【静岡空港西側の県有地活用】コロナ禍越え旅行需要も増加。さらなる集客に向け、周辺充実を図る取り組み始まる!
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「静岡空港西側の県有地活用」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年12月24日放送)
(山田)今回は静岡空港の西側の県有地の活用についてです。これは12月23日付の静岡新聞でも大きく取り上げられていましたね。
(橋本)静岡空港の西側に、約50ヘクタールの県有地があるそうです。空港を開港するために土地を取得し、滑走路やターミナルビル、駐車場を作ったりしたのですが、そうしたものに使わなかった土地があるわけですね。
(山田)車で静岡空港に行った時には、あんまり気づかなかったな。
(橋本)ここの活用は開港当時から懸案事項だったんですが、長らく「空港そのものの運営を軌道に乗せる」のが最優先課題だったため、手がついていかなかったのが実態だと思います。
そうした中で、県は開港から10年余り経過した2020年10月、民間活力で県有地の一体的整備を図る方針をまとめました。とはいっても、2020年を思い出すと、新型コロナウイルスが本格的に広まった年なので、民間も新規投資をやろうなんて考えられる環境ではなかったですよね。なので全く進んでなかったんです。
(山田)なるほど。
(橋本)昨年コロナ禍に伴う規制が大幅に緩和されて、旅行需要もまだコロナ禍前の水準までは回復していないものの、だいぶ戻ってきました。民間の投資意欲も上向いて、空港西側の県有地活用についても問い合わせが来るようになったいうことです。
土地の適正に合わせ、ゾーンごとに活用を模索
(山田)具体的にはどういった活用をしてもらいたいとか想定はあるんですか。
(橋本)50ヘクタールと一口にいっても相当広い上、一帯の土地ではないので、県は適正に合わせて四つのゾーンに分けて活用方法を考えているようです。
(山田)四つのゾーン?
(橋本)一つは、ターミナルビルに近い「エアフロントゾーン」。その西側の道路沿いに、「地域活性化・次世代育成ゾーン」。さらにその西側に「アウトドアゾーン」、滑走路に近い方には「自然エネルギーゾーン」という区分けをするという計画のようです。
(山田)ゾーンごとに、具体的にどういったことをやろうとしてるのでしょうか。
(橋本)エアフロントゾーンは、ターミナルビルに近くて一番お客さんが利用しやすい場所なので、例を挙げるとホテルや格納庫、あとはお客さんが来る施設ということで物販施設のようなものが考えられるということです。空港の機能と密接に結びついたものですね。
それから、地域活性化・次世代育成ゾーンは、例えばホールなどの集客施設や、あるいは航空関係の人材育成の場も考えられるかもしれません。
(山田)ホール!ありですよね。
(橋本)アウトドアゾーンは、自然環境を生かしたグランピング施設などが例に挙がっていました。自然エネルギーゾーンは、太陽光など、脱炭素のシステム構築を目指すというような機能を考えているようです。
2月に開発の提案を募集
(山田)民間企業からガンガン問い合わせがあるんですか?
(橋本)具体的にどんな企業がどんな意図で問い合わせをしてるのかについては、まだ明らかにされていません。数件の提案が来ている状態だということですね。
2月に事業者を募り、開発の提案をしてもらう「サウンディング型市場調査」が実施される予定で、どんな提案があるのか楽しみです。ゾーニングは四つですが、「優れた提案があればそれも変えてもいいよ」という柔軟な姿勢で取り組むようですね。
(山田)リスナーからは「静岡なのでラジコンサーキットとか作ってはどうでしょうか」という声も来ています。
(橋本)そういうのもいいかもしれませんね。
訪日外国人のさらなる空港利用にも期待
(山田)静岡空港を利用する外国人旅行客が増えてることからも、こういう流れになっているんですよね。
(橋本)先日、1月から11月の全国の訪日客が過去最多になったというニュースが流れました。2019年1年間の実績を超えたということで、コロナ禍から回復し、コロナ禍よりも増えたということです。
静岡空港はコロナ禍前の2019年度に国内線・国際線合わせて過去最多の74万人近い利用者を記録したんですが、コロナ流行を挟んだ20年度は過去最低の12万人弱に落ち込みました。その後、徐々に回復し、昨年度23年度は約51万人。本年度10月までの7カ月間で35万人ぐらいだそうで、今後、災害など特別な要因がない限りは昨年度を上回る可能性が大きいんじゃないかなと思います。
(山田)いい具合に回復してきてるということですね。
(橋本)路線別に見ると、国内線や、国際線のソウル線が好調だそうです。ただ、コロナ前に大きなウエートを占めてた中国路線はまだ運休したままのところがあり、旅行客も戻ってないようです。乗客のビザ取得がしにくくなったことや、中国経済が低迷していることが背景にあるのかなと思います。
10月にソウル線が増便して、12月には香港線が新設されるということで、これから中国便も戻ってくる可能性があるかなと。静岡空港の空港のインバウンド需要も、全国同様に増加していくことが期待されるのではないでしょうか。
インバウンドにも、県民にも愛される空港に!
(山田)とにかくインバウンドの経済効果は大きいですよね。
(橋本)そうですね。県が2023年の静岡空港の経済効果を試算して、271億円とコロナ前の2019年度の7割超まで回復したということです。インバウンドの経済効果が大きいということが分かっています。
ただ、静岡空港利用客は周辺地域での滞在期間が短く、到着しても関東や名古屋・関西方面にすぐ行ってしまう傾向があるそうなので、「いかに周辺にとどまってもらうか、お金を落としてもらうか」が地域活性化の点から課題となっています。今回の空港周辺の開発の話も、少しでも長く旅行客にとどまってもらうためにあるということだと思います。
(山田)旅行客がここで1日2日楽しめちゃうぐらいのものになると一番いいんでしょうね。それにプラスして、せっかくなら我々静岡県民や地元の方も利用できるような楽しめる施設になっていたらより良いですよね。
(橋本)本当にそう思います。コロナの教訓なんですが、インバウンドっていい時はいいんですが、さまざまな要因で急に需要が落ち込むことがあります。感染症に限らず、災害や政治の問題もあります。今上り調子だからといってインバウンドだけ見て対応を考えると、急にそういうことが起こったときに「全然お客さんがいない」というような話になりかねません。
民間ですから、ちゃんとそういうことも考えると思いますが、事業者が安定的に経営するためにも、外も内も見て両方に利用してもらえるような施設ができるといいんじゃないかなと思います。
(山田)静岡に空港があるって、県外の人は意外と知らなかったりする。せっかくできたものなので、やっぱり皆さんに使ってもらえることが重要だし、それが県の経済や財政のためにもいいんじゃないかなと思います。今日の勉強はこれでおしまい!