プロ野球ヤクルトの小澤怜史(日大三島高出身)「抑えは難しい。でも達成感ある」プロ10年目の苦労人が新境地へ
ヤクルトで5年目を迎える小澤怜史投手(26)=日大三島高出身=は2024年シーズンの開幕当初は先発だったが、途中で中継ぎに配置転換となる難しい役回りだった。
「先発として調整してきたので最初はうまくいかなかったですね。1カ月ぐらいでようやく感覚が良くなってきた」。苦労はしたものの、最後は抑えを任されるなど信頼を得て40試合に登板し6勝6敗、防御率2.55、11セーブ。
15年ドラフト2位でソフトバンク入りし、戦力外、トライアウトを経てヤクルト育成契約からはい上がった苦労人は25年でプロ10年目となる。「1年間、中継ぎでやり切って50試合投げたい」と新境地を目指す。
やりがいあるポジション
「抑えは難しいですね。失敗した時の方が印象に残る。ただ、申し訳ないなと思いながらも切り替えはできたと思います。難しい分、達成感、やりがいというのも大きなポジションだと思いました」
シーズン序盤は好投しながらも打線の援護がなく、勝ちが付かなかった。「前半はすごい苦しんだなぁと。そこまで悪い感じではなかったけれど、勝てなかったのは自分にも原因はあるので。五、六回で点取られてというパターンが多くて、粘りきれなかった試合がほとんどでしたね」
オープン戦から先発として準備してきただけに、中継ぎと言われて最初は戸惑った。「先発の時は力感的には8割くらいで投げていこうと思っていたけれど、中継ぎだとできるだけ全力でという形になる。練習でも出力を出す調整をしてこなかったので、急に出せと言われてもすぐには出せなかった」
塁間程度の距離で助走を付けて思い切り投げる練習をするなど、取り組みにも修正が必要になった。中継ぎとなった当初はチームが大量リードで勝っている時などに準備したが、8月初旬に急きょ抑えに抜てきされた。守護神の田口麗斗投手の調子が上がらず「チーム事情で抑えが固定できてないところもあって、みんな順番にチャンスをもらっていた感じ。(自分が)1試合うまくいって、そこからですね。中継ぎで一番いい人がそこ(抑え)を投げると思うので、そこは目指しました」
抑えの醍醐味も体感した。「僅差で最終回となると相手もすごい集中していて、気合もすごい入っている。でもこっちも絶対抑えると思って投げているので、気持ちの面で負けるということはなかったです」
独特のストレート
小澤投手のストレートは平均140キロ台と決して速くはないが空振りが取れる。サイドスローの特徴としてシュート回転しながら浮かび上がる独特の軌道も強みとなっているようだ。
「中継ぎだと球速147、8キロは出る。プロの中継ぎとしては遅い方ですが、自分でも真っすぐが一番の武器だと思っていて、空振りも取れると思って投げている」。変化球に関してはまだ上達途上のようだ。「真っすぐとフォークを軸に、それ以外の変化球がもう1球ほしいなというところでしたが、まだつかめていない。相手も慣れてきますし、何とかしたいと思ってます」と、引き続き精度の向上を目指す。
ヤクルトの投手陣には同年代が多い。左腕高橋奎二投手をはじめ、大学、社会人を経て3年目となる吉村貢司郎投手、同じ中継ぎにも大西広樹投手、一つ下の木澤尚文投手ら。「同級生がみんな1軍にいるってなったら、自分も負けたくないなと思います」
最も緊張した試合は…
球団のレジェンド青木宣親さんの引退試合を締めくくる役割も果たした。「僕なんかでいいのかなと思いながら、マウンドに行ったんですが、いきなりホームラン打たれました。何とか抑えられて一安心しましたが、あの試合が一番プレッシャーを感じました。本当にすごい方の引退試合に投げさせてもらえて、いい経験になりました」。喜怒哀楽をあまり表に出さず、控えめな語り口の小澤投手だが、着実に経験と実績を重ねて存在感を増している。
(編集局ニュースセンター 結城啓子)
【取材こぼれ話】
年末恒例となったプロ野球静岡県人会の野球教室で阪神の岩崎優投手(清水東高出)が、小澤投手の2024年シーズンについて「いろんなポジションをやっていて大変だなと思っていました。いろんなポジションをやることは、簡単に見えて簡単じゃないですよ」と気にかけていました。25年、岩崎投手は小澤投手とともに抑えを担うことで「静岡も盛り上がるので頑張ります」と話してくれました。