『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』第9話「シャロンの薔薇」用語解説(シャロンの薔薇、エルメス、ララァ・スン、イオマグヌッソ封鎖)
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の世界は、第9話「シャロンの薔薇」で新たな局面を迎えます。本稿では、このエピソードをより深く理解するために、物語の鍵を握る要素とその背景を解説します。
今回特に注目したいのは、タイトルが示唆する象徴的な意味合い、そして登場人物たちが直面する新たな試練です。過去の出来事が現在にどう影響し、そしてこれから物語がどう展開していくのか、その一端が垣間見えるでしょう。また、新たなキャラクターの登場や既存の人物たちの「決意」が、今後の展開にどう影響していくのかも重要なポイントです。
本作は、単なるSFアニメに留まらず、綿密に構築された世界観と『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)との歴史的な繋がりが魅力です。過去のガンダムシリーズが持つ重厚なテーマ性を引き継ぎつつ、『GQuuuuuuX』独自の視点で描かれる人間ドラマや未来への問いについても考察を深めていきます。
ガンダムシリーズを初めてご覧になる方にも、この奥深い物語を楽しんでいただけるよう、専門用語や背景知識についても分かりやすく解説します。第9話「シャロンの薔薇」を通じて、『GQuuuuuuX』が提示する新たなガンダムの魅力をぜひご堪能ください。
本記事はネタバレ及び考察を含みます。そのため、未視聴の方はご注意ください。
シャロンの薔薇
9話では、シャリアブルから、「一年戦争の最中、シスルナ空域に突然現れた。この世界に存在しないはずの異常なオブジェクト。地球園の将来を左右するためグラナダで詳細な解析し、激しい戦火の中で消失」と、語られる。
エルメス
『ファーストガンダム』に登場する、ニュータイプ専用のモビルアーマー。
サイコミュシステムを搭載し、無線誘導によるビット攻撃を可能とする。パイロットはララァ・スン。
『ジークアクス』においては、第2話「白いガンダム」で、シャアが語る「計画中のモビルアーマー」が、エルメスを指しているものと思われる。
さらに、シャアの搭乗する赤いガンダムには、エルメスの技術であるサイコミュとビットが搭載されている。なお、ニュータイプとしてのララァ・スンは登場していない。
第9話では、このエルメスの機体が「シャロンの薔薇」と呼ばれていたことが明確になる。
すなわち、『ファーストガンダム』を含む他の世界のエルメスが、『ジークアクス』の世界に突如として現れ、「シャロンの薔薇」として認識されていたと思われる。
ゴック
水中戦用に開発されたモビルスーツ。
『ファーストガンダム』では、ガンダムハンマーを受け止めることができるほどの高い耐久性を誇る機体として描かれている。
『ジークアクス』では、エルメスの機体、すなわち「シャロンの薔薇」のサルベージ作業を支援する役割で登場。水中での高い作業能力を活かし、回収任務に投入されている。
マッドアングラー
ジオン公国軍の潜水母艦。ゴックと同じシーンに登場している。
ヴァーニ
マチュの身の回りの世話をするメイドのひとり。
第9話で、目覚めたマチュに「あ、起きた」と声をかける場面が描かれる。片側だけに見える八重歯が特徴で、どこか人懐っこい印象を与える少女。CVは小倉唯。
カンチャナ
ヴァーニと同じく、マチュの世話をするメイドのひとり。ララァについて「沙羅双樹の花が似合う素敵な人」と語るなど、感受性の豊かさがうかがえる。 落ち着いた雰囲気の中に、優しさと敬意を含んだ表情を見せる少女。 CVは菱川花菜。
ララァ・スン
『ファーストガンダム』に登場する、シャア・アズナブルに導かれたニュータイプの少女。同じくニュータイプとして覚醒したアムロ・レイと精神的に深く共鳴し合うが、最終的にはシャアをかばってアムロの攻撃を受け、宇宙の塵となる。
彼女の存在は、その後のシャアとアムロの関係性や物語の核心に深く関わる、極めて重要な人物である。
『ジークアクス』では、カバスの館に務める「恋人さんたち」の相手をしながら「恋人」を待つ女性。人々が「未来」と呼ぶ“向こう側の夢”を見る力を持つ。CVは羊宮妃那。
沙羅双樹の花
カンチャナの語るララァをイメージする花。
「沙羅双樹(サラソウジュ)」は、マメ科の植物であり、その花は一夜限りの命を持つ。
夕方に咲き、翌朝には散るその性質から、仏教文化において「この世の儚さ」や「生命のはかなさ」の象徴とされてきた。
平安時代以降、日本の文学や和歌にも数多く登場し、「儚い恋」や「移ろいやすい世の中」を表す比喩として用いられている。
とくに有名なのが『平家物語』の冒頭、「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す」という一節であり、そこでは平家の栄華と滅亡の儚さが語られている。
ヒマラヤ山脈を越えて飛ぶ渡り鳥
ララァがマチュに「想像を超えた存在」をする際に語る、「想像を超えた存在」の例。
実際に一部の渡り鳥は、最大で高度6,500メートルもの上空を飛行するとされており、これは富士山(標高3,776メートル)の約2倍にあたる。さらに、氷点下20度にも及ぶ過酷な気温に耐えながら、1,000キロメートル以上の長距離を移動するという。その距離は、東京から福岡までに相当する。
こうした環境下での飛行は、もはや通常の生活をしている人の理解の限界を超えており、まさにララァの語る通り、「想像の域を超えた生存」といえる。
「私の本当の人生」
『ジークアクス』9話で、ララァの語る、「私の本当の人生」は、「彼(シャア)が、連邦軍の白いモビルスーツ(ガンダムに乗るアムロ)と戦って命を落とすの。そしてジオンは戦争に負ける」と言っている。
『ファーストガンダム』では、シャアがガンダムに乗るアムロと戦って、シャアを庇い、ララァが犠牲になり命を落とす。そしてジオンは戦争に負ける。
『ジークアクス』では、シャアがガンダムを鹵獲し戦局に貢献、ゼクノヴァで、シャア自身が消滅。そしてジオンは戦争に勝つ(パイロットしてのアムロもララァも登場しない)。
ララァの語る「私の本当の人生」は、『ファーストガンダム』でも『ジークアクス』でもない別の世界と思われる。
「向こう側の夢」
ララァが語る「向こう側の夢」とは、「マルチバース(多元宇宙)」の概念を指していると思われる。
マルチバースとは、私たちが認識している宇宙のほかに、無数の異なる宇宙が存在するという仮説である。それぞれの宇宙は異なる物理法則や初期条件を持ち、私たちの世界とはまったく異なる歴史や現実を形成している可能性がある。
この考え方は、量子力学や宇宙論、さらには超ひも理論といった先端物理の分野でも語られており、科学的にも理論的探究の対象となっている。
作中でララァは、「何度も何度もめぐりあい…、なんど出会っても白いモビルスーツが彼を殺してしまう。私は大切な人を守ることができないのよ」と語っている。この言葉は、ひとつの世界に限らず、複数の異なる世界(=多元宇宙)で繰り返される悲劇を意味しており、彼女が“向こう側”として見ているのは、まさに無数の可能性が存在する別の宇宙――マルチバースのことを指していると思われる。
イオマグヌッソ封鎖
10話のタイトル。
イオマグヌッソとは、7話、8話などでも話題になっている。詳細はわかっていない。
《補足》
・イオマグヌッソ 建設事業計画[07話解説]
・イオマグヌッソ[08話解説]