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静岡県内の競技団体別の選手数ランキング 1位は「王国」と言われるあの種目。スポーツが果たす役割、考えてみましょう。

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みなさん、静岡県内のスポーツ団体で最も登録選手が多い種目は何だと思いますか。県スポーツ協会の事業報告書(2022年度)に掲載されている「競技団体人口調査」によると、5位は陸上競技で1万7355人、4位はバスケットボールで1万8825人、3位は野球で1万8966人、2位はテニスで2万7564人でした。そして1位はサッカーで3万5079人。さすがサッカー王国と言われるだけあります。

6位は卓球、7位はソフトテニス、8位はバレーボール、9位はソフトボール、10位は剣道でした。ベスト10のうち、前年度から増えたのはバスケットボール、卓球、陸上競技、ソフトボールでした。

県スポーツ協会は県民スポ-ツ振興の中核を担う公益法人で、種目別の各団体と連携しながら競技力向上や指導者育成を担い、生涯スポーツの推進や少年団育成事業も推進しています。県協会がまとめる団体人口は、各種目の団体で大会出場などの前提になる登録者数であり、第一線で活躍する選手層と重なります。五輪や国際大会を念頭に国が進める競技力向上策では全国から集まるこうしたデータの推移が重要な指標になっています。

「する・みる・ささえる」人は幸せ!

だた、データは余暇やサークル活動などで体を動かすスポーツ愛好者まで網羅していません。スポーツは健康増進や生きがいの面でも大切な役割があり、生涯スポーツ振興の観点に立てば、種目別競技人口の考え方はもっと幅広く捉える必要があります。

スポーツ庁の23年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」によりますと、20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率は52%でした。成人の2に1人が週1回以上運動しているとの結果は、出不精な私にとってかなり多いと感じました。皆さんはどのくらいスポーツに親しんでいますか?

多くの自治体はスポーツ振興策で、自ら体を動かす「する」、スポーツを観戦する「みる」、スポーツを楽しむ環境作りに貢献する「ささえる」の三つの視点で施策を講じています。スポーツ庁の調査ではスポーツを「する」「みる」「ささえる」のいずれかに参画した人の割合は87%に上り、「する・みる・ささえる」の全てに参画した人は日常生活の充実感を感じている割合や幸福感が比較的高いとの結果もあります。

スポーツに親しむ理由では「健康のため」が78%と最も多く、「体力増進・維持のため」「運動不足を感じるから」が続きました。注目は、実施する頻度が増えた理由として最も多かったのが男女とも「仕事が忙しくなくなったから」で19%だったことです。経済界では「一流のリーダーはスポーツを愛好する」が定説だそうです。多忙なビジネスマンだからこそスポーツでリフレッシュしているのでしょう。「する・みる・ささえる」のそれぞれで、スポーツは人々の心と体の健康増進に役割を果たしているのです。

男性と人気スポーツへの偏り

さて、県スポーツ協会のデータで気になることがありました。第一に、協会加盟団体は51種目に上り競技団体人口は計約22万3千人を数えますが、上述した上位5種目を総計すると11万7千人で全体の半数を占めます。51団体の中には登録選手が100人未満の競技団体が11団体あり、種目の広がりに比べ選手のすそ野は広いとは言えない状況です。

第二に男女格差です。競技団体人口のうち男性は15万3千人、女性は6万9千人。女性が男性を上回っている種目はバレーボール、体操、バドミントン、武術太極拳などわずか。要因を分析して対策を講じる必要があると感じます。

第三に年代別のチーム数に偏りがある点です。サッカー、テニス、野球は小中高年代のチーム数と一般のチーム数が均衡、もしくは一般のチーム数の方が多い状況ですが、バレーボールとバスケットボールは一般のチーム数が小中高に比べ大幅に少ない状況です。ただ、一線で活躍できる年齢が狭い種目もあり、競技団体人口だけでは各競技の振興策は論じられません。指導者や競技施設の状況を含めた課題の洗い出しが求められます。

危機的状況の部活動

少子化と教職員の働き方改革のうねりで、中学や高校で活発だった部活動の功罪が議論されています。部活動は多様な運動や文化活動を体験する機会となり、とりわけ運動部はわが国の競技スポーツ振興で重要な役割を果たしてきました。異年齢や所属が異なる相手との人間関係を学ぶ場にもなり、学校生活で「知徳体」を育むことに貢献してきたと多くの教員が認めています。一方、こうした教育的意義があるとしても、その運営が精神論に由来する教職員の献身に頼る活動なら持続可能性を問われるのは当然です。

部活動が果たしてきた役割をどのように継承、発展させていくかは難題です。スポーツ庁は、小中学校年代の子供がスポーツをやりたい、体験してみたいと考えても学校生活の身近な場面に部活動がない事態に入っているとして、「これからは地域や地元コミュニティーが子供のスポーツを支える時代に」と訴えています。スポーツ振興のあり方は、競技力向上から生涯スポーツまで、私たち一人ひとりに身近な問題なのです。
 中島 忠男(なかじま・ただお)=SBSプロモーション常務
1962年焼津市生まれ。86年静岡新聞入社。社会部で司法や教育委員会を取材。共同通信社に出向し文部科学省、総務省を担当。清水支局長を務め政治部へ。川勝平太知事を初当選時から取材し、政治部長、ニュースセンター長、論説委員長を経て定年を迎え、2023年6月から現職。

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