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新アニメ化を通してぬ~べ~の魅力を実感。作者の「また5年3組の生徒を守ってやってほしい」の声で奮起ーー『地獄先生ぬ~べ~』鵺野鳴介役・置鮎龍太郎さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

『地獄先生ぬ~べ~』は原作・真倉翔先生/漫画・岡野剛先生による、1993年から1999年にわたって「週刊少年ジャンプ(集英社)」にて連載された人気オカルトコミック。シリーズ累計発行部数2,900万部を誇る伝説の作品です。

鬼の手を持つ霊能力教師・鵺野鳴介(ぬえの・めいすけ)こと「ぬ~べ~」が生徒を守るため、妖怪や悪霊など怪奇現象と闘う姿を描いた本作。1996年から1997年にかけてTVアニメ『地獄先生ぬ~べ~』(平成版)も放送されました。

そんな伝説の作品が26年ぶりに新アニメとして描かれます。初回は、2025年7月2日(水)よる11時15分よりテレビ朝日系全国ネット"IMAnimation W"枠にて2話連続1時間スペシャルとなっています。(レギュラーは毎週水曜よる11時45分より放送。一部地域を除く。)

TVアニメ放送を記念して、鵺野鳴介・ぬ~べ~役を演じている置鮎龍太郎さんにインタビュー。新作の見どころはもちろん、再び作品を演じることになったお気持ちから、平成版アニメや子どもの頃のお話まで、振り返っていただきました。

【写真】『地獄先生ぬ~べ~』ぬ~べ~役・置鮎龍太郎インタビュー

26年ぶりに鵺野鳴介役を演じる意気込み

――26年ぶり(平成版OVA版も含め)のアニメ放送についてのお気持ちをお聞かせください。

鵺野鳴介(ぬ~べ~)役・置鮎龍太郎さん(以下、置鮎):アニメ放送のお話を聞いたのは一昨年ぐらいで、スケジュール帳に「ぬ~べ~打ち合わせ」と書いてあって、「何だろう? 打ち合わせ?」と思いました(笑)。

過去にも真倉翔先生(原作)と岡野剛先生(漫画)と3人で動画対談をやったことがあって、その時は先生のお顔は伏せられて、僕だけ表に出るという謎の感じではあったんですけど(笑)。その動画対談から4、5年経っていたので、「ぬ~べ~打ち合わせ」は何のことかわからず、お話を聞いてみると今回の新アニメ化という内容でした。

打ち合わせの時には、先生方はいらっしゃらなかったんですけど、新たに映像化するにあたり、先生から「また5年3組の生徒を守ってやってほしい」というメッセージをいただきました。それまでも「またアニメ化、映像化しないかな」とか、どんな形でもいいので「また、ぬ~べ~に声をあてたいな」という気持ちはずっと持っていたので、やる気は充分にありましたが、先生からのメッセージをいただいて、さらに気持ちは高まりました。

時折、いろいろな作品で扱ってもらって『地獄先生ぬ~べ~』の映像が出たり、(集英社が発行する漫画)ジャンプ系のお祭りゲームに出演はしていたんですけど、『地獄先生ぬ~べ~』単体の作品、映像化としては相当久しぶりだったので嬉しくもあり、先生のメッセージもすごく感動して、ありがたいなと思って、お受けさせていただきました。

――そういった経緯があったんですね。

置鮎:アニメのアフレコ収録が始まる前の連載30周年の時にYouTubeでWebCM(ぬ~べ~30周年大感謝祭)を収録することになったんです。それは以前のアニメ(平成版)で、ぬ~べ~の声を担当していた者がWebCMをナレーションするということで、僕のテスト録音的なことも兼ねていました。

今回映像化するにあたり、僕の今のコンディションをみなさんに知っていただくためのオーディション的な録音だったんですね。そこからしばらく時間が空いて、アニメの第1話の収録でした。

――そのオーディション的な録音はいかがでしたか。

置鮎:オーディションというわけではないんです。オファーは来ているけど、「今の僕の声を聞いてほしいな」という感じで、自分からお願いしました。自分では変わっていないつもりでも、29年前のTVシリーズの初期の声とは全く変わっているし、口内環境も変わっているし、響きもかなり変わっていて少し低音化しているので、あの時の声の感じではないですよね。でも役を演じることは問題なく、自分ではできるつもりというスタンスでずっといました。

