生涯現役時代!老後の「無理のない働き方」でいくら稼げる?
かつては学校を卒業後40年近く一つの会社で勤め上げ、定年退職して退職金を得れば、あとは年金で悠々自適…という時代がありました。
しかし現代はそのような人生を送ることは困難で、引退後も「無理なく働く」ことが一般的になりつつあります。
「生涯現役時代」にどう向き合う?
「生涯現役時代」この言葉を聞いて、あなたはどのような感情を抱くでしょうか。
「老後もまだまだ社会で活躍できる、素晴らしいことだ」と前向きに捉える方もいれば、「死ぬまで働かなくてはならないのか…」と、暗澹たる気持ちになる方もいるはずです。
経済的な側面だけを見れば、「生涯現役時代」は厳しい時代です。かつて、親世代が享受したような「悠々自適な老後」というモデルケースは困難なものになりつつあります。
公的年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられ、支給額への不安も尽きません。2019年に「老後2000万円問題」が取り沙汰されたときのように、「年金だけでは暮らせないから、働かざるを得ない」というのが、多くの人の本音でしょう。
特に、体力や集中力が若い頃と同じではないことを自覚し始める40代以降の方にとって、「老後もずっと働き続ける」という事実は、重いプレッシャーとなり得ます。
しかし、キャリアコンサルタントでもある私としては、この「生涯現役時代」を「経済的な必要悪」として片付けてしまうのは、あまりにもったいないのではないかと、常々感じています。
視点を変えれば、そこには現役時代とは異なる、新しい豊かさが隠されていると思うからです。
これからは、「お金が続かないので、老後も働かざるを得ない」という義務感から、「老後も無理なく働くことで、人生の張り合いと経済的なゆとりを生まれさせる」という前向きな考え方へ、物事を捉え直す必要があるのではないでしょうか。
老後の「無理のない働き方」で、実際いくら稼げるのか
では、老後の「無理のない働き方」とは、具体的にどのようなもので、いかほどの収入が見込めるのでしょうか。
老後においての「無理のない働き方」とは、個人によって大きな幅があるものですが、ここでは週2~3日、あるいは1日4~5時間程度の短時間勤務を想定します。
1週間にすると20時間程度の勤務となり、体力的な負担が少なく、重い責任やノルマから解放された働き方です。
東京都の最低賃金(2025年10月現在で1226円)を基準に考えると、シニア層を積極的に採用している職種では、時給1250円~1600円程度が現実的な相場となります。
具体的な職種と月収例をいくつか見てみましょう。
ケース1:マンションの管理人(日勤・短時間)
仕事内容:受付、簡単な清掃、巡回、業者対応など
時給目安:1250円~
働き方:週3日、1日5時間
月収例:時給1,300円×5時間×12日=月額78,000円
(特徴)比較的体力の負担が少なく、自分のペースで働きやすいのが魅力です。
ケース2:スーパーやコンビニの短時間パート
仕事内容:レジ、品出し、清掃
時給目安:1250円~1400円(早朝・深夜は割増あり)
働き方:週3日、1日4時間
\月収例:時給1300円×4時間×12日=月額62400円
(特徴)地域社会との接点があり、「ありがとう」と直接言われる機会も多い仕事です。
ケース3:軽作業(倉庫内ピッキング、梱包など)
仕事内容:リストに基づいた商品の仕分け、梱包、検品
時給目安:1300円~1400円
働き方:週2日、1日6時間
月収例:時給1300円×6時間×8日=月額62400円
(特徴)接客が苦手な方でも、黙々と自分の作業に集中できます。
ケース4:シルバー人材センターで斡旋される仕事
仕事内容:公園や公共施設の清掃、駐輪場管理、簡単な事務補助など
収入形態:「配分金」と交通費など(時給換算で1000円~1200円程度が目安)
働き方:週2~3日、1日4時間程度
月収例:1日4500円×10日=月額45000円
(特徴)地域の社会貢献的な意味合いが強く、無理なく働けるよう配慮されています。
上記の通り、一般的に「無理のない働き方」で得られる収入は、月額5万円~8万円程度が一つの目安となります。
現役時代にフルタイムで働き、大いに稼いでいた方にとっては「たったそれだけか」と思う収入額かもしれません。しかし、この「月額5万円~8万円」が老後の家計に与えるインパクトは絶大なのです。
