は通勤の利便性から「駅近」が絶対条件でした。ただ、購入となると予算内で「駅近」をかなえるのが難しくて……。広さなどほかの条件を諦める必要があることを痛感しました。
そこで、思い切って「駅近」を条件から外してみると、かなり選択肢が広がったんです。最終的には、駅からは少し離れるけれど、子どもの通学や塾などの教育環境がよいエリアにある物件に決めました。
ぽにさんは、お子さんが生まれてからも同じ家に住み続けていらっしゃいます。引っ越しの計画が出たこともあったのでしょうか。
ぽに あります! 元々は夫婦二人で住んでいた家なので、子どもが三人いるとどうしても狭くて。広い家や持ち家にはずっと憧れているし、夫婦間で何度も話し合ってきました。
でも、今のマンションが駅に比較的近いおかげで通勤時間を短縮できているので、忙しい中でも「子どもと過ごす時間」を確保できているんですよね。それに駅前には塾や習い事の教室も集まっていて、お迎えにも行きやすいんです。
黒川さんも話していた通り、購入となると駅近の物件は非常に高くなりますし、夫がもともと一カ所に腰を据えるよりもいろいろな都市やエリアに住んでみたいというタイプの人なので、今はトータルで「いざとなったら気軽に引っ越せる賃貸」にメリットを感じています。といいつつ、長年引っ越せてないんですけど(笑)。
遊び場、学区や教育環境など、育児中ならではのチェックポイント
黒川さんやぽにさんも話されていましたが、やはり「子育て環境」は、ファミリーが引っ越しを考える上で重要なポイントですよね。
黒川 そうですね。以前住んでいたエリアは交通量や人通りが多く、子どもを一人で行動させづらくて。今のエリアは駅から離れた分落ち着いた雰囲気で、一人で行動させてもある程度は安心感があります。
徒歩圏内に大きい公園などの遊び場や買い物施設などがそろっているのも、子育て世代には便利ですね。
ぽに あと「子育てと住まい」となるとやはり大事なのは「学区」ではないでしょうか? 私も先輩ママに「気にした方がいい」と言われたことがあって。
学区! 確かによく言われるポイントかもしれません。具体的にはどのようにチェックしましたか?
ぽに わが家はもともと夫婦で暮らしていたこともあり、学区を意識して家を選んだわけではないんです。なので先輩ママの助言を受けて、子どもが生まれてから、いろいろな学童の見学や小学校の開放などに足を運び、今住んでいる学区はどうなのか? をチェックしていました。
やんちゃな子が多い地域だとうちの子も影響を受けて自由になり過ぎてしまうかも……と心配でしたし、学童も地域や施設によってかなり個性がありますから。
結果、わりと真面目な子が多い地域で、学校や学童も児童一人ひとりに対して目を配ってくださっていて、このエリアで子育てすることを決めたのですが、今でもいいところに住めたな! と感じています。
黒川 うちは「学区」というより「教育の環境」を意識しました。今住んでいるエリアは駅前に受験に強い塾やハイレベルな塾があって「このあたりは教育への感度が高い人が多そうだな」と感じたんです。
実際にそういう地域にいることで、うちの子もうまく引っ張ってもらえているように感じますね。
ころ わが家の場合、岐阜市は県庁所在地ですし、ある程度レベルの高い教育も受けられるだろうと考えていたので、細かな学区についてはあまりこだわらなかったですね。
僕の住んでいる地域では、小学校は「公立」に行く選択をする子が多く、私立という選択肢や塾についても考えていませんでした。
「教育」についての考えや環境は、都市部とそれ以外で地域差も大きそうですよね。ファミリーの家選びでよく不安材料として挙がるのが「音の問題」ですが、集合住宅を選んだ黒川さん、ぽにさんはどのように考えていましたか。
黒川 幸い、新しいマンションということもあってか、現状は気になっていません。隣や上下階も同年代の子どもがいるご家庭なので、「お互いさま」という気持ちがあるのかもしれませんね。
ただ、マンション内の共有スペースなどに子どもたちが集まっているのを、他の入居者の方が「うるさいな」と感じることはあるようで、管理事務所から注意喚起がなされることもあります。
ぽに うちは大家さんの意向か……もともと騒音対策がしっかり施された物件でした。ラッキーなことに、音がほとんど気にならないんです。実際、お隣に赤ちゃんが生まれていたことにも気づかなかったくらいで(笑)。とはいえ、下の階へ足音が響くのを軽減するために、マットを敷くなどの対策はしています。
戸建てだと、やはり「音」の悩みはあまりありませんか?
