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【40歳からのやんわり無化調】謳わない美学。それが「佐渡友」流の無化調ラーメン。

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一番人気の醤油らー麺

自分が自分らしくいられなければ、


ずっと続けていくことはできない。

ぼくが年を重ねると、これまで感じてきた「おいしさ」も一緒に年をとる。そんな風に自分のおいしさの変化を自覚してきたのは、40代に入ってからだ。
昔あんなに好きだった料理が一度に多くは食べられない。その頻度も高くなくていい。
それはもう、ある意味、仕方のないことだ。こういう今の自分と付き合い続けていくほかない。

ライフワークとしてきた麺の探求にも変化が生じた。あれだけ喜び勇んでやっていた麺の連食はぐんと減ったし、新店をむやみやたらと追わない。
替玉、大盛りのオーダーも稀だ。前向きな言葉で表現するなら、一杯、一杯、丁寧に食べるようになったということだろうか。

そんなわけで、麺を食べようという時、これまで以上に店を吟味している。そのセレクトにおいて、一つの指標になっているのが「無化調」。いわゆるうま味調味料を使っていない麺類だ。
もちろん、ぼくは完全なる“無化調原理主義者”ではないので、それしか食べないというわけではない。だけど、やっぱり自然と惹かれている。その足跡を、これからこのコラムに残していこうと思っている。

ちなみに、無化調麺を追い求めていこうと考えてはいるが、厳格にはやらない。例えば醤油。醤油にアミノ酸が入っていようとも、お店さんがそれぞれに思う「無化調」を表現していれば、ぼくとしてはそこは気にしないというスタンスだ。

ぼくの興味、情熱は、完全なる「無化調麺」の収集には向かっていない。これからも楽しく、おいしく麺を食べ続けていきたいから、今の自分に合う「無化調麺」が気になるし、そういうお店を見つけた喜びを、同じ感覚の人と分かち合いたい。店主さんたちが「無化調」に至った経緯、料理における考え方、総じてアティチュードが重要。だから、本コラムのタイトルも「“やんわり”無化調」としている。

前置きが長くなってしまったが、改めまして、コラム「40歳からのやんわり無化調」一発目。どこを紹介しようか、思い切り悩んで、悩んで、選んだのが、福岡市東区に店を構える「麺や 佐渡友(さどとも)」だ。

「佐渡友」の好きなところは、店主・佐渡友良二さんが提供したいと願っている理想の一杯と、ぼくから見た実際に提供されているラーメンに、少しのズレもない点だ。思いと表現の完全なる一致。

佐渡友さんは元々、福岡にある豚骨ラーメン店でラーメンづくりを学んでいた。そしてその経験をもとに、今度は醤油スープの中華そば店で修業。最終的な修業先のラーメンが土台となり、2016年にこの「佐渡友」を開業した。

佐渡友さんの頭にあったのが「体に良いラーメン」。「自分の子供に毎日でも食べてほしい。胸を張って食べさせたい。そんなラーメンを作っていこうと決めました」。自身の子供に向けた思いは、もちろん同じように「佐渡友」の暖簾をくぐる人々へも向けられる。ひたすらに、まっすぐな思い。商売だから、効率的だから、そんな嘘や妥協が一切ない。

スープに力を入れれば、自ずと麺への思いが膨らむというもの。店では開業以来、自家製麺を貫く。スープの仕込みも、麺の仕込みも、基本的には佐渡友さん一人でまかなう。そうなると体力的にも、時間的にも負担が大きいが、これを負担と思わないのが、佐渡友さんだ。

以前、著書でインタビューした際、「家族との時間もかけがえのないもの。もちろん、暮らしの土台を支えるのは仕事ですから、どちらも大切です。ただ、一つ言えるのは、自分が自分らしくいられなければ、家庭も、そして商売も、ずっと続けていくことはできない」というような話をしてくれた。
単純な負担ではなく、佐渡友さんは日々、徳のようなものを積み上げ続けているのだと思う。負を担ぐのではなく、富(ふ)を担いている。

そういえば、この「佐渡友」では、大々的に「無化調」であることを謳っていない。記憶が間違っていなければ、壁に掛けてあるポスターに記された文章に一説の中に、ちらっと「無化学調味料」という一言があるだけ。
ぼくはそのスタンスにも惹かれている。なんというか、押し付けがましさがなく、さりげなく、日々のラーメンにやさしさを添え続けているところに“親からの愛”と同じような温かさを感じる。

「そうなんですよ、特に目立つようには謳ってないですね。無化調ではあるんですが、それは自分自身のこだわりなだけで、お客さんに無理強いすることでもありませんから。普通にラーメンをおいしく食べ、また来たいなと自然に選んでもらえるような、そんな店でありたいんです」

醤油ラーメン以外にも、シーズン毎にスポットで提供される「酸辣湯麺」「カレーラーメン」にもファンが多い。定期的に恋しくなる東区の名店だ。

麺や 佐渡友
福岡市東区三苫6−13−38
092-410-3542
11:00~OS14:45 ※売り切れ次第終了

山田 祐一郎
1978年福岡県生まれ。2003年よりライター業に携わり、2012年8月に「KIJI (キジ)」を設立し、フリーランスとして独立。同時に、日本で唯一(※本人調べ)のヌードルライターという肩書きで本格的に執筆活動を開始する。飲食関連の専門誌、情報誌、ウェブマガジンなどの原稿執筆を手掛ける。毎日新聞で連載中の麺コラム「つるつる道をゆく」をはじめ、連載歴多数。著書に「うどんのはなし 福岡」「ヌードルライター 秘蔵の一杯 福岡」。「1日1麺」をモットーに、美味しい麺との出会いを求め、近年では国内のみならず海外(台湾、タイ、イタリア)にも足を運んでいる。日々食した麺の記録はWEBマガジン「その一杯が食べたくて。」に掲載中。2019年9月から父の代から続く宗像市にある製麺所を受け継ぎ、現在は「山田製麺」の代表も務める。http://ii-kiji.com/

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