DXは身近に…業務に余裕、家族との時間も 時代に合わせて中小企業でも導入進む
AIによる自動運転で走るバスや、GPSを使ってブランド和牛を生産管理するシステムなど、デジタル技術を活用してサービスや働き方などを変革するDX=デジタルトランスフォーメーション。
いま実用化が進められ、中小企業でも活用する時代になってきています。
背景にあるのは、急速に進む「人手不足」です。
DXは企業を持続させるチカラとなるのでしょうか。
連載「じぶんごとニュース」
ドライバーの点呼を「自動」に
中小企業に対するアンケートによると、「DX=デジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる」、もしくは「検討している」企業は全体の42%となっていて、2024年より11%ほど上がっています。
北海道内や本州に営業所をもつ、札幌の運送会社「ネクスト」です。
この会社は2024年、国の補助金も利用し、ドライバーの「自動点呼」のシステムを導入しました。
「点呼」は、資格を持った運行管理者がドライバーの健康状態やアルコールチェックなどを原則対面で行い、安全運転に支障がないかをチェックします。
国交省は、運送業などの労働環境や人手不足の解消のため、4年前から段階的に「点呼」の自動化を進めています。
こちらの会社では、自動点呼中に不正をしないよう監視カメラでもチェック。
点呼の項目に引っかかるようであれば、運行管理者のスマートフォンにメールが行き、管理者だけが知る認証番号を入力しない限り、点呼が終わらない仕組みになっています。
ドライバー歴20年以上という現場のベテランドライバーは…。
「最初のうちは慣れなかったけど、点呼の時間も気にならない。出庫時間は決まっているけど、いいと思う」
こうしたシステムを導入することで、別の業務を担ってもらう余裕をもてたり、労働環境が改善されることで、従業員が家族との時間がとれたりといった、ワークライフバランスの充実にもつながるとネクストの戸田洋視北海道支店長は話します。
「どうしても不規則な生活になってしまうので、体調も含め家族の時間もとれるという意味で、自動点呼はこの時代に合わせた非常に良いものと感じている」
創業80年以上…悩みの種はやはり
一方こちらは、苫小牧市にある、創業80年以上の製麺会社「苫食」です。
地元のスーパーや学校給食向けに、うどんやラーメンなどを製造していて、多い時で1日6万食を作る生産ラインは、40人ほどの社員が支えていますが、悩みの種は人手不足です。
そこで導入したのが…AIを使った画像分析で、商品の異物を検索する機械です。
これまで学校給食向けの麺の製造は、異物の監視を強くするために別に4人を配置してチェックをしたうえで、さらに、もう一度全員で全数チェックをする作業をしていたといいます。
それが機械の導入によって、画像データをAIが分析し、異物が混入していないか自動で判定します。
2024年11月の導入以降、従業員4人を他の業務にまわせるようになり、引き合いがあるラーメンの売り上げを、いまの3倍に増やそうとしています。
曽賀玄瑞専務は「中小企業にとって設備投資は金額も限られている。賃金を上げても人が集まらない状況も出てきているので、費用にかかわらず機械化、もしくはDX化していく必要がある」と話します。
現在は、本格始動に向けてAIに画像データを学習させている段階。
わざと異物を入れた商品の画像なども覚えさせています。
会社ごとに袋の形状や中身が違うため、システムを導入したからといって、すぐに稼働できるわけではないですが、今後に期待がかかっています。
世界初の技術“マグロの脂のり”を自動測定
水産業では、こんな技術も開発されています。
富士通などが開発したビンチョウマグロの脂のりをAIが識別する装置です。
これは超音波を使った世界初の技術!
通常は冷凍マグロの尾を切断して、熟練の職人が断面を目視して、脂のりなどを評価しています。
この装置では、超音波の波形をAIが解析することで、マグロを傷つけることなく脂のりを評価することができるんです。
約12秒で自動測定でき、従来に比べて測定時間は約80%短縮されます。
脂のり判定の正解率も従来の手法より向上したということです。
現在、判別できるのは冷凍の「ビンチョウマグロ」のみですが、今後は「キハダマグロ」「カツオ」などに対応魚種を拡大。
さらに、脂のりだけではなく「鮮度」や「身の質」も評価できるようにするということです。
今後さらに人手不足が加速する中、中小企業にとってもDXの導入は避けて通れない課題となっています。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月21日)の情報に基づきます。