ころ うーん、そうとも言えなくて。僕は他人の生活音はもちろん、逆に自分の家から出る生活音がどう聞こえているかも気になるタイプだったので、子どもの声や騒音を気にしなくてよい家にしたいと考えて「エリア」や「戸建て」を選びました。
ただ実際に暮らし始めると、近所の倉庫に出入りするトラックの音や振動が気になることがあって。音が気になるタイプの人は、生活音だけでなく近くにある建物もチェックしておくとよいと思います。
共働き家庭が引っ越す場合、「通勤」も気になる要素かと思います。予算や子育ての環境など、ほかの条件を優先すると通勤が不便になることもありますが、みなさんいかがですか。
黒川 私の場合は引っ越しと同時期にコロナ禍になり、リモートワークの体制が整ったことで出社ペースが月数回にまで落ちたので、駅から遠くてもあまり不便さは感じていません。
ただ、出社がマストな妻は通勤にかかる時間が長くなってしまい、転職を決めました。やっぱり毎日のこととなると、通勤時間は重要だと感じますね。
ころ 僕の場合は、名古屋にもアクセスがよい岐阜市に家を建てようと決めたときから「車での移動を前提としているエリアでありつつ、東京にも行きやすいこと」を意識して、駅まで徒歩15分という今の土地に決めました。
リモート勤務でも出社する機会がゼロになるわけではありませんし、東京は仕事の選択肢が多いから、転職もしやすいかなと。
実際、現在の住まいに引っ越してから、前職と同じ「東京にあるリモートOKの別の会社」に転職したのですが、とても便利ですよ。
やはり「職場や働き方」と「居住地」は密接に関わってきますよね。ぽにさんは「通勤しやすい」という理由からなかなか引っ越せないということですが、逆に「引っ越したいから転職する」と考えたことはありませんでしたか。
ぽに よく考えますよ! ただ、研究職は求人の種類や勤務地の条件など選択肢が限られているので、現実的にはなかなか難しいですね。それに子どもたちの学校や友達付き合いのことなども考えると、全ての希望条件がそろうような転職先と転居先は、なかなか見つからないかなと思っています。
購入も賃貸も「子どもの成長を見据える」のが大事
自宅を購入されたころさんと黒川さんは、ローンなど「お金」についてはどのように考えて購入に踏み切りましたか? また、ご夫婦でどのように相談を進めていったのでしょうか。
ころ ローンは返済期間が長いほど不確実性が増すので、僕らの場合は10~15年で完済する計画を立て、それが可能な予算内で家を建てました。それ以上の未来を考えたところで、状況はいくらでも変わってしまうので。
購入の検討を始めた頃は、まず「どのくらいの予算でどのくらいの家が建てられるか」を知るために、夫婦でいろいろな物件を見たり、住宅情報サイトでエリアごとの価格をチェックしたりしました。
黒川 私は物件を探している段階で、ファイナンシャルプランナーに70代までのマネープランを作成してもらい資金計画を立てました。ただ、毎月の返済額が数十年分ズラリと並んだ表を見て「そんな先のことは考えられないぞ!」と気づいて(笑)。
最終的に35年ローンを組みましたが、ころさんと同じようにこの先10~15年くらいをめどに考えました。実際、その頃には子どもも成長するので、再度計画を見直すかもしれません。
やはり購入前にしっかりマネープランを組み、無理のない予算を組むことが重要なのですね。
黒川 住宅ローン控除*1を利用して、毎月のコストを少しずつ下げるのも重要ですね。でも私は、ローンを完済しても今の家で老後まで暮らすつもりはないんです。長くても15年くらいで売却して、夫婦二人で元いたエリアに戻ってもいいね、と話していたりもします。