WebCMは短いコメントではありましたが、緊張しました(笑)。まだ、その音声がWeb上にあるかもしれません。

置鮎さんが感じる 変わったところと変わっていないところ

――今回の作品で久しぶりに鵺野鳴介を演じられて、改めて感じたところはありますか。

置鮎:平成版の収録前半は、自分もまだまだ若手だったり、TVシリーズでは初めて主人公をやらせていただくという気負いがあったり、「頑張らないと!」いう気持ちが先行していたような記憶があります。後半は「子どもたちを守る」という方向にしっかり気持ちが向いていたんじゃないかと思っています。

今回も役作りとして、何も考えずに、「ただ子どもたちを守る」ということだけを念頭に置いて、収録スタジオにいるという気持ちでした。

――平成版と令和版で変化したことはありますか。

置鮎:自分の声音そのものが低音化しているので、低いところが出がちなんですが、そこはあまり出さない方がいいなと思っています。子どもたちと接しているシーンの時は、低いところがあまり出ないんですけど、今回はシリーズ全体を通して、ホラー色に寄せたいというスタッフさんたちの意図があり、そういう時は低い声色も出さなくてはいけません。

ただ、あまり低い音にして怖すぎるのもどうかと思うので、キッズが見てもちょっと怖いぐらいの感じがいいかなと。それでいて、大人が見ても怖いと感じる要素もあった方がいいので、そのバランスが難しいなと思いました。テクニカルなところで少し意識はしていますけど、気持ちとしては特に変化はないです。

アニメーションとしては、実際に違うところもあります。平成版はセル画で作られていて、今は完全にデジタル移行されているので、そこが大きな違いですね。ご家庭のTVの環境や画角も違っていますし、そういう具体的なところは違います。

――今作は現代のアイテムも登場しますね。

置鮎:特に原作と令和版との差異を比べたりはしていないんですが、携帯電話やタブレット端末も出てきて、現代風になったところも随所に見受けられます。その辺はあえてピックアップはしていないので、作品として自然に溶け込めるようにはなっていると思います。

――逆に作品らしい、変わらないと思うところはありますか。

置鮎:鵺野鳴介というキャラクターの貧乏でいつもお金がなくて、律子先生がずっと大好きというところは、描かれ方として変わっていません。その辺りは演じていてフリーで任されるところもあって、楽しくもあり、難しくもあり(笑)。ぬ~べ~の中でも一番楽しく描かれているところなのかなと思います。

――フリーというのはアドリブ的なものですか。

置鮎:本当に気持ち程度ですけどね。「ここは遊んでいいよ」とお任せされたシーンは、僕だけではなくて、生徒たちもあります。

――鵺野鳴介のキャラクターについて、改めて感じた魅力をお聞かせください。

置鮎:平成版では自分でもあまり意識していなかったんですが、後半につれて「子どもたちを守る」という意識が高まっています。

他の方にもよく言われますし、今作のキャストの中にも、平成版を当時リアルタイムで見ていた方がたくさんいらっしゃって、「ぬ~べ~が好きで、鵺野先生が大好きで、あのクラスに入りたかった!」ということを言われるんですけど、「へぇ~、そうなんだ~」と客観的に捉えていました(笑)。そんなふうにみんなが思ってくれていたんだなぁと……当時は誰からも言われませんでしたけど(笑)。

当時はインターネットもなくて、ユーザーさんからのご意見がなかなか届かないまま、僕たちは放送するにあたって、アフレコ収録に参加していました。当時は「ジャンプフェスタ」もないし、読者や視聴者の方と接触する機会がまるでなかったんですよね。

その後、当時の視聴者だった方々が仕事を始めるようになり、お会いする機会ができた時に「ぬ~べ~見てました!」、「ぬ~べ~が大好きでした!」、「5年3組に入りたかったです!」というようなコメントをたくさん聞いて、「そうなんだ。ありがとう!」と知りました。

そういった機会が増えたことや今回の映像化にあたって、改めて言われる機会も増えましたし、当時いろいろな方がぬ~べ~を愛してくれていた、魅力があったんだなと再認識しましたね。

アフレコ収録現場で、誰も触っていない空気清浄機が動き出す?!

