じゃがいもは200年もの長い間、嫌われていた??『じゃがいもへんなの』
事実は小説より奇なり。なんて言うけれど、これを読むと本当にそうだなあ、、ときっとなると思う。小説より奇な事実、を元に書かれた絵本があったら、小説より奇な絵本!と言ってもいいのかな?これがまさに、それ。
どんな事実が描かれているかというと。
ポテトサラダに、フライドポテトやポテトチップス。さまざまな料理で使われる人気野菜、じゃがいもは、その前はなんと200年もの長い間、嫌われていた、ということ。じゃがいもは、そんなに長い間、いろんな国で、タイトルにある通り、「へんなの〜」と言われて、毛嫌いされていたのだ。
例えば、フランスの貴族は、それって豚の餌でしょ?と、蔑んでいたり。食卓に出すなと怒ったり。そんなじゃがいもの可能性を見つけたのは、刑務所に囚われていた農学博士。こんなに栄養があって美味しいのに、もったいない。そう思った彼は、さまざまなじゃがいも人気にする作戦を立てる。わざと畑に監視をつけて貴重なものと思わせて、盗ませたり。そんなことがあって、イギリスに広がったじゃがいもはたくさんの人の命を救ったり、ジェファーソンが惚れ込んでアメリカに持ち込んだり、果てには初めて宇宙に行った野菜になったりする。そのドラマはまるでハリウッド映画のような展開。あとは読んでいただこう。
この絵本の著者はキリーロバ・ナージャさん。以前このgood title booksでも彼女の「6カ国転校生 ナージャの発見」を紹介しているが、6カ国で育って現在長らく日本在住のクリエーティブディレクター&絵本作家。
この絵本は、彼女とうんこドリルの出版社「文響社」が立ち上げた、マイノリティだったりレアな立場にいる子供達を応援する「RAREキッズ」絵本レーベルの3冊目。今回応援している対象は、どんな子供達だと思います?主人公のじゃがいもは誰を見立てていると思います?
それは、移民の方々。じゃがいもがなければ、世界各国の料理は成立しない。日本で言えば、肉じゃがから、じゃがを抜くと、ただの肉!になってしまうように。海外から渡ってきた人たちがいなければ、全然違う世の中になってしまう!その恩恵に気づこう、と言うメッセージが込められている。
「ヘンなのは、それが見えていない人たちの方だ。」
あとがきの著者のこの言葉。重い、深い、いつの時代にも、21世紀にも、大事なメッセージ。
そして、著者は、2015年の世界のコピーライターランキング1位の才能の持ち主であるから、細部も面白い。「芋蔓式に増えていった」なんてシャレた言葉遣いや、じゃがいもの親子のかけあいにも注目。読んでたのに、この書評を書くためにもう1回読んで、1人笑ってしまった。絵も、読むたびに細かい発見があって楽しい。
『じゃがいもへんなの』は、good title booksでも紹介されています。
倉成英俊
1975年佐賀県生まれ。コピーライターとして電通入社後、広告のスキルを超拡大応用し、各社新規事業部の新プロジェクト創出などを支援。2014年より、電通社員でありながら個人活動(B面)を持つ社員56人と「電通Bチーム」を組織。2020年Creative Project Baseを起業。2022年タイトルが良い本のみを扱う本屋「good title books」を開業。