不動産の価格が上がっているので、資産性は十分にありますし。東京という事情はあるかもしれませんが、無理に「終の棲家」にこだわり過ぎる必要はないかなって。
ころ 分かります。東京のような都市部と比べると、地方は家を売りにくいことも多いですが、エリアを決める場合に周囲の状況はしっかり確認しておいた方がよいと思います。
わが家の場合は、周辺にうちと同じくらいの層のファミリーが流入していたり、分譲住宅が建設されていたりするので「この先10年くらいなら売れるだろう」と見込んでいます。
《画像:ころさんの家のリビング》
購入の場合は「近い将来売却する可能性があるか」によって資産性も重要な要素となるのですね。ぽにさんは今後の住まいについて、夫婦間でどのように話していますか。
ぽに 夫婦二人とも旅行が好きなので、夫が希望している「いろんな都市に住む」のは私もアリだなと思っています。海外への短期移住も計画していますし、子どもたちが大きくなって自立したら、国内の都市に短期間ずつ住むのもいいねって。だからこそ今、あえて買わなくてもいいかな、と合意はしています。
ただ、ずっと賃貸! と決め切れていない自分もいて……。もしかしたらいずれ、という思いもあって、頭金としていくらかのお金を運用しながらためていますね。と言っても下手な運用です。お金もまだわずかで恥ずかしいくらいなのですが。
賃貸か購入か迷っている場合も「お金」さえ備えていれば、いざというときに決断しやすそうですね。最後に、皆さんの経験をふまえて、これから住宅の購入や住み替えをされる方にアドバイスしたいことはありますか。
ころ 購入の場合は、子どもの成長を見据えて子ども部屋を含む間取りの計画を立てるのがオススメです。子どもが小さいうちは、その時期の子育てしか見えていないまま決めてしまうリスクがあって……。例えばリビング横に和室を作ると、小さいうちは何かと便利ですが、大きくなると持て余してしまうことも。子どもが成長すればプライベートスペースも必要ですしね。
夫婦間やハウスメーカーと間取りを検討する場合は、具体的なたたき台があると話がスムーズに進みます。間取り図の作成ツールを使い、思い思いの間取りを何パターンも作ってみると「それぞれの譲れないポイント」が見えるので、おすすめですよ。
黒川 うちが、まさに子ども部屋問題に悩んでいます!(笑)わが家は3LDKで、子どもは男の子と女の子一人ずつ。子どものプライベートは確保してあげたいし、夫婦でもそれぞれ部屋が欲しいと考えると四部屋は必要になって、一部屋足りないんです。今は寝室も四人一緒だけど、いつまでもそうはいかないし、いずれは私の部屋を子どもに明け渡さないといけないのかなって。
そういう意味では、子どもの年齢差を計算しつつ、何歳くらいでどの部屋を割り振るのか、はたまた自立してもらうのか……といった、家という“箱”の活用計画は重要ですよね。
なるほど! ぽにさんはもし今後引っ越すとなった場合、何を重視したいと考えていますか。
ぽに 共働き家庭では、子どもは小さいうちは保育園で過ごす時間が長く、家にいる時間が短いんですよね。でも小学校に入って、そのうち学童も退所して……と、どんどん家にいる時間が長くなっていくんです。
なので、子どもがいかに快適に過ごせるかは考えておきたいなって思います。例えば小学3年生がこの家で過ごすとしたら……とか、自分が小学生だったら、どんな家に住みたいか……とか、子どもの視点で考えてみるのも面白いかもしれません。
取材・文:藤堂真衣イラスト:caco編集:はてな編集部
*1:個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得又は増改築等をした場合に一定の要件を満たすとき、所得税の減税を受けることができる制度。