――アフレコ収録の現場の雰囲気についてお聞きします。平成版と令和版では置鮎さんの年齢も変化しているので、収録現場でのポジションも違いますか。

置鮎:平成版のアニメーションは、共演者が藤田淑子さん、冨永みーなさんといった先輩の方もいらっしゃいました。自分もまだ20代でしたし、中には同年代もいましたけど、とにかく自分は若手の方でした。今回の作品は、当時よりも世代は上なんだけど、僕よりはみんな世代が下です。森川さんだけは変わらずに、いつも年上という感じですね(笑)。

そういったポジションの違いはありますけど、作品に関わっていない期間も役を演じる心づもりはずっとできていたつもりでしたし、気持ちが途切れていなかったので、収録に際してもそんなに怖いこともなかったです。ただ、初めて収録をご一緒する方もいらしたので、「みんなと馴染めたらいいな」という感じでいました。

――『AnimeJapan 2025』のステージイベントでは、置鮎さんがチームを引っ張っていっているように感じました。

置鮎:アフレコ収録は去年の夏から始まっていて、キャスト発表のタイミングやステージの時は、半年以上経っていたので、かなり打ち解けていました。

演じることに関しては、ずっと自分も役作りをやっていたんですけど、もちろんみなさんもプロなので、短期間で役作りを終えて、ステージイベントの頃はメンバーともすっかりなじんでいる時期だったので、僕がチームを引っ張るというよりも、みんなで作っていっている感じですね。

――演じるキャラクターによって、イメージに合う服装でアフレコ現場に行かれる方もいらっしゃると聞きました。置鮎さんは収録時にはどのようなスタイルで参加されますか。

置鮎:僕は何も構えてないから、けっこうダラッとした感じです。『地獄先生ぬ~べ~』は、特にバトルシーンが多いので、カチッとした格好をして収録するのも大変だし、動きにくい服だと、ノイズになってしまうので、ほとんどスウェットやGパンといったラフな感じで行っていました。

スタジオ環境もありますけど、収録が夏のめちゃくちゃ暑い日に始まったんですよ。しかも、みんなでヒット祈願とお祓いを兼ねたご祈祷をしていただいた後、スタジオに帰って来て、汗だくで「ハァ、ハァ」言いながら始まっていて。

だから、コンディション作りや環境作りをうまく整えないと体調を崩しそうだなと思って……まぁ、すぐに体調がやられちゃいましたけど(笑)。戦闘シーンが多いというのもあって、けっこう大変でしたね。

お当番回(特定のキャラクターにスポットを当てた回)の妖怪に襲われる子どもたち(を演じるキャスト)もそうです。お当番回になると、キャラクターがずっとしゃべって騒いでいるので、大変なんです。

――『地獄先生ぬ~べ~』はオカルトやホラーの要素もある作品ですが、アフレコ現場で起こった印象的なエピソードをお聞かせください。

置鮎:ご祈祷から帰って来て第1話の収録が始まったら、誰も触っていないタイミングで空気清浄機が動き出したことがありましたけど、それが唯一あった霊現象的なことです。実際は違うのかもしれませんが(笑)。

あとは、ご祈祷を上げてくれた神主の方が「ぬ~べ~、当時見ていました!」というお話をしてくれたんですけど、その時はまだ公表前だったので、「発表されるまで秘密にしておいてください」とスタッフさんがお願いしていたことがありました。発表されたのは1年後なんですけどね(笑)。

置鮎さんが感じる作品の好きなところ

――『地獄先生ぬ~べ~』という作品の印象や置鮎さんが好きなところはどんなところですか。

置鮎:鵺野鳴介のかっこいいところは、子どもたちを命がけで守るところ。楽しいところは、貧乏でいつもお金がないのに、生徒たちからご飯をせびられて、ラーメンを食べに行くシーン。平成版ではそのシーンが多いんですけど、今作もね(笑)。あのシーンは和むポイントであり、どんなことがあっても、必ずオチになるんだなと……。みんなが安心すると、ぬ~べ~にたかってくるというのが面白いと思っています(笑)。

