実はモスバーガーの時代なんじゃないか? もはや他社比で「高品質・高価格」ではなく「高品質・通常価格」説
おや、モスで新商品が出たのか。通りがかったモスバーガーの店先に、11月12日からの新商品の登場を告げるポスターが貼られていた。アボカドと、黒毛和牛か。
ちょうど腹も減っていたのだ。ようし、今日はモスにしよう。それにしても久しぶりだなぁ。そもそも年単位でモスに来ていない気がする。
【写真】ハンバーガーと一緒に注文した「ブロッコリーとじゃがいものポタージュ」
・値段
なぜ私は、こうもモスらないのか? 考えると、理由はシンプルだった。高いイメージがある。
私みたいなおじさんは、2010年とかくらいのころの記憶と2025年の記憶における、主観的な時間の経過が曖昧だ。例えば「ガンダム00」とか、つい先日放送されたようなもんだと思ってますからね。
ゆえに当時のマックの、令和の物価からすれば驚異的な価格破壊みを感じるビッグマック約300円みたいなイメージの影響を、未だに引きずっている。
ビッグマックがもはや約500円なことは把握していても、マック = 安い という印象は残ったままなのだ。植え付けられたイメージが、常に認識された実態に沿って変化するとは限らない。ゆえにイメージ戦略というのは重要なのだろう。
そしてモスのイメージは、品質は良いが、業界の覇者マックよりだいぶ値段が高いみたいな、そういう感じ。
滅多に来ないので令和のモスのリアルな商品価格を把握していなかったが……目当ての「アボカドバーガー」は570円か。マックの「トリチ」と大差ないじゃないか。
もう1つの「黒毛和牛のダブルチーズバーガー」は890円と高価格帯だが、これは明らかにスペシャル枠なので、そういうものだろう。
今日はこの2つのバーガーに加え、同じく新商品だという「ブロッコリーとじゃがいものポタージュ(380円)」も試してみることに。
注文後に初めてモスの恒常メニューを見てみたが、モスは500円くらいを主力に勝負している感。
なんだかんだで、マックと一緒やんけ。まあ、私がIQを3くらいまで下げれば、「マックのハンバーガーは190円!! マックは190円で勝負してるゥゥウウウ!!!!」みたいな、現実を見ない愚かな解釈もあり得るかもしれない。
しかし、マックで190円のハンバーガーを1つだけ食って満足できる成人がいるのかって。グミだけ食って生きてる郊外在住の港区女子じゃないんだから。
リアルにマックで一食済まそうと思ったら、500円台の「炙り醤油風ダブル肉厚ビーフ」とかを2個に、サイドとドリンクを付けて1500円コースだよ。
いや、それだって控えめな話だ。真に己に正直になれば、理想のボリューム感は「倍ビッグマック」と、追加でその時の新商品にポテトとドリンクのLサイズセットさ。
君らだって、最近のストリートファイターコラボにおける、マックに対する最も本質的な不満は、「トリチ」を「倍トリチ」にできないことだったんじゃないか? いいから850円くらいで「倍トリチ」させろよとか思っていたのだろう?
そして、そうやって焦らされたメタボ欲求が限界を迎えたら、バーガーキングに駆け込みバカデカい2000円のバーガーで己を癒す生き方をしているのだ。それが現実じゃないか。
結局、実態としてはマックがそんなに安くないことを知りつつ、しかし随分と前に植え付けられた「安い」というイメージを抱えたまま、何だかんだで高価格なラインで腹一杯になっていたんだよ。
もはや、マックとモスに価格の差は無いに等しい。細かい商品の値札だけ見れば、マックは極めて僅かに安いかもしれない。しかし実際に満足に至るために必要な値段を見れば、もはや同価格帯っすわ。
・モスの時代
そんな気付きを得ながら待っていたら、注文が用意できたもよう。さっそく持ち帰って食べよう。初手は言うまでもなく黒毛和牛。箱入りかと思ったら、箱の中でさらに紙に包まれていた。厳重だ。
ぱっと見は普通のダブルチーズバーガーだ。
しかし、何だいこいつは。いい匂いがするぞ……? あぁ、このパンの香りだ。
公式HPによると、プレミアムバンズというらしい。これは開封から0.1秒で、バンズが違うと分かる。そういうレベルで香り立っている。いいね。
構造をチェックしよう。まずは何やら、赤茶色のソースか。玉ねぎとトマトがメインのような匂いがする。
間に肉とチーズがあり、最下層はマヨネーズだろうか。
食べると、このソースが良いな! 玉ねぎとトマトは香りのとおり。味がピリッとするのだ。しかし辛いというほどではない。酸味も効いている。
BBQソースから甘さと粘度を下げ、玉ねぎとトマトのフレッシュ感とスパイスのリアルな刺激をアドしたソースみたいな、そういう方向性を感じる。これは肉に合うだろう。
パティも悪くない。謎のたんぱく質の板ではなく、ちゃんとビーフを感じられる。800円の黒毛和牛バーガーとしては、十分なクオリティだと思う。
そしてチーズだ。見た目にも味にも、チェダーチーズがメインなのは間違いない。何にせよチェダーの濃厚なコクと、溶けやすく、他の具材とよく絡む性質がうまく活かされている。
美味い。美味いぞ。私は好きな味だ。よくわからないがとりあえず美味いバーガーではなく、何からできているのか分かるし、ちゃんと美味いバーガーになっている。素材の活かし方が巧みだ。
「黒毛和牛のダブルチーズバーガー」は満足のいくものだった。しかしモスバーガーそのものに対し、私により好印象を抱かせたのは「アボカドバーガー」のほう。
ちゃんと野菜が、野菜してるじゃないか。この手のバーガーの野菜なんて、ソースまみれでよくわからなくなったキャベツだかレタスに、そのカッティング技術にこそ驚愕はあれど、良さは限りなく減衰した状態にある極薄トマトみたいなのが常だろう。
まあ野菜は往々にして高いものだし “バーガーチェーンのバーガーは、そういうものである” みたいなラインでの納得はあるのだけれど。ジャンクフードがジャンクフードであるがゆえの免罪符。
しかしこの「アボカドバーガー」。レタスが生命を感じさせる緑色だし、トマトはトマトの尊厳を維持できる厚みと張りを有している。
野菜を野菜のまま提供しようという姿勢を感じる。そしてアボカドだ。ゴロっと入っているのが良い。ちゃんとアボカドを味わえるスタイル。
バーガーを食って、それなりに野菜を食べた気になれるのは、素晴らしいことだ。パーフェクトではないかもしれないが、ジャンクフードで1食を済ませてしまったというような罪悪感は薄い。
モスバーガー。昔からミートソースは印象的ではあったが、でも高めだしな……自分は品質より低価格であることを重視しますわ……という想いが常にあった。
しかし2025年のバーガーチェーン界隈のクオリティ対価格比的に、もはやモスは高品質・高価格ではない気がする。高品質・通常価格なのでは。つまり高コスパ。
なんとなく新商品を食べに久方ぶりにモスったら、物価上昇が良い方向に働き、相対的にモスの時代になっている説を感じた。
参考リンク:モスバーガー
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.