縁側から、家族の“わくわく”が広がる暮らしへ。霧島に移住して見つけた、わたしたちの時間【地方移住者ストーリーvol.10(鹿児島県霧島市)】
都会の喧騒を離れ、美しい自然に囲まれながら、趣味や住まい、大切な人との時間の充実にこだわった田舎暮らしをスタートする人が増えています。本連載では、都会から地方へ移住し、Instagramで移住後の田舎暮らしを発信している方々に、移住のきっかけや移住後のリアルな暮らしについてインタビュー。第10回は東京都狛江市から鹿児島県霧島市へ2022年に移住し、現在4年目を迎えた真央さん一家。築230年の古民家で、革職人の夫とふたりの息子とともに、自然のそばで丁寧に暮らす日々は、どこか懐かしく、あたたかい。霧島の魅力、家族の変化、そして「移住してよかった」と思える瞬間について、お話を伺いました。
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【真央さん】
2022年8月、東京都狛江市から鹿児島県霧島市へ家族で移住。現在は、革職人の夫と2人の息子とともに、築230年の古民家で暮らしている。縁側のある平屋の住まいを拠点に、暮らしと仕事が隣り合う日常を送る。自然に囲まれた環境の中で、家族との時間や季節の手仕事を大切にしながら、自分たちらしい暮らしを紡ぐ。
Instagramでは、日々の何気ない風景や子育て、畑しごと、ものづくりの様子などを発信。
Instagram @mao0424
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鹿児島県霧島市で「幸せ」を見つける日々
「ここがいい!」家族で感じた直感が始まり
――霧島市に移住されたのは2022年のこと。もともと田舎暮らしへの憧れがあったのですか?
「20代の頃から“いつか田舎で暮らしたい”という思いはずっとあって。上の子が2歳になった頃、本格的に移住を考え始めました。鹿児島は私のルーツがある場所でもあったんですが、家族で旅行したときに自然の豊かさや人のあたたかさに触れて、夫婦そろって“ここだね”ってピンと来たんです」(真央さん 以下、省略)
――直感があったのですね!
「はい。そこからは家探し。半年のあいだに3回鹿児島を訪れて、出合ったのが霧島の今の家でした」
――築230年の古民家に賃貸で暮らしているのですよね。
「古民家ならではの歴史を感じられる梁、広い縁側、台所からの景色に一目惚れして即決でした。平屋で広い畑もあって……まさに私が求めていた理想通りの家だったんです」
大きな窓から差し込むやわらかな光と、風に揺れる緑。この台所で過ごす時間は、真央さんにとってお気に入りのひととき。
緑と青い空に癒やされる。
朝の空気を深呼吸。日々の暮らしに「しあわせスイッチ」がある
――霧島での暮らし、いかがですか?
「移住して4年目になりますが、今でも、朝外に出た瞬間に『は~! 気持ちいい!』って空気のおいしさに感動するんです。自然の中で暮らしていると、日常の何気ない瞬間に“しあわせスイッチ”があるんです。子どもとぶつかるようなことがあっても、一緒に散歩に出れば、モヤモヤがすっと消えて、いつのまにか笑っていたり。不思議ですよね」
――Instagramでも、のびのびと遊ぶお子さんたちの笑顔にほっこりした気持ちになります。
「出かけなくても、近所を散歩しているだけで新しい発見がたくさんあって、遊びも学びも日常の中にあふれています。春は筍掘り、夏は川遊びやカブトムシ探し、秋には収穫体験、冬は庭で焚き火して焼き芋をしたり。そんな風に子どもたちと過ごしていると、親の私の中にも野性的な“わくわく”が戻ってくるんですよ(笑)」
「近所のおじいちゃんが飼っている牛の親子を見に行くのも、子どもたちのお気に入りのお散歩コースです。田んぼや畑、草刈りに忙しいご近所のおじいちゃんおばあちゃんの姿を見るたびに、『元気の秘訣ってこういう暮らしなんだな』って思います」
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家族で見つけた、霧島で暮らすよろこび
「おいしい空気と、あたたかい人と」——霧島で感じるまちの魅力
――霧島市の魅力を教えてください!
「とにかく人があたたかくて、明るい! 近所の方が縁側にふらっと顔をのぞかせてくれて、お裾分けの野菜をくださったり、お茶を飲みながらたわいもない話をしたり。そういうやりとりがとても心地よくて、移住してすぐにこの町が大好きになりました」
――ご家族でお出かけされることも多いのですか?
「はい。霧島には素晴らしい泉質の温泉がたくさんあって、中でも家から近い祝橋温泉にはよく行きますね。個人経営の素敵なカフェやお店も多いので、美味しいものと素敵な人に会いに週末にお出かけするのも楽しいんですよ。中でも、“年輪堂”という霧島茶のお店にはよく立ち寄ります。湧水が湧いている『水神様』もとても気持ちが整う場所で好きです。自然の中にふっと息を抜ける場所があるのは、本当にありがたいですね」
露天風呂や家族風呂もある祝橋温泉。宿泊や食事もできる。
――東京とのアクセスのよさも、決め手のひとつだったと伺いました。
「実家が東京にあって、仕事で行くこともあるので、空港が近いのは本当に助かっています。自然に包まれながらも、不便すぎないのも霧島の魅力です」
暮らしと仕事が隣り合う、縁側のある日常
――移住をきっかけに、ご家族の働き方や暮らし方も大きく変わったそうですね。
「はい。夫は移住をきっかけに独立して、革ブランド『TENTE Handcrafted』を立ち上げました。家の一部屋を工房にして、そこで日々革製品を制作しています。縁側からつながる部屋なので、子どもたちがふらっと入ってきて、絵を描いたり、おしゃべりしたり。作業しながら家族とやりとりする、そんな光景が日常になっています」
「暮らしの延長線上に仕事があることで、家族との時間も自然に持てて、無理がないんです。縁側のある古民家ならではの“開かれたつながり”もあって、ご近所の方との距離がすっと縮まるのも、この家の大きな魅力だと感じています」
畑仕事が教えてくれる、「生きる力」
――真央さんご自身も、畑を始められたそうですね。
「もともとやってみたいと思っていて、ご近所の“畑の先生”たちに教えてもらいながら、季節ごとの野菜を育てています。種から育てて、収穫して、また種を残して……という循環のなかで、命と向き合っている感覚があります」
「東京にいた頃より、“生きてる”って感じる瞬間が本当に増えました。家族で少しずつ“生きていく力”を育んでいく、そんな時間がとても楽しいんです」
「虫も友だちに」。不安だったことも、今では大切な日常に
――移住して困ったことはありましたか?
「実は、あまりないんです(笑)。強いて言えば、うちは山の方なので下水道が通っていなくて、浄化槽代が毎月かかること。あとは、水道代など公共料金が東京より高く感じることでしょうか。あとは……虫!(笑)最初はヒーヒー言ってましたけど、今では畑で出合う虫に『やっほー』って声をかけるくらい、すっかり慣れました。友だちです(笑)」
「ここがいい」と感じる感覚を信じて
――最後に、田舎暮らしを検討している方へ、メッセージをお願いします。
「日本には素敵な田舎がたくさんあって、どこにするか迷うと思います。でもやっぱり、実際に足を運んでみて『ここがいい』と感じた“肌感覚”を信じるのがいちばん。霧島には移住者も多くて、私たちのように移住して楽しく暮らしている家族もたくさんいます。
空港からのアクセスも良いので、東京や他の地方にも行きやすいです。自然に癒やされながら、人とのつながりも感じられるこの町に、ぜひ一度遊びに来てみてくださいね」
写真提供:真央さん (@mao0424)