街の本屋~ 小説家・清水晴木「晴れ、ときどき懐う(おもう)」
千葉県習志野市出身、在住の小説家・清水晴木さん。累計4万部突破の『さよならの向う側』シリーズなど多数の執筆した小説の数々は千葉を舞台にしています。そんな清水晴木さんが著作と絡めて千葉の思い出をつづります。
清水晴木さん
1988年生まれ。東洋大学社会学部卒。2011年函館イルミナシオン映画祭第15回シナリオ大賞で最終選考に残る。2021年出版の『さよならの向う側』はテレビドラマ化して放送。『分岐駅まほろし』『旅立ちの日に』『17歳のビオトープ』など著作多数。
街の本屋
街から本屋が消えている。
全国の書店数は、2014年から今日に至るまでの10年間だけでも、その数が約3分の2になったいう。
街によっては書店がゼロという地域もざらにあるようだ。
そんな事実に胸を痛めてしまうのは、自分自身が小説家という仕事を今しているからだろうか。
もしも全く別の仕事をしていたとしたら、時代と共に変わりゆく景色の変化の一つとして気にもかけていなかっただろうか。
いや、私はそうは思わない。
なぜなら、自分自身が小説家になろうとも思っていない少年時代の頃から、本屋は私にとっての大切な場所だったからだ。
本屋の空気感が好きだ。
紙とインクの匂いが、そこはかとなくあたりに漂っている気がする。
本屋の落ち着いた静けさが好きだ。
一人で来ている人も多くて、自分が一人でいても一人じゃない気がする。
本屋のたくさん本が並んでいる光景が好きだ。
実際に本屋に行かなければ、出会わなかった本がたくさんあったはずだ。
本屋が好きだ。
本屋がなければ今の私はなかった。
本の中の言葉が人生の指針になることもあった。
小説の物語に救われることがあった。
漫画のセリフから勇気をもらうことがあった。
人生の大切なことをたくさんの本から教わったのだ。
その出会いの場を提供してくれたのは、紛れもなく街の本屋だった。
これからも厳しい風は吹き続けるかもしれないけれど、街の本屋はどうかそこにあってほしいと思う。
これからの誰かの、きっと大切な場所になるはずだから。