ウェルビーイングに邁進 山梨町長、新春インタビュー
本紙では新年を迎えるにあたり、山梨崇仁葉山町長に恒例の新春インタビューを行った。きょう1月1日に迎えた町制100周年に向けたこれまでの取り組みを振り返るとともに、新年の抱負について語った。(聞き手=本紙編集長・香西孝哉)
--町政運営4期目に突入しています。これまでの成果と課題をどう捉えていますか。
「人とのつながりが広がったと実感している。この1年間は全国若手町村会の会長、神奈川県町村会の副会長を任され、国の官僚や地方の知事をはじめ、いろいろな行政職の人とつながり、仕事の進め方などを多く学んだ。私が不在でも役場の職員が自立してくれることを目標にもしていたので、外交的な仕事を広げることができた。町の外に出ることが多く、町民の皆さんにはなかなか会えなかったが、イベントなどに顔を出すと、いつもの面々に加え、新しい顔ぶれがあり、まちの変化もダイレクトに感じられて本当に楽しかった」
--町民主導で100周年記念事業が多く行われ、3月まで続きます。
「これまでに100を超えるイベントが行われ、延べ2万3000人の方が参加している。私もそうだが、『みんな』がつながったんじゃないかと思う。役場の職員が町民とつながる多くの機会が持てて良かった。これだけの記念行事が地域住民の手によって行われるというのは聞いたことがない。演劇『グレイッシュとモモ』など、福祉文化会館が満席になるような企画もあった。昨年の初めに『町民の皆さんで盛り上げていただきたい』とは言ったが、想定をはるかに超えてくれた。町民の皆さんがこれだけしてくださったことで役場も私も葉山がひとつになれる大きな自信になったと思う」
--このうねりを次にどうつなげますか。
「よく『レガシーを』と言われもするが、私は記念事業は人の心に残り、反省点について次にうまくいくように正すという風になればいいと思っている。一例で言うと福祉文化会館の老朽化をどうしていくかということを100周年で大きく課題意識をもっているので向き合っていきたい。具体的には使えなくなっている座席の交換。また、築37年経っており、音響と照明が従来のイベントだと問題なかったが、今回行われた演劇では、やりたいことができないということがあった。やはり文化を守る意味では大事なホールだと感じたので、お金をかけて対応してあげたいと思っている。町民の方には『100周年できれいになったね』と思い出話をし、アーカイブとして残れば、それがレガシーなのかと思う。また、昨年はいろいろな場所でイベントなどがあって、その情報を媒介することの価値、意義に気付いた。町のホームぺージやLINEを使って町民の方の活動を支えるということは今後も続けていきたい。そういう役場が持っている機能をさらに充実させていくことが、我々が100周年で得た、次にやらなければならないことなんだと思う」
葉山の魅力を伸ばしていく
--民間不動産会社の「住み続けたい街ランキング」で3年連続日本一になりました。葉山の魅力とはなんでしょう。
「地勢的には西向きで、山に囲まれてビーチの変化が遠くに感じられる。波や風が直接入ってこない。こうした地勢的なものが1番。また駅がなく、落ち着いた土地を好んで住んでいる。だからいい人がいるという葉山の土台。治安の面でも安全でもある。刑法犯の認知件数は神奈川県で1、2位を争うほど少ない。住んでいる人が新旧関係なくいつでも知り合いとして暮らしていけるまちだからこそ安全で安心していられる。それは子育てにも影響していて、子どもが夕方まで遊んでいても心配しないでいられる。これはまちのすごい強みでもある。人々が近すぎず、離れすぎない絶妙な距離感をみんなが分かっている。また都心からも近いという距離の良さもある」
--目指すウェルビーイング(個人や社会の良い状態)なまちとは。
「ウェルビーイングという掛け声のもとであっても、行政としてやるべきことは従来とあまり変わらないと思っている。ただ、今まで行政があまりタッチしてこなかったが、暮らしやすさの上でどうしても必要だという分野。これまでは医療や介護、子育てなどを福祉分野としてきていたが、公共交通での移動も法に則った福祉分野的に大事なこと。また、議会でも話題になったが、空き家の活用や民泊開発など、法律通りにやるというよりも、地域と一緒にまちを作っていく仲間たちなんだという、これまで行政にあまりなかった視点。今までは事業ごとの縦割りだったが、地域が幸せであるためにどうしたらいいかという目線を掲げることで、『こなす』仕事ではなく、『ウェルビーイングになるにはどうしたらいいか』と、今までより一歩強く出たり、自分の意見を言う機会が増えてくると思う。例えば、民泊利用者のマナーの問題。本来町役場は手を出せないことだが、ウェルビーイングとして考えると住環境が大前提なので、民泊を推進する法律や保健所のやれる規制範囲を乗り越えて、地域の声を伝えるために踏み込んでいっていいのではと思う。越権かもしれないが、地域の声をぶつける権利はあると思う。今まで法律的に、また権限として手が出し辛かったことに対して、はばからずに地域と一緒に動けるようになることがウェルビーイングの1番の目標だと思う」
--2025年の抱負をお聞かせください。
「まず、町民の皆さんの生活に寄り添って、ウェルビーイングとは何かを一緒に考えていく行政の形を目指す。例えば役場1階の窓口が1月から大幅にリニューアルして、『はやまrakuっと窓口』になる。手続きをコンビニで手軽に済ませたい人がいる一方で、話をしたい、じっくり相談したいという人もいる。そういう方々に寄り添うには、むしろ窓口を手厚くという、皆さんのニーズによりしっかり寄り添えるための第一歩となる。また、2025年の最大のポイントは公共施設の大規模整備。学校を含め、6月に構想をまとめて発表する。これを叩き台にして、地域の声を受け、議会とも話をしていく。子どもの数が減る中で学校2校を1校にしたときに、空いた1校をどうするかといった議論を6月からしていく。大きな摩擦が生じると思うが、未来の地域を見据える役場として向き合わなければならない大きな山だと思っている」
--町民の皆さんにメッセージを。
「100周年でまちが一つになったように、皆さんと葉山の良さをもっと語らい、伸ばしていきたいと思います」