「独りにさせない」 訪問看護の現在地
いわゆる「団塊の世代」のおよそ5人に1人が75歳以上の後期高齢者になる今年は「2025年問題」とささやかれ、医療・介護のニーズがさらに高まることが予想される。現場がひっ迫するなかで、厚生労働省が推進するのが在宅ケアだ。
今年1月、湘南台に開所した「がじゅまる訪問看護ステーション」。湘南藤沢心臓血管クリニック附属の事業所で、所長を務める松本智美さん(45歳・善行在住)は「独りにさせない」と強い意志を瞳に宿らせる。
看護師が利用者宅に赴き、病気や障害に応じた医療処置を施す訪問看護ステーション。暮らしの相談を受けたり、アドバイスをしたりして、本人やその家族などが住み慣れた環境で療養生活を送れるような支援もする。
同院の看護師として勤務していた松本さんだったが、「高齢で病院へ足を運ぶことが困難な人もたくさんいる。コロナ禍も追い打ちをかけた。助けを求める人のもとへ看護師が直接駆けつける体制を築きたかった」と開所の理由を明かす。
がじゅまるの木
子どもから高齢者まで対象は幅広い。常駐する看護師は4人。365日24時間、交代制で藤沢市内のほか、場合によっては綾瀬や大和、茅ヶ崎など市境も巡回する。
「附属クリニックの先生方とタッグを組み、点滴や腹膜透析などにも対応。スタッフもスムーズに動けている」とした上で、「幹や気根が『からまる』姿がなまって伝えられたとされる『がじゅまるの木』。私たちが目指すワンチームで連携のとれた医療に最も合っていると思う」と事業所名の由来を説明する。
「利用者さんのお家に入らせてもらうと、一人ひとりの生活ぶりが見えてくる。あくまで”その人らしさ”を尊重し、信頼関係を築くことができれば、ケアの内容も充実する」と松本さん。慌ただしい日々を送るなかでも、献身的に労を惜しまず交流を図ろうとする。
「ご本人だけでなく、ご家族のケアも必要。始めはつらい顔をした皆さんが、自然と笑顔になる瞬間を見ると本当にうれしい。地域に根差した拠点として私たちが選ばれるよう、幸せの輪が広がっていければ」