例えば、年金収入だけでは毎月5万円の赤字だった家計が、月6万円の収入を得ることで、毎月1万円の黒字に転換します。これは、貯蓄を取り崩す生活から、貯蓄を維持(あるいは微増)できる生活へと変わることを意味します。
この経済的な安心感が、「たまには孫におこづかいをあげよう」「少し贅沢して美味しいものを食べに行こう」といった心のゆとりにつながります。
なお、65歳以上の方の場合、「在職老齢年金」の制度により、給与と年金の合計月額が51万円(2025年度現在)を超えると年金の一部がカットされる場合があります。
しかし、上記のような月額5~8万円程度の働き方であれば、基本的に「働き損」になる心配はないと言えるでしょう。
「働くこと」が「喜び」につながる仕事をしよう
現役引退後も働くことによる経済的安定は確かに重要ですが、せっかく現役時代のプレッシャーから解放されたのですから、老後の仕事は「お金のためだけ」であってはもったいないのではないでしょうか。
本来、『働くこと』は『楽しいこと』であるべきだと、私は考えています。
セカンドキャリアの仕事選びは、現役時代とは価値観を大きく変える必要があります。重視していくべきは「お金の満足度」ではなく、「心の満足度」です。
では、その「満足度」はどこから得られるのでしょうか。3つの視点をご紹介します。
1.「経験」を活かす視点
現役時代に40年近く培ってきたスキルや経験、人脈は、他ならぬ財産です。経理や総務、営業、専門技術などを長期にわたり担当していたのなら、そのスキルを求める中小企業や個人事業主は必ず存在します。
例えば、週に1度だけ訪問して経理のチェックをする、若いスタッフの相談役になる、といった「顧問」的な働き方を、知り合いを通じて探してみるのはいかがでしょうか。
このようなコンサルタント的な働き方は時間あたりの給与も高く設定されやすく、何より「頼りにされている」という強い自己肯定感を得られます。
2.「好き」を仕事にする視点
現役時代は忙しくてできなかった趣味を、少額でも収入の得られる仕事にしてみるようチャレンジするのも素晴らしい選択です。
ガーデニングが好きなら、ホームセンターの園芸コーナースタッフや野菜などの直売。料理が好きなら、地域の料理教室のアシスタント。パソコンが得意なら、シニア向けのスマホ教室の講師など。
収入は前述のパートタイムと変わらないかもしれませんが、「好きなこと」に没頭し、それが誰かの役に立って賃金になるという経験は、お金以上の喜びを与えてくれるはずです。
3.「社会貢献」を実感する視点
大きな儲けにはならなくとも、「誰かの役に立っている」「社会とつながっている」という実感が、日々の張り合いになる仕事もあります。
シルバー人材センターでの地域の美化活動や、学童保育での子供たちの見守り、図書館での本の整理など。
こうした仕事は、私たちに「社会的な役割」を再認識させてくれます。
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現役引退後の働き方は、「義務的な労働」だけではありません。収入を年金だけに頼らない経済的安定を確保しつつも、それ以上に「社会的な役割」「自己肯定感」「日々の張り合い」を得るための、人生の新しいステージです。
「働かされている」のではなく、「自ら選んで働いている」「好きなことを通じて、稼ぎを得ている」と実感できる、主体的な意識の転換こそが、長く続く老後を豊かに楽しく生き抜くための、きわめて大事なポイントになるのではないでしょうか。
【執筆者プロフィール】
山田圭佑(KYお金と仕事の相談所所長)
キッズ・マネー・ステーション認定講師、国家資格キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナー技能士2級・AFP、琉球古典音楽野村流伝統音楽協会歌三線師範、八重山古典民謡保存会歌三線教師
東京都出身。大学入学と同時に沖縄県へ移住。大学卒業後、沖縄県庁にて18年間奉職した後にキャリアチェンジ。現在はフリーランスのキャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー・歌三線師範として幅広く活動。2022年7月に「KYお金と仕事の相談所」を開設。所長を務めている。
(ハピママ*/キッズ・マネー・ステーション)