北海道の地元野菜でオリジナルのお惣菜も…女性野菜ソムリエがおいしさの「架け橋」に
優秀な野菜ソムリエを決めるアワードで、北海道内で唯一ファイナリスト12人に選ばれた女性がいます。生産者と農家をつなぐ活動に密着しました。
地元で採れた新鮮な野菜だけで作った惣菜が並んでいます。
北見市で野菜と総菜を販売する店「コローレ」。
林菜々子代表(46)がオリジナルのレシピで作るお惣菜は、『こんな食べ方あるんだ』という発見があるのが魅力です。
週に3日開いている店ですが、開店早々集まってきたお客さんたちの目当てはランチパック。
栄養満点の総菜4品を選んでお値段は700円です。
「新鮮な野菜が手に入るのと、料理の方法も教えてくれるので近くにできてよかった」
「この歳になって健康に興味があり勉強になる。体にもいいのですごくありがたい」
お客さんはすっかりお店と林さんの「ファン」です。
林さんは、合格率およそ35%の「野菜ソムリエプロ」の資格を持っています。
野菜ソムリエとは、野菜・果物の知識を身につけ、その魅力や価値を社会に広めることができるスペシャリストのこと。
「野菜を食べるのが好きで、野菜や果物の知識を勉強したいと思って。たまたま資格があるというのを知り、興味本位で応募したんです」
「食べ方がわからない」へのアドバイスも
そう話す林さんのこだわりは、生産者の元へ直接行き、新鮮な旬の野菜を選んで販売することです。
この日は、長年取引している大空町のレタス農家の元へ。
農業を始めておよそ45年の江口美世司さん(66)と、長男の龍一さん(38)。
江口さんが収穫しているのは、スーパーであまり見かけない「ロメインレタス」です。
珍しさから「どのように食べればいいのかわからない」という客の声が林さんのもとに届いていました。
そこで林さんは農家の江口さんにこんな提案。
「どうやって食べたらいいのとなってしまう。豆腐を使ったドレッシングを作って出したりとか」
農家から野菜の正確な情報を聞いて客に伝え…客からもらった味の感想を生産者に伝える。農家と客をつなぐのが林さんの役割です。
江口ファームの江口美世司さんは「評価ももらって、自分がまた作物を作るための勉強にもなるしエネルギーにもなる」と話します。
あま~いパプリカ!食べられなくなる…?
林さんのお店「コローレ」でも人気のパプリカ。
甘みが強いのが特徴です。
このパプリカを作っているのは訓子府町の齋藤邦子さん(70)。
でも、子どもたちは農業を引き継ぎません。
24年前に持っていた大部分の農地をすでに他の農家に売りに出し、現在はハウス1つで野菜を作っています。
「やることやった。もう目いっぱいやったっていう感じ」
両親の時代と合わせて80年ほど農業を営んでいましたが、自分の代でやめることを決意しました。
「今の若い人は、もともといろんな知識を持っているだろうから、北海道のものを残してほしいと思う、私たちは。いいところだから」
道内では、1990年におよそ9万の農家や法人がありましたが、去年にはおよそ3割の3万2000まで減少しています。
高齢化や労働力不足、そして農産物価格の低迷などが離農に拍車をかけます。
長男が農業を引き継いだ大空町のレタス農家の江口さん。
GPSやドローンを導入し、より効率的に野菜を作れるよう試行錯誤をしています。
直接販売をしているので、物価上昇分は価格に上乗せできていると言います。
父親から代表を受け継いだ江口龍一さん(36)は、「自分で取り引きすることで評価されたり、おいしいと言ってもらえるのが一番やりがいを感じる。悪いところも指摘してもらえるので、それが勉強になる」と今のやりがいを実感しています。
野菜ソムリエプロとして農家とも消費者とも向き合う、コローレ代表の林菜々子さん。
「作っている人にしか分からない苦労を私たちが知る機会がほとんどなくて、話すからこそ気付かされることも結構ある」と話します。
だからこそ、地元の野菜がどんな思いで作られているのかも含めて伝えることで、地元の人が、おいしく食べて地元の野菜を守れるきっかけを作っていきたい。
「地元の人が地元のものをたくさん食べておいしいと思ってもらえるよう手伝いたい」
「架け橋」として、林さんは自分の役割をそう考えています。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年11月25日)の情報に基づきます。