【高知グルメPro】コシと小麦の香りあふれる麺の一本一本に愛と情熱が込められたうどん「四万十うどん工房 麦屋」食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記
四万十市郊外の樹々に囲まれたうどん屋は、11時開店と同時に、次々とお客さんが入っていった。
店頭には、こんな事が書かれた木板が、さり気なく置かれていた。
「麦屋のうどんは、いつでも大量にできるわけではないのです。その日その日の天候や素材の状態により、全く作らない日もあるのです。
ですから私たちは、いつもいつも大地や空気や水たちと相談しながら、ひとつひとつていねいに心をこめて、コネて練って踏んで寝かせて、もっと寝かせてウンと踏む。そして延ばし切り打ちゆで上げる…後略」
愛に溢れた宣言である。
店の名は「四万十うどん工房 麦屋」という。
うどん工房とつくように、隣接したうどん工場直営のうどん屋なのだ。
店はセルフ方式で、冷たいうどんか温かいうどんかを宣言し、うどんをもらったら、自分で天ぷらや揚げ物を選び、自らつゆをかけ、薬味を乗せて完成する。
これは様々試したい。
店頭の誠実さがにじむ文章を読んだからには、色んなタイプを食べなくてはいけない。
そんな使命感のもとに、「冷やしぶっかけ」、「釜揚げ」、「カレーうどん」を注文した。
まずは「冷やしぶっかけ」である。
厨房内の店員から、丼に入れた冷たいうどんをもらい、冷たいぶっかけ汁をかけ、天ぷらなどを選ぶ。
全国にセルフうどん屋は数多くあれど、この冷やしぶっかけ汁を自分でかけることができる店はほとんどない。
その理由は、濃いぶっかけ汁をお客さんがかけると、かけすぎてしまって、コストがかさむせいである。
だがここは、好きなだけかけてください、という姿勢が嬉しい。
カレーと釜揚げができる前に、食べる。
コシが強い。
表面はふわりとしているのに、噛めば、35回ほど噛んでようやく消えていく、強靭なコシである。
噛む回数が多いので、小麦の甘い香りが押し寄せる。
これは、いいうどんである。
次に「釜揚げ」といってみた。
温められたことによって、甘い香りが膨らんでいいい。
気分が暖かくなる釜揚げうどんである
「カレーうどん」は、出汁のうま味に頼りすぎておらず、カレー単体で魅力を出そうという意志がある。
少し辛く、カレー自体の香り高さに引き込まれ、箸がとまらない。
この熱々カレーに、冷たいうどんをさらにもらい、熱い汁につけてたべてもおいしい。
おすすめである。
このうどんのコシと香りの魅力を知ったら、もう抜け出せない。
開店早々、お客さんが押し寄せるわけである。
食後に、この店を経営する「毛利製麺」社長、毛利仁人さんにお話を伺った。
麺を作り、様々な店舗に卸しているそうだが、四国外が多く、50軒ほどと取引があるという。
多いところだと、1ヶ月で約5000食を卸しているという話から、「もっと販路を広げていこうという計画はあるのですか?」と聞いてみた。
社長は語る。
「うちの特徴は、小ロットで細かな注文にも対応できることが強みなんです。ですから安いのを作ってくれ,小麦はなんでもいいからはお断りしています。卸すお店自体が、こだわりを持っているお店とお付き合いさせていただいています」
まず、うどんの質なのである。
そのうどんを愛して使ってくれる店が優先なのである。
聞けば、冷凍うどんや安く仕上げるうどんというのは、大量に作らなくてはならないため、寝かせる時間が短く、コシが出ないので、タピオカなどのデンプンいれてコシを出すのだという。
そのためプリっとした感じと、見た目が透明感のあるうどんができるのだという。
つまり、小麦粉のグルテンが決着してないため隙間ができ透過性が高まるのだ。
「うちは品質にブレがない、きたほなみという小麦を使い、練ってから鍛えて、一日寝かします。だからコシが出る。伸びにくいうどんができるのです」
そう言って、毛利社長は目を輝かせた。
いい商いは幸せを生む。
一本一本に情熱が込められているからこそ、このうどんを愛する人たちが増え続けているのだろう。
高知県四万十市佐岡541「四万十うどん工房 麦屋」にて