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極寒の世界にある豊かな生態系 <北極海>にはどんなサカナや生き物がいる?

サカナト

流氷の海(提供:PhotoAC)

北の最果て、北極海。

極寒の海には、どんな生きものがいるのか知っていますか?

そもそも、生きものはいるのでしょうか。

大きい種が多い?北極の<哺乳類>

北極海を覆う氷の上には、セイウチホッキョクグマといった巨獣が暮らしています。では、なぜ巨大な生きものがすんでいるのでしょうか?

彼らは巨大化することで、熱を生産する体の体積の割合を大きくし、熱が失われる体表面の面積の割合を小さくしているのです。恒温生物では寒冷な地域に生息するほど体重が大きく、近縁な種でも寒冷な地域に生息するほど体表面積が大きいという法則のことをベルクマンの法則といいます。

ホッキョクグマ(提供:PhotoAC)

実際に、日本に生息するヒグマの体長は平均約1.5メートル、大きくても約2メートルのところ、ホッキョクグマでは2.5〜3メートルの大きさにまで成長します。

北極海はアザラシ天国

そして、北極海はアザラシ天国。タテゴトアザラシなど数多くの種が暮らしています。日本近海でもみられるゴマフアザラシやアゴヒゲアザラシ、ワモンアザラシなども生息しています。

海の中には、シロナガスクジラやザトウクジラ、ミンククジラなど多くのクジラがいます。

なかでもホッキョククジラは、北極海以外ではあまりみられない珍しいクジラ。クジラのなかでも異常に寿命が長く、なんと200年以上生きるとされます。

北極海には通常のイルカはいませんが、近縁のシャチやイッカク、シロイルカがいます。

北極圏の先住民であるイヌイットのある伝説によると、いじわるな継母がシロイルカによって海に引きずり込まれ、イッカクに変身したともいわれています。

不思議な生態をもつ<鳥類>

北極海にはペンギンはいませんが、それと同じ生態的地位にいると考えられるのがウミガラスです。短い脚で陸をヨタヨタと歩き、水中では飛ぶような猛スピードで泳ぎ回ります。

ニシツノメドリは、カラフルなクチバシが特徴的なユーモラスな姿。クチバシに小魚をたくさん挟んだ姿は、いちど見たら忘れられないインパクトです。

キョクアジサシは、北極と南極の間で渡りをする、なんともグローバルなカモメの仲間。年間の移動距離が7万kmを超えるという研究もあり、動物界でも最長の移動距離です。一説には、一生の間に地球と月を3往復する距離を移動するといいます。

日本近海でみられるフルマカモメやカモメ、ウミスズメの仲間なども多くみられます。

クロトウゾクカモメ(提供:PhotoAC)

彼らに襲いかかるのが、クロトウゾクカモメ。ほかの海鳥が捕えた餌を空中で奪い取ります。クロトウゾクカモメも、日本沿岸に飛来することがあります。

寒い地域に生息する<魚類>たち

北極海にはどんな魚がいるでしょうか?

タラ(マダラ)、スケトウダラ、ニシン、カラフトシシャモ……。意外にも、日本の食卓でおなじみの魚が多いですね。巨大なカレイの仲間、オヒョウも生息しています。

オヒョウ(提供:PhotoAC)

カラフトシシャモは、私たちが普段スーパーで目にするシシャモのことです。本来のシシャモ「本シシャモ」は北海道の太平洋側にしかいない固有種で、高級魚。そこで、代用品のカラフトシシャモが一般的に流通しているわけです。

タラの一種のホッキョクダラは、血液成分が不凍タンパク質になっており、冷たい海でも血液中に氷の結晶ができないように適応しています。

サケの仲間ではカラフトマスシロザケがみられ、温暖化の影響で生息域をさらに広げているようです。ちなみに、北極圏の川や湖には、ホッキョクイワナというサケの仲間がいます。

最も長生きの脊椎動物・ニシオンデンザメ

北極海の魚で特に個性的なのが、ニシオンデンザメでしょう。全長6mを超える個体記録もある巨大なサメです。最も長生きの脊椎動物として知られ、寿命は少なくとも約270年、長ければ驚異の500年に及ぶ可能性もあるとされます。

ニシオンデンザメは、深海でゆっくり動く生活スタイル。こういった生活スタイルの生き物には、ニシオンデンザメの仲間のギンザメや、シーラカンス、オウムガイなどがいます。

彼らは代謝や世代交代の速度が遅く、個体としても種としても寿命が長い傾向にあるのです。

日本とも身近な無脊椎動物たち

無脊椎動物に目を向けてみましょう。

甲殻類では、ズワイガニ、タラバガニ、ホッコクアカエビ(甘エビ)といったおなじみの生き物が生息しています。

タラバガニ(提供:PhotoAC)

実は甲殻類は、北極海の主役ともいえる重要な存在。カイアシ類やオキアミ類といった小さな甲殻類が、食物連鎖の土台になっているのです。

流氷の天使と形容されるハダカカメガイの仲間も豊富に生息しています。日本ではクリオネと呼ばれ、主に水族館で親しまれていますね。彼らは、軟体動物の巻貝の一種です。

ハダカカメガイの仲間であるダイオウハダカカメガイという、体長がなんと10センチにもなる巨大なクリオネも生息しています。

刺胞動物のクラゲは生息域が広い種が多く、北極海にも数多く生息しています。

キタユウレイクラゲは、触手の長さが36メートルにも達する、シロナガスクジラよりも長い生物。英語では、その触手をライオンのたてがみに見立て”Lion’s mane jellyfish”(ライオンのたてがみクラゲ)とよばれています。

シャーロック・ホームズシリーズ「ライオンのたてがみ」という話に登場したこともあります。

氷の海に広がる豊かな生き物の世界

北極海は、秘境だけあって、生き物たちも特殊な姿や能力の持ち主が多いですね。

一方で、日本人になじみのある生き物もけっこう多く生息している印象です。北極海は、意外と日本人に身近な存在なのかもしれません。

(サカナトライター:浅川 千)

参考文献

Myth and Matricide: How the Narwhal Got Its Tusk-FORKLIFE

国立極地研究所-「世界一のろい魚」発見!

ナショナルジオグラフィックークロトウゾクカモメ

ナショナルジオグラフィックーWorld’s Longest Migration Found–2X Longer Than Thought

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