「痛風鍋」は本当に危険なの? 食べる時はいつもより多く水分を摂取することが大事
ちょっと穏やかではない名前の料理「痛風鍋」。果たして本当に痛風になってしまうのでしょうか?
冬のリスキーな贅沢「痛風鍋」
寒さが本格化し、いよいよ鍋物が美味しくなるシーズン。魚介類を使った鍋にも美味しいものがたくさんありますが、最近その「インパクトある名前」とともに話題になったものがあります。
その鍋とは「痛風鍋」。カキやタラの白子、あん肝といった高級具材を贅沢に用いた鍋です。
これらの食材はいずれも濃厚な美味しさがありますが、それと同時に「プリン体」を多く含むことでも知られています。この鍋を食べると、プリン体の過剰摂取により痛風になってしまうのでは……?というところからこのように名付けられました。
どれくらいプリン体が多いの?
実際のところこの痛風鍋、どれくらいプリン体が多いのでしょうか。
帝京大学の研究によると、イサキの白子のプリン体含有量が305.5mg、カキが184.5mg、あん肝が104.3mg(いずれも100gあたり)となっています。イサキとタラで多少の違いはあると思われますが、もし同程度と仮定した場合、それぞれ100gずつ食べると600mg近くなります。
成人男性の1日あたりプリン体摂取量推奨上限が400mgとされているので、その数値を大きく超えることになります。痛風持ち、もしくは予備軍の人からすると恐ろしすぎて直視できない数値かもしれません。
一見健康そうなリスキー鍋を考えてみた
しかし、実はこの数字、意外とよくあるレベルと言えるかもしれません。というのも、同じ魚介類という括りでみても、これらの食材と同レベルのプリン体を含有しているものがあるからです。
例えば、クルマエビやバナメイエビと同じ仲間で、かつて安い冷凍エビの代名詞だった大正エビ(コウライエビ)は100gあたり273.2mgのプリン体が含まれます。スルメイカは180mg超、ヤリイカも160mg超とカキ超え、あるいは匹敵する数字です。
更に、健康に良いイメージの強いカツオやイワシなどの赤身魚は200mg超と、こちらもカキやあん肝よりはるかに高い数値となっています。イカや魚、エビやアサリにプリン体のイメージは少なく、安価であるためにカキや白子、あん肝と比べ大量に食べることができ、結果的に大量のプリン体を摂取してしまうことに繋がります。
結局のところ、痛風に気をつけないといけないという人以外は、「痛風鍋」を恐れる必要はあまりないと言えるでしょう。
水分摂取が大切
どうしても怖ければ、痛風のリスクを直接的に高める飲酒を控えめにし、またいつもより多く水分を取るよう留意するのが良いでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>