十四川の桜永遠に、「さくら祭り」今年100年目、四日市、次代への継承探る
三重県四日市市富田の「十四川さくら祭り」が、今年、100年目を迎える。市立富田小学校や県立四日市高校に近く、市内外の人に愛される約600本の桜並木として続いてきた。地域の人が川の清掃や枝の手入れをしているが、桜の木と同様に高齢化も進み、桜の名所を次代にどう引き継ぐかの議論が始まっている。
今年の「さくら祭り」は3月28日~4月6日の10日間。最近では多めという露店が出て、キッチンカーも並ぶ。北星高校有志の路上ライブや、5年ぶりに昨年復活したライトアップも楽しんでもらう計画だ。
十四川の桜並木は、明治末、堤防強化を目的に植樹が始まったという。1925(大正14)年、網勘製網(現アミカン)が法人化を記念してソメイヨシノの苗木を寄贈し、「さくら祭り」も始まった。1978(昭和53)年には、市内で唯一、日本さくらの会から全国表彰も受けた。
〇町の人たちが桜並木を守る
桜並木は、富田地区のまちづくり協議会にある「十四川と環境を守る会」や富田造園クラブなど、町の人たちが守ってきた。十四川は全長約4キロ、川幅4~5メートルで、そのうち市街地の約1.2キロの両岸に桜は根付いている。最近まで露店が並ばなかったのも特徴で、昭和のころは家族や仲間が桜の下でバーベキューを楽しんだという。
多くの人が散策を楽しんでいる桜並木(十四川と環境を守る会提供)
守る会の中心になる事務局長は、フラワースタイリストの渡辺美香さん。結婚してしばらくして、30代半ばで近鉄富田駅近くに越して、夫の健司さんとカメラ店も営んでいる。
3年ほど前、店のお客さんに誘われて、桜並木の清掃など作業を手伝った。合間に聞く地域の昔話などが楽しくて参加するのが続き、2年前、「貴重な40~50代だから」と事務局長を頼まれた。
〇各地で共通の悩み、桜の名所をどう守るか
ソメイヨシノの寿命は、普通で60年~80年、手入れがよいと100年を越すともいわれる。各地の桜の名所では、木の老朽化や見守る人の高齢化などが課題になっており、富田地区でかかわっている人の大半は70~80歳代。昨年、初めて市長に保存への協力を訴えた。
地域の人が桜の木の世話を続けてきた(十四川と環境を守る会提供)
名古屋の山崎川、伊勢の宮川堤など、自治体と地域が協働で保全する体制を設けているところもあるが、四日市市にはまだない。今春の中止を発表した「海蔵川桜まつり」も、地域の人たちは桜の木の管理に悩み、やはり、市や県に協力を求めている。これらの訴えを受け、市は昨年、庁内検討会を立ち上げて、河川、道路、観光など関係部局が、まずは現状把握をと動き出しているが、桜の名所をどう守るかの議論は、ようやく始まったばかりといえる。
今年になって、守る会の活動報告のSNSに、結婚して富田を出たという女性からメッセージが入った。「里帰りすると桜がきれいですが、こうして活動してくれる方がいてこそ見られるのですね」とあった。「うるっとしました」と渡辺さんは話している。
地域の人たちと桜並木を守る渡辺美香さん