今作はホラー面を前面に押し出したいが故の反動でもあると思うんですけど、ちょっとホッとする瞬間を視聴者の方にもお届けしたいということかもしれませんね。

――ラーメンを食べに行くシーンもですけど、ぬ~べ~は生徒たちからツッコまれることも多くて、そんなところが楽しいです。今作でも楽しいシーンがあるんですね。

置鮎:かなりあると思います。そのギャップをうまく活かして演出したいという意図だと思いますね。

――鵺野鳴介先生は5年3組の生徒たちと、とても良い関係性を築いています。置鮎さんご自身が5年生の頃はどんな子どもでしたか。

置鮎:学校は先生によって、クラスのカラーが違ってくると思うんですが、5年生のクラスの先生はけっこう厳しかったですね。公立の小学校なので、羽目を外すわけではないですけど、それでも楽しくやっていたと思います。

――また、今作に登場するキャラクターの中に、当時のご自身に似ているキャラクターはいますか。

置鮎:僕はまじめだったけど、頭がいいわけじゃないし、まぁ普通ですね。作品のキャラクターに当てはめるとしたら、居住まいは(白戸)秀一だけど、頭は(立野)広みたいな感じです(笑)。

――鵺野鳴介先生は普段は気取らず、親しみやすいですが、生徒思いで困ったことがあれば命がけで生徒を守るような理想的な先生です。置鮎さんが思う理想の先生のイメージを教えてください。

置鮎:親身になってくれるという意味では、鵺野鳴介の「子どもたちを守る」に通じるかもしれませんけども、そこですかね。

現代社会だからというわけでもないですけど、いろいろな悩みを持っている子どももたくさんいるでしょうし、そんな悩み事を漏らさず聞いてくれたらいいですよね。昔よりも少子化が進んだということもあるかもしれないですが、本当は個人個人に目を向ける時間は以前よりあるのではないかとは思います。ただ、リアルな問題になると、先生と生徒の距離感というのも難しいですよね。ドラマやアニメーションでもそうですけど、昔の方が先生と生徒の距離感は近かったかもしれないですし。

今の方があまり近づいてはいけないというような雰囲気があるような気がします。この作品の世界では、ぬ~べ~と生徒たちの距離感は特に近いですよね。ファンタジーと言ってはいけないんだけど、夢があっていいなと思います。

――置鮎さんが役柄を演じられるうえで、大切にしていることをお聞かせください。

置鮎:あまり意識はしていないですし、演者の人はたぶんみんなそうだと思うんですけど、役と作品を冒涜しない。まじめに演じるということは当たり前なので、たぶん誰もそんなことは言わないとは思いますけど、そこはみんな念頭に置いているんじゃないかなと思います。それさえしっかりしていれば、演じられるんじゃないですかね。

――今作ならではの見どころや注目してほしいポイントを教えてください。

置鮎:ネタバレになってしまうので、ハッキリとは言いにくいんですが、玉藻やゆきめもそうですけど、平成版の作中にも出てきた『地獄先生ぬ~べ~』といえば「この妖怪! この敵!」という名物キャラクターも出てくるでしょうし、平成版にはいなかったものもいるかもしれません。その辺りはけっこう楽しみですし、かなり怖いと思います。「なるほどね。これを作るんだったら、ホラーに寄せたい」というスタッフの気持ちがわかる描写やエピソードもあったりします。

それから今回のシリーズでは、鵺野鳴介という人物がいろいろな苦労をしながら先生になって、その道を選んだというところも描かれています。まず、鵺野鳴介という男を知ってほしいというところから、ちょっと早めに彼に絡む過去が紐解かれていくかもしれませんし、そうしたいなというスタッフさんの気持ちを聞いております(笑)。

――本作を楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。

置鮎:令和に新映像化ということで、ホラーも楽しさも、てんこ盛りの『地獄先生ぬ~べ~』になっていると思います。「ぬ~べ~のクラスに入りたい!」と言ってくれるお子さんたち、そして当時そういったことを思っていた方々がまたその気持を思い返してもらえるような作品をスタッフ一同、目指して作っておりますので、ぜひご視聴ください。よろしくお願いいたします!

――ありがとうございました!

[取材・文]宋 莉淑(ソン・リスク)

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