子どもに「ネットに法律はないの?」を聞かれたらどう答える 専門家が〔子どもを守る「情報リテラシー」の高め方〕を解説
11月20日の「世界子どもの日World Children’s Day」を前に、長年テレビ局で番組制作に携わってきたコンプライアンスアドバイザー・ 山本一宗氏が、子どもをデジタルタトゥーなどから守る「SNSで注意したいこと」をはじめ、これからの時代を生きていく子どもたちに知っておいてほしい「世の中の決まりごと」について解説します。
【これが実物見本】子どものスマホには「親子間契約書」デジタルネイティブ世代が社会で大きく活躍する昨今、企業や行政までもが有効に活用するSNSでは、さまざまな問題が絶えず起こっています。
「していいこと」と「してはいけないこと」を学ぶ大切さや「これをやってしまったらどうなるか」というリスク予測の大切さは、昔も今もリアルもバーチャルも変わりありません。
ネットの発展により便利さが手軽に享受できる半面、隣り合わせにある誤った認識、危険な行動へ未熟な子どもたちが近づくことがないよう、分別や価値観を子どもたちに正しく伝えるべき私たち大人も認識や行動を問われている時代です。
本稿では、11月20日の「世界子どもの日World Children’s Day」を前に、長年テレビ局で番組制作に携わってきたコンプライアンスアドバイザー・山本一宗氏が、子どもをデジタルタトゥーなどから守る「SNSで注意したいこと」をはじめ、これからの時代を生きていく子どもたちに知っておいてほしい「世の中の決まりごと」について解説します。
この記事は『子どもコンプライアンス』(ワニブックス刊)から一部抜粋・再編集したものです。小学校低学年から学びながら読めるように想定した文章を大人用に改訂しお届けします。
山本一宗
1964年兵庫県神戸市出身。
1988年に讀賣テレビ放送(株)入社。報道記者として神戸連続児童殺傷事件、和歌山毒物カレー事件や金融機関再編などの取材を経験し、その後「THE ワイド」「情報ライブ ミヤネ屋」プロデューサー、「ウェークアップ!ぷらす」チーフプロデューサー、報道局統括デスクなどを歴任。
2019年より放送基準に基づく番組・CMの表現考査、 SNS利用指針作成などに従事。2021年よりコンプライアンス総括責任者(総括役) として社全体の危機管理・考査判断を担当。2023年3月まで讀賣テレビ放送(株)ESG推進局専任局次長。2023年春に読売テレビを退社し、現在は株式会社CompLabo代表取締役を務める。
第2回は、知らない人に“いいね!”やコメントをしない、“子ども”だとわかるような書き込みはしないなど、「SNSで注意したいこと」について、ご紹介します。
「法律」はみんなが幸せに生きるためのルール
Q.「法律」って何だろう?
「法律」って何のためにあるの? ちょっと難しいなぁ。
【A. みんなが幸せに生きるため、命や心を守るためのルールだよ】
なんだか漢字がいっぱい並んでいて、難しそうなものに見えますが、法律は日本で生きるすべての人が幸せでいられるように作られた「ルール」なのです。
国民に守られている自由や資格(権利)、しなければならないこと、してはいけないこと、守らなければならないこと(義務)など、日本の国会で作られたみんなのための約束とルールなのです。
また「法律」のほかに「条例」といって住んでいる街(都道府県・市など)で作られた、その街だけのルールもあります。
当然、みんなのためのルールですから、大人はもちろんみなさんのような子どもも守る必要があります。
逆にまわりの人たちからこのルールに触れるようなことや反することをされて、体や心が傷ついたり、困ったり悩んだりしたときにもまた、「法律」というルールが助けてくれるのです。
インターネットの世界に法律はない?
インターネットは、現実の世界じゃないから法律は関係ないよね?
【A. いいえ、法律違反になりそうなことがいっぱいあるから気をつけて。】
インターネットやゲームにも、現実の世界と同じようにたくさんの法律・ルールがあります。
まず気をつけなければいけないのは、ほかの人が作った絵やイラスト、動画、作文、音楽、自由研究などは「その人のもの」であり、黙って自分のSNSや動画に使ったり、自分が作ったとウソを言ったりすると「著作権法(ちょさくけんほう)」という法律違反になるかもしれません。
図書室にある本や買ってきたマンガも、自分が読むのはいいけれど「面白いからみんなに教えてあげたい!」と本の写真やコピーをネットやSNSでみんなに見られるようにするのはアウト。
ネット上で見かける有名なアニメキャラのイラストやテレビで放送された動画なども「公式サイト」でないものはこの「著作権法」に違反したものが多く、ネットから勝手にコピーしてアップするのもダメなのです。みんなやっているから……は通用しないのです。
ほかの人のIDやパスワードを知ることも勝手に使うのもダメですし、SNSやゲームのチャットでは子どもが狙われる事件もおきています。
ゲームやネットだからこそ知っておかなければいけない、大事な法律もたくさんあることを知っておいてください。
Q.SNSで友だちをぼしゅうしてもいいの?
SNSをきっかけにした「事件」の話をときどき聞くけど、何に気をつければいいの?
【A.「子ども」だと分かることや「友だちがほしい」などと書かないことが安全の第一歩。】
SNSでは、子どもがいろいろな「事件」に巻き込まれることが実際におきています。ネットの世界には「子ども」をねらった悪い人が意外にたくさんいる……ということを知っておいてください。
子ども、とくに小学生など未成年の女の子が SNSに年齢や学年、性別を書いたり「さびしいから誰か話を聞いて」などとコメントしてしまうと、途端にたくさんの人からメッセージやコメントがきてしまいます。
優しそうな人と最初は楽しくやりとりしていても、だんだんエッチな話をしてきたり、悩みを聞くから実際に会おうといわれたり、会ってみたら暴行を受けて心や体に傷をおってしまったり……というように「犯罪」の被害者になってしまうこともあるのです。
ネットで、そのように優しく近づいてくる大人に本当に優しい人はいない! と思っておくほうが、命や体を守ることにつながるのではないでしょうか。
SNSの「友だち」は自動で追加せず会ったことがある人だけにする、自分のIDやQRコードはほかの人に渡したりネットにあげたりしない、知らない人にいいね! やコメントはしない……などルールを決めることも大事だと思います。
イラスト/どんぐり。