マッツ・ミケルセンの『ライオン・キング:ムファサ』曲「Bye Bye」は当初脚本になかったが、「でもマッツ・ミケルセンですよ」ということで作られた
『ライオン・キング』の前日譚となる超実写映画『ライオン・キング:ムファサ』では、敵ライオンのキロス役で本国版声優を務めるマッツ・ミケルセンが、劇中曲「Bye Bye」で美声を轟かせる。ミケルセンのキャリアにとって初の本格歌唱となる同楽曲では、本人が「さまざまなバリエーションを試した」という幅広い声色を堪能することができる。
『ライオン・キング』ではスカーによる「準備をしておけ」が聴けたように、「Bye Bye」は悪いライオンのいたずら心が唸る名曲だ。『ムファサ』の中でもハイライトとなる一曲だが、実は当初は予定されていないパートだったことが明らかになった。楽曲を手掛けたリン=マニュエル・ミランダが米に驚きの裏話を語った。
ミランダはブロードウェイ・ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』でミュージカルの賞レースを総なめにし、舞台音楽の寵児に。2016年の『モアナと伝説の海』以降ディズニーとの仕事を重ねることとなり、『ライオン・キング:ムファサ』ではサウンドトラックを手掛けた。
実は「Bye Bye」が作られたのは、ミランダによる助言が全てのきっかけだった。「元々の脚本には、ヴィランの曲が入る余地がなかったんです」と、ミランダは明らかにしている。「だから僕がバリー監督に提案したんです。“尺がないのはわかるんですけど、でもマッツ・ミケルセンがいるんですよ?我らが最高の悪役じゃないですか”」。
©︎THE RIVER 中谷直登
ミケルセンが演じるキロスは、劇中でムファサへの復讐心に駆られて執拗に追い詰める。狡猾で残忍な悪役だが、「Bye Bye」ではダンサンブルな様子も聴かせる。「ピーナツバターとピクルスみたいな組み合わせだけど、この二つの味は相性抜群だと思う」と、ミランダは曲調の狙いとともに、楽曲に込めたヴィラン像を解説している。
「最高の悪役には、彼らなりの事情というものがあって、それが最高の悪役の面白いところ。ただ悪いから悪役というわけではないんですね。彼らは、主人公と相反するところがあるわけです。“サークル・オブ・ライフはウソだ”といった歌詞を書いて、お客さんをあっと言わせるのはとても楽しかった。」
「同じ理由で、“キルモンガーは正しかった”というものもある」と、ミランダはマーベル映画『ブラックパンサー』(2018)を引き合いに出す。キルモンガーは映画の悪役だが、彼も復讐を果たすべき理由を胸に秘めており、観客はキルモンガーに同情せざるを得なくなる。ミランダは『ブラックパンサー』に携わっていたわけではないが、キルモンガーとキロスを重ね合わせて解釈するところがあったようだ。
「悪役にも理屈があれば、悪役を応援したくなる。それぞれ立場に理由があると、最高のものが生まれるんです。だからこの曲を書くのは、すごく楽しかったですね。」
『ライオン・キング:ムファサ』は公開中。マッツ・ミケルセンを推したリン=マニュエル・ミランダによって制作されることとなった「Bye Bye」は以下より聴くことができる。
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