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【秋山香乃さんの新刊「頼朝 陰の如く 雷霆の如し」】 静岡新聞連載に大幅加筆。「これまでにない頼朝像」がくっきり

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は2024年12月4日に初版発行(奥付)された秋山香乃さん(沼津市)の新刊「頼朝 陰の如く 雷霆の如し」(静岡新聞社)を題材に。

静岡新聞夕刊で2022年3月15日から2023年3月24日まで連載された同名小説に大幅加筆している。

筆者は本連載を管轄する部署の管理職を務めていた。連載開始の約1年前にプロジェクトを起動させたことが、昨日のことのようだ。2021年夏に連載時に原稿のやり取りをする担当記者、書籍化を見据えた担当編集者と共に沼津市を訪ね、秋山さんと最初の打ち合わせを行った。秋山さんは当時から源頼朝への並々ならぬ関心とシンパシーを口にしていた。これまでにない頼朝像を描く、と意気込んでいた。連載開始後の2022年5月に伊豆の国市で開いた、筆者が司会を務めたトークイベントでも、そう強調していた。

秋山さんは単行本で、奥州征伐後を描く第6章をまるまる加筆した。頼朝は、自身と義経の間にくさびを打った後白河院と対峙する。後白河院は頼朝の「驕り」につけ込んでその権力構造を突き崩そうとする。だが頼朝は後白河院の「挑発」に乗らない。丁々発止の心理戦は手に汗握る迫力だ。

頼朝は「勅命」や「官職」の権威をうまく利用して、全国の武家を統治しようとする。作中で「征夷大将軍」や「幕府」という名称の意味するところが語られる。頼朝はかなり早い段階で、朝廷とは全く新しい統治システムの構築とそのプロセスが具体的にイメージされていたようだ。フィクションとは言え、史料にくまなく目を通している秋山さんの記述だけに説得力がある。「ゆるやかな権力の委譲」あるいは「命をかけた政治改革」にいそしむ、「これまでにない頼朝像」がくっきりと浮かび上がる。

頼朝の志は妻・政子に引き継がれる。「武士の国」の礎を築いた一人である「尼将軍」の心の奥底が精緻に記述される。偶然ではあるだろうが、単行本の最終盤には徳川家康、藤原道長の名前も出てくる。NHK大河ドラマの各場面が頭に浮かぶ。秋山さんのたなごころの上で遊んでいる気分になった。
